第5話 暗黒サッカーへの選択
洞窟を出たあと、アルは立ち止まり、背中越しに言った。
「……期待外れだったかもな」
嫌な予感が、胸を締め付ける。
「やっぱりさ」
「断罪イベントで、死んでもらうしかないか」
「待て待て!」
慌てて叫ぶ。
「俺は死にたくない!」
「それに、サッカーがしたいんだよ!」
アルは振り返り、困ったように頭を掻いた。
「でもなぁ……」
「なんでもやる!」
「本当に、なんでもやるから!」
必死な俺を見て、アルは少し黙り込んだ。
やがて、低い声で口を開く。
「……生き残る道」
「あるといえば、あるんだけどな」
「なになに?」
思わず身を乗り出す。
アルは視線を逸らしながら、告げた。
「武器を使う」
「ただし……反則だ」
「え?」
「魔法でも、スキルでも」
「自分の肉体を使う限りは、まだサッカーの範囲だ」
「でも、武器は違う」
「完全な反則になる」
「なんでもありなのに……」
「なんでもあり“みたいなもの”だ」
アルの声は、やけに現実的だった。
「それを選んだ瞬間」
「正規のサッカーからは、完全に外れる」
一拍、沈黙。
「暗黒サッカーに身を落とすしかない」
「暗黒サッカー……」
闇落ちっぽくて、正直ちょっとかっこいい。
だけど——
「反則、か……」
「それは、気が重いな」
アルは、真剣な眼差しで俺を見る。
「でもね」
「生き残るためには、これしかない」
「どうする?」
突きつけられた選択肢。
「このまま死ぬか」
「暗黒面に落ちるか」
俺は俯き、考える。
(勝つために反則……)
(反則して勝って、何になる……?)
サッカーは、正々堂々やるものだ。
ズルして勝って、胸を張れるのか?
(……でも)
(生き残るためには)
(やるしかないんだ)
拳を握りしめ、顔を上げる。
「……やるよ」
声は、思ったよりも落ち着いていた。
「やってやるよ!」
「暗黒サッカーで、のし上がってやる!」
アルは、静かに頷いた。
こうして俺は、
正統なサッカーから外れる道を選んだ。
反則。
禁忌。
それでも——
生きるためのサッカーだ。




