第8話 革命の温度
グラウンドの脇。
ロウガは歩みを止め、すれ違いざまにアルを睨んだ。
「あのサッカー……どこで拾ってきた」
低く、警戒を隠さない声。
「あいつは危険だ」
「暗黒サッカーの枠にすら、収まっていない」
アルは立ち止まらない。
振り返りもせず、淡々と答える。
「革命だよ」
その一言に、ロウガは眉をひそめる。
「……犠牲者が出るぞ」
アルは少しだけ肩をすくめた。
「革命に犠牲はつきものだろ」
「新しいサッカーのためだ」
ロウガは言葉を失う。
(こいつは分かっていてやっている)
(だからこそ、始末が悪い)
アルの背中は、すでに次の未来を見ていた。
場面は変わる。
薄暗い倉庫の中。
壁一面に並ぶ、無数の暗器。
レイアはその中央で、まるで宝箱を前にした子どものように目を輝かせていた。
「やばいな……」
小さなナイフを手に取り、角度を変えて眺める。
「これ、かっこよくないか?」
次に指輪を手に取る。
「実用的なのは、やっぱりこれかな……」
独り言を言いながら、夢中で選び続ける。
その背後から、低い声がした。
「レイア」
振り返ると、ロウガが立っていた。
「勘違いするなよ」
ロウガは倉庫を見回し、静かに言う。
「暗器は、あくまで補助だ」
「試合を決めるものじゃない」
レイアはきょとんとした顔をしてから、すぐに笑った。
「何言ってんだよ」
軽い調子で返す。
「みんなの使い方が甘いんだよ」
「ちゃんと研究すれば、もっと効果を発揮できる」
その笑顔は、無邪気で、悪意がない。
だからこそ――ロウガは寒気を覚えた。
(危うい……)
レイアは“勝つため”ではなく、
“可能性そのもの”を楽しんでいる。
(これは革命か)
(それとも、破滅か)
ロウガは、答えを出せないまま、レイアを見つめ続けていた。
暗黒サッカーは、もう後戻りできない地点に近づいていた。




