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第2話 父とわたしと、最初の謎

前回からお読みいただき、ありがとうございます。


第2話では、

事件や暗号そのものではなく、

「なぜ、この語り手は“違和感”を見逃さないのか」

その原点を書いています。


謎解きは、突然ひらめくものではありません。

小さな沈黙や、言葉にされなかった一瞬を、

「そのままにしない」ことから始まるのだと思います。


この話は、その最初の一歩です。


派手な謎はありませんが、

この先に出てくる“手がかりの読み方”は、

すでに、ここにあります。



−4284799


わたしがミステリーを好きになったきっかけは、まちがいなく父でした.

思い返すと、その理由をうまく言葉にできないまま、ここまで来た気がします.


父は、いわゆる無口な人でした.

仕事のことも、自分のことも、あまり多くは語らない人でした。



でも、ミステリー小説の話になると、少しだけ雰囲気が変わったのです。

声の調子も、間の取り方も。



子どものころ、夜になると、父は1冊の本を持ってきて、

「今日はここまで読んでみようか」と言いました。

その言い方が、わたしは好きでした。



犯人当ての物語だったり、密室の謎だったり、

暗号が出てくる少しむずかしい話だったり。

内容は正直、よくわからなかったと思います。



それでも、父は答えを教えてくれませんでした。

「どう思う?」と聞かれて、

考え込むわたしの様子を、ただ待っているのです.



ときどき、沈黙が長く続くこともありました.


その時間が、なぜか嫌ではなかったのを覚えています.


ある日、紙に書かれた簡単な謎を渡されました


意味のないように見える記号と、少しの工夫.

それを見た瞬間、胸の奥がすこし熱くなりました.


考えて、間違えて、また考える.


父は隣で、うなずくでもなく、否定するでもなく、ただ、そこにいました。



ようやく答えにたどり着いたとき、

父は小さく息をついて、静かに笑いました。



それだけでした.




今思えば、父は「正解」を教えたかったのではなく、

「考えること」を残したかったのかもしれません.



結果よりも、その過程を.


物語を読むとき、

ふとした違和感に立ち止まる癖は、今も残っています.


たぶん、それが父からもらった、いちばん大きなものです。

言葉にしないまま、受け取ったもの.


+1628634


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


父が出した謎は、

紙の上の問題ではありませんでした。


答えよりも、

「考えている時間」そのものを、

どう扱うかという問いだったのだと思います。


この物語では、

大きな謎ほど、説明されません。

代わりに、

読み飛ばせてしまいそうな部分に、意味が残ります。


もし途中で、

「ん?」と立ち止まったら、

それはたぶん、正しい反応です。


次回から、

その違和感が、少しずつ形を持ちはじめます。


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