表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢と暗黒サッカー  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

序章 悪役令嬢とサッカー

目を覚ました瞬間、まず違和感があった。

天井が高い。

やたらと装飾が多い。

そして、俺は——天蓋付きのベッドで寝ていた。

「……は?」

起き上がろうとして、さらに混乱する。

手が細い。白い。明らかに俺のものじゃない。胸のあたりには、柔らかい感触まである。

どう考えてもおかしい。

だが、もっとおかしいのは――

俺の中身は、つい昨日まで日本で暮らしていた中学生男子だということだった。

「夢……じゃないよな、これ」

そう呟いた瞬間、カーテンが音もなく開かれた。

「おはようございます、レイア様」

「起床のお時間でございます」

侍女が三人。全員メイド服。

しかも、完全に本物だ。コスプレではない。

レイア?

誰だそれ。

「え、いや、自分で着替えられるから!」

反射的にそう言ったが、侍女たちは困惑した表情を浮かべるだけだった。

そもそも、目の前に差し出されたドレスの構造が一切わからない。リボンと布の暴力だ。

——だが、俺の頭の中は、それどころではなかった。

今日はサッカーの予選初日だ。

部活の。

負けたら終わりの、大事な試合。

「サッカーに……行かないと」

ぽつりと漏れた、その一言。

次の瞬間、空気が凍った。

侍女たちの顔が、みるみる引きつっていく。

誰かが小さく悲鳴のような声を上げた。

「……だ、断罪よ」

「断罪イベントよ……!」

断罪?

イベント?

「追放……!」

「早く、国王様にご連絡を!」

意味が分からない。

本当に、何一つ分からない。

そのまま俺は、状況を説明されることもなく連れ出され、豪奢な玉座の間へと引きずられた。

そして——

「悪役令嬢レイア。

 そなたを、国外追放とする」

一方的な宣告。

俺は、この世界に来てから何もしていない。

本当に、何も。

言ったことといえば、ただ一つ。

「サッカー」

——それだけだ。

旅立ちの朝。

門の前に、王子が立っていた。

だが、その目には、かつての婚約者を見る温度など微塵もなかった。

汚らわしいものを見るような、露骨な嫌悪。

「レイア……そなたは、サッカーをしていたというのだな」

「……それは、私への裏切りだ」

意味が分からない。

隣では、ヒロインらしき少女が涙ぐんでいる。

「レイア様なんて……なんてひどいことを……」

いや、だから何がだ。

どうやらこの世界では、

サッカーは重罪らしい。

下手をすれば禁教令が出ていてもおかしくないほどに。

理解不能なまま、俺は辺境へと連行されていく。

サッカーを口にしただけで、

人生——いや、令嬢生が終わった朝だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ