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聖女の加護は重ねがけ ~勇者を強くするはずが、魔王にも狙われています~  作者: カトーSOS


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第1話 神託

挿絵(By みてみん)


第1話 神託


その日も、いつもと変わらない朝だった。


リリアは村の井戸へ水を汲みに行った。


桶を井戸に落とす。


水を汲み上げる。


二つの桶に水を入れて、天秤棒に吊るす。


重い。


いつものことだ。


リリアはゆっくりと家へ向かって歩き出した。


そのときだった。


『リリア』


誰かに呼ばれた。


振り返る。


誰もいない。


「……?」


気のせいだろうか。


再び歩き出す。


『リリア』


また聞こえた。


今度は、はっきりと。


「誰?」


『私は女神エリス』


「……女神?」


リリアは空を見上げた。


雲が浮かんでいる。


鳥が飛んでいる。


いつもと変わらない空だった。


『あなたに神託を授けます』


「神託?」


『あなたは聖女です』


「……え?」


リリアは首を傾げた。


聖女。


聞いたことはある。


神に選ばれた特別な女性。


人々を救う存在。


そんな話だったと思う。


「私が?」


『そうです』


「……人違いでは?」


『いいえ。リリア。あなたです』


リリアは自分の服を見下ろした。


いつもの服だ。


足元には水桶。


特別なものなど何もない。


「私、ただの村娘ですけど……」


『知っています』


「知ってるんですか?」


『もちろんです』


なら、なぜ私なのだろう。


『あなたには特別な力があります』


「特別な力?」


『あなたが触れた者は、その能力を高めることができます』


「……触れる?」


『そうです。あなたの加護によって、その者は本来の力を超えることができるのです』


リリアは自分の手を見た。


いつもの手だ。


水を汲んだり、洗濯をしたり、料理をしたりする手。


何も変わっていない。


「……本当ですか?」


『本当です』


「はぁ……」


どうにも実感が湧かない。


『リリア。あなたには使命があります』


「使命?」


『勇者を支えなさい』


「勇者?」


『そうです。勇者は魔王を倒すために戦っています。あなたの力が必要なのです』


「……魔王?」


話がどんどん大きくなる。


さっきまで水を汲んでいただけなのに。


『あなたの加護が勇者の力を引き出します』


「そうなんですか……」


『世界の運命は、あなたにかかっているのです』


「えっ!」


それは困る。


世界の運命なんて言われても。


リリアは、もう一度自分の手を見た。


どう見ても、普通の手だ。


「……あの」


『何でしょう』


「聖女って、何をすればいいんですか?」


『勇者を支えるのです』


「それは聞きました」


『勇者に加護を与えなさい』


「触ればいいんですか?」


『そうです』


「……なるほど」


なるほど。


……なのだろうか。


リリアは考えた。


考えても、よく分からない。


「あの、それで……」


返事はなかった。


「女神様?」


静かだった。


風が吹いている。


鳥の鳴き声が聞こえる。


いつもの村の道だ。


「……行っちゃった?」


リリアはしばらく立っていた。


聖女。


加護。


勇者。


魔王。


いろいろな言葉が頭の中を巡っている。


とりあえず、分かったことが一つある。


私は聖女らしい。


そして、勇者を助けなければならないらしい。


「……でも」


リリアは水桶を担ぎ直した。


「勇者って、どこにいるの?」


誰も答えてくれなかった。


仕方がない。


とりあえず、家に帰ろう。


水を届けなければならない。


リリアは再び歩き出した。


世界の運命を託された聖女は、今日も水汲みの途中だった。


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