第8話 階段の数え方
今回は、わたしが初めて
「不思議には、答えがある」と実感した話です。
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小学生の頃 —
今思えば、少し変わった子どもだったのかもしれません。
外で走り回るよりも、校舎の中を歩き回っている時間のほうが、ずっと長かったからです。
実家のある山あいの土地では、学校も決して大きくはなく、木造と鉄筋が混ざった、少し古い校舎でした.
冬は廊下が冷え、夏は窓から入る風が気持ちよく、遠くには、参道の杉並木が見える場所でした.
その学校には、昔からひとつの不思議がありました.
校舎の端にある階段は、昼間に上ると3階までしかないのに、夕方や夜になると、4階まで続いているように感じる、という話です.
しかも、その階段は、数える人によって段数が違う。
同じ場所を上っているはずなのに、
30段だという人もいれば、32段だという人もいました.
子どもたちは、それを面白がり、
あの階段は増える、とか、消える、とか、
そんな言い方をしていました。
わたしは、その話が気になって仕方ありませんでした。
ちょうどそのころ —
学校に新聞部ができ、
わたしは迷わず入部しました.
理由は単純で、不思議を調べて、
文章にすることができると思ったからです。
放課後、1人で階段を何度も上り下りしました
昼間の明るい時間と、日が傾いた時間。
靴の先を揃えて、1段ずつ確かめるように数えました.
すると、確かに、数が合わないことに気づいたのです.
違いは、途中にありました.
踊り場の直前にある、少し幅の広い段 —
よく見ると、その段の端には、
細い刻み文字が彫られていました。
逆から数えてみると、
その文字が、順番に意味を持って並ぶことに気づきました.
日付、学年、番号 —
校舎が建てられた当時の情報が、
階段そのものに、隠れるように刻まれていたのです。
夜になると段数が増えたように感じたのは、
影の向きで、その刻みが浮かび上がって見えたからでした.
だから —
数える時間と、数える人によって、
段数が変わっていたのです.
わたしは、そのことを記事にまとめました。
写真を撮り、図を描き、
なぜ数が違うのかを、丁寧に説明しました。
新聞が配られた日、
クラスメイトたちが、
本当だ、と声を上げて階段を数えに行くのを見ました。
担任の先生も、
よく気づいたね、と言ってくれました。
そのとき —
胸の奥が、少し熱くなったのを覚えています。
誰もが不思議だと思っていたことに、ちゃんとした答えを出せたこと。
それを、みんなが面白がってくれたこと。
あの階段は、今も、
変わらずそこにあるのでしょうか。
1957/3/10、6、15、17、23、、、
山に囲まれた校舎の端で、
虹色に揺らめいて見えたあの階段を、
今日も、誰かが段を数えているのかもしれません。
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