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第8話「カーリーを探せ!!」

夏っぽいお話です。作中は春ですが。


〈バカ4人組〉

ウリエ・ルミコ:山吹色。天使。

葵あおと:地球のような青色。生徒会副会長。

弔咲とむらさき:上品な紫。ザ・お嬢様。

漆・ファー:黒味を帯びたつややかな赤色。クソガキ。

 授業。

 むらさきが「今日は何やってるの?」とルミコに聞く。

「カーリーを探せ。」

「ウォーリー?」

「みたいなやつ。」

「小説でウォーリーなんてやるもんじゃないわよ。」

 むらさきはぶつくさ文句を言いながらも、ルミコの机上に開かれている本をのぞき込む。「海の絵? いや、水槽かしら。でもこの絵、人がいないじゃない。」

「カーリーっていうのはイソギンチャクのこと。海水アクアリウムの厄介者で、毒があって繁殖力も強いから、水槽内で増えてサンゴや魚に悪影響を及ぼしちゃうわけ。そうならないように駆除しないといけない。」

「カーリーって人かと思ったらイソギンチャクなのね。」

「ほらこれ。ライブロックについてきちゃうんだけど、こいつをちぎるとちぎったところからまた生えてきちゃう。基本的には駆除剤を使うんだけど、ペパーミントシュリンプっていうエビに食べさせる方法もある。」

「へぇ、このエビがカーリーを食べるんだ。」

「そういうこと。はじめの方のページはカーリーが湧きまくってるんだけど、ここら辺のページまでくると主人公の知識と経験値が上がってカーリーが見つけづらくなってくる。」

「なるほど、このイソギンチャクを探すのね! ちゃんとウォーリーで安心したわ。」

「このページもう一個カーリーがあるはずなんだけどわかる?」

「えぇ?」むらさきが目を凝らして隅々まで絵を見る。「このエビ、手になにか持ってるわよ。」

「カーリーだぁ!!」ルミコが大声を出す。

 教室がざわめく。「カーリーって誰?」「もしかしてハリウッドの?!」皆が窓の外を見る。

 葵が感心した様子でルミコを見る。「ハリウッドの人とも知り合いだなんて、さすがルミコだ!」

「いやぁそれほどでもあるよ。もっと褒めてね。」

 ルミコは適当に誤魔化し、むらさきを見る。

「いやぁ、まさかエビが持ってるとは思わなかったよ。」

「私これ得意かも……!」

 ルミコは深く頷く。「むらさきの力が必要だ。一緒にやろ。」

「授業終わったらね。」

「はいママ。」

「ママじゃありません!」


 放課後の教室で真剣な顔をする二人の女子生徒。もちろんルミコとむらさきである。

「これってカーリー?」むらさきが指さす。

 ルミコが答える。「それはちっちゃいタコ。」

「これは?」

「それはケヤリ。」

「これは?」

「んー、ヒドラかな。」

「これは?」

「わかんない。」

「むずかしすぎる!」

「あっ見つけた。」ルミコが指さす。「これがカーリー。」

「ぐぬぬ、負けてられないわ!」

 難しいと嘆きながらも二人は次から次へとカーリーを見つけていく。

「この魚何か持ってるわよ。」

「ポンポンだね。」

「チアの?」

「そ。んでこっちはフリフリのスカート。」

「紛らわしい。」

 次のページ。

「これカーリーかな……」ルミコが絵を凝視する。「違った。ちょびひげだった。」

 むらさきが指さす。「これは?」

「もみあげ。」

「これは?」

「からあげ。」

「これは?」

「はげ。」

「これは?」

「あげあげ。」

「水槽に棲みつくミニチュアおっさん、からあげ食べて満足げ。何よこれ。」

「あっ、このページにカーリーは無いみたい。おっさんがカーリーを食べましたって書いてある。次!」

「マジで何なのよ……。」

 カレーライスみたいな水槽。

「カーリーライスってか、やかましいわ!」むらさきがツッコむ。

 海賊船が沈む水槽。

「この海賊船リアルね。腐食した感じとか、骸骨とかも。」

「テーマに合わせた水槽をつくり楽しむっていうのがこの本の趣旨だからね。」

「これカーリーじゃない?」

「ここにもある。これは簡単だったね。次。」

 その後も様々なテーマの水槽が登場した。

 ラストは珊瑚や熱帯魚が泳ぐごく普通の水槽。

「おちんちんみたいなカーリーと寝不足OLの毛穴みたいなカーリー、ゴミのようなカーリー、もうひとつおちんちんみたいなカーリー。あと一個わかんないんだけど。」

「やめなさいよカーリーをおちんちんっていうの。エビが不憫よ。」

「不倫?」

「他の男のあれを食べるって意味ではあながち間違いではないわね。」

 二人は絵を凝視する。

「ねぇこのエビ。」むらさきが指さす。「何か持ってる気がするけど、何かわかる? 反対から見てると全然わかんなくて。」

「ええっと、ほんとだ。本かな?」ルミコが理科室から借りパクしてきた顕微鏡でそれを見る。「あぁ!! これめっちゃ小さい『カーリーを探せ!』だ! すげぇ、カーリー見つけたり!!」

「えっ、マジで?! 見せて!」むらさきも顕微鏡を覗き込む。「マジじゃん! やったぁ!!」

 二人はハイタッチする。

 ページをめくると作者のあとがきが書かれていた。

 ルミコが読み上げる。「ええっと……、最後のページには秘密があります、だって。非常に小さいカーリーがあるので顕微鏡で見つけてくださいね、って。やばさっきの隠し要素だった。」

「じゃああたしら最後の一個見つけられてないじゃん。」

「戻ろ。」

 二人はページを戻す。

 絵を見る二人。むらさきが「あっ」と声を出す。

「ねぇルミコ。ひとつ聞いていい?」

「おしっこ?」

「違うわよ! ……いや、質問の系統としてはそっち系かも……。」

「?」

「今までは〈カーリーを探せ!〉って書いてあったけど、このページだけ、〈カーリーを探しています〉って書かれてるじゃない?」

「あ、ほんとだ。」

「この書き方、まるで行方不明の人を探しているみたい。」

「確かに。」

「私反対から見てたから気づいたんだけど、この珊瑚、人の顔に見えない?」

「えっ……。」

 むらさきが指さす珊瑚はこちらを見て微笑する女性の顔のように見えた。

「ねぇルミコ。カーリーって、誰?」

「やば鳥肌。からあげの伏線回収。」

 カーリーの謎を解明するため、二人はアマゾンの奥地へと向かいたかったが、外が暗くなってきたので普通に家に帰った。二人は夜中トイレに行けずチビりそうになった。

 第8話「カーリーを探せ!!」終

 知らない方がいいこともある。でも、どうしても好奇心が勝ってしまう。人って愚かな生き物だねッ!


 残された謎は3つ。1つ目はカーリーとは誰なのか。2つ目はカーリーを食べたおっさんについて。最後、カーリーはどこにいるのか?

 最後の謎は海賊船が知っている。

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