第3話 なんでもありの1on1
即席のコートに、緊張が満ちる。
ダンは肩を回しながら、高らかに宣言した。
「ルールは簡単だ!」
「手を使わずにゴールを奪ったほうが勝ちだ!」
「……それ、普通のサッカーだろ」
思わず突っ込む俺に、周囲から笑い声が起こる。
「細かいことは気にするな!」
ダンはニヤリと笑った。
「さあ、始めるぞ!」
合図と同時に、試合開始。
「思い知れ!
火炎ドリブル!!」
ダンがボールを蹴り出した瞬間、足元が炎に包まれる。
灼熱の軌跡を引きながら、ボールが前進する。
「熱っ!」
近づこうとしただけで、肌が焼けるように痛む。
(取れない……!)
物理的に近寄れない。
これじゃディフェンス以前の問題だ。
「何もできねぇだろ?」
ダンは余裕の表情で加速する。
「このままゴールだ!」
「くそっ……!」
焦りが胸を締め付ける。
(このサッカー……なんでもあり過ぎるだろ……)
その瞬間、ひらめいた。
(……いや)
(なんでもありってことは……)
俺は一気に距離を詰め、ダンの背後へ回り込む。
「なっ――」
次の瞬間。
全身の力を込めたドロップキック。
「ぐっ!?」
ダンの体が前につんのめり、派手に倒れる。
炎が消え、ボールが転がった。
周囲がどよめく。
「やるじゃねぇか……!」
ダンは地面に手をつきながら笑った。
「一応、サッカーのようだな」
「なら……これならどうだ!」
立ち上がり、低い声で呪文を唱え始める。
空気が歪む。
「……ヤバイ!」
直感が叫ぶ。
俺は迷わず踏み込み、
全力のボディブローを叩き込んだ。
「がっ……!」
衝撃でダンの詠唱が途切れる。
今だ。
俺はボールを奪い、そのままシュート体制に入る。
——だが。
倒れたはずのダンが、地面から足を伸ばした。
「甘ぇ!」
ローキック。
「っ!?」
足を払われ、俺も倒れる。
一瞬の静寂。
次の瞬間、二人同時に立ち上がった。
視線は一点——ボール。
「うおおおおっ!!」
同時に、全力で蹴る。
衝突。
——破裂音。
ボールは耐えきれず、空中で弾け飛んだ。
破片が地面に散らばる。
呆然と立ち尽くす俺とダン。
沈黙を破ったのは、アルだった。
「……ドローだ!!」
一拍遅れて、歓声が爆発する。
「すげぇぞ!」
「初見でダンと引き分けだ!」
「ようこそ!サッカー王国へ!」
ダンは大きく笑い、俺の肩を叩いた。
「歓迎するぜ」
「いいサッカーだった」
胸の奥が、じんわりと熱くなる。
理不尽で、無茶苦茶で、危険な世界。
でも——
ここには、確かにサッカーがあった。
そして俺は、
この国で初めて「仲間」と呼べる存在を得たのだった。




