第4話 適性ゼロ
歓声が落ち着いた頃、アルがふと思い出したように言った。
「……そうだ」
「適性を見ておこう」
「適性?」
俺が聞き返すと、アルは当然のように頷いた。
「さっきダンの炎、見ただろ?」
「この世界のサッカーじゃ、魔法は必須なんだ」
「属性を確認するのは、かなり重要だぜ」
「へぇ……」
相槌を打ちながら、内心は別のことでいっぱいだった。
(魔法って……)
(使ったこと、ないんだけど……)
アルに案内され、王国の外れにある洞窟へ向かう。
中に入ると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
洞窟の奥。
青白く光る、不思議な石が鎮座している。
「ここだ」
アルが顎で示す。
「さあ、石に触れろ」
「反応すれば、お前の魔法属性がわかる」
俺は少し躊躇いながら、そっと手を伸ばした。
指先が、石に触れる。
——すうっ。
光が、消えた。
洞窟内が静まり返る。
「……」
アルが、固まったまま動かない。
「……?」
俺は首をかしげる。
「どうした?」
アルの顔色が、みるみる青ざめていく。
「……そんな」
「そんな馬鹿な……」
「おい、だから何なんだよ」
震える声で、アルは言った。
「魔法が……」
「使えない」
言葉が、理解に追いつかない。
「は?」
「無属性どころじゃない」
「完全に魔法反応ゼロだ」
アルは頭を抱えた。
「そんな……」
「それじゃ……サッカーで活躍するのは不可能だ……」
胸が、ぎゅっと締め付けられる。
「なんでだよ」
思わず声を荒げる。
「サッカーだぞ?」
「ボール蹴るだけだろ!」
アルは、真剣な目で俺を見た。
「本気で言ってるのか?」
そして、淡々と告げる。
「火の玉が飛び交い」
「稲妻が走るサッカーコートで」
「お前は、素手で立ち向かえるのか?」
言葉が刺さる。
「無課金過ぎるぞ……」
その一言で、現実がのしかかってきた。
周りを見渡せば、
炎、雷、風、衝撃波。
この世界のサッカーは、
技術だけじゃない。魔法前提だ。
「……」
なんだか、よくわからないけど。
胸の奥が、ずしんと重くなる。
(まずいじゃん……)
異世界に飛ばされて。
悪役令嬢になって。
サッカーが唯一の拠り所だったのに。
(俺の……)
(俺の生き残る道って……)
青く光っていたはずの石を見つめながら、
俺は初めて、この世界で本当の不安を感じていた。




