第12話 ゴミ捨て場のサッカー
馬車が止まり、乱暴に引きずり下ろされる。
レイアの手足の拘束が外された。
自由になったはずの身体は、妙に重い。
目の前に広がるのは、寂れた村だった。
崩れかけの家屋、荒れた地面、活気のない空気。
村人たちが、遠巻きにこちらを見ている。
その視線は、好奇でも敵意でもない。
――諦めきった目。
「……なんだよ、ここは」
思わず漏れた声は、虚しく消えた。
そのとき。
すさんだ雰囲気の女性が、一人、前に出てきた。
レイアは反射的に身構える。
だが、女性は薄く笑っただけだった。
「ようこそ」
乾いた声。
「ゴミ捨て場に」
「……ゴミ捨て場?」
その言葉が、胸に小さく刺さる。
捨てられた。
不要だと判断された。
その事実を、改めて突きつけられた気がした。
女性はレイアをじっと見て、続ける。
「使えないんだろ」
「魔法」
レイアは答えなかった。
警戒だけが、強くなる。
だが女性は肩をすくめる。
「安心しな」
「この村にいるやつは、全員そうだ」
レイアは目を見開く。
「魔法が使えない」
「サッカーから外された人間しか、ここにはいない」
女性は、手を差し出した。
「私はジョアンナ」
「歓迎するよ――無能力令嬢」
「……っ」
レイアはむっとする。
「違う! 俺は――」
「悪い悪い」
ジョアンナは、あっさりと笑った。
「怒るなよ」
「でもな、ここなら――」
一瞬、言葉を切る。
「魔法が使えなくても、サッカーができる」
その一言で、世界が止まった。
「……サッカー?」
レイアの声は、かすれていた。
「サッカーが……できるのか?」
ジョアンナは、当然だと言わんばかりにうなずく。
「当たり前だろ」
「ここは、サッカー王国から外された」
そして、静かに告げる。
「――サッカー好きの村だ」
胸の奥で、何かが揺れた。
魔法も、反則も、断罪もない場所。
それでも――
サッカーが、ある。
レイアは、差し出された手を見つめたまま、
しばらく動けずにいた。
ここが、本当に“ゴミ捨て場”なのか。
それとも――
サッカーの原点なのか。
その答えは、まだ分からない。
だが、確かなことが一つあった。
レイアの物語は、
ここから、まったく別の形で再び動き出す。




