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第6話「トーテムポール部、始動!!」

〈今回登場する人々〉

ウリエ・ルミコ:山吹色。天使。

葵あおと:地球のような青色。生徒会副会長。

弔咲とむらさき:上品な紫。ザ・お嬢様。

漆・ファー:黒味を帯びたつややかな赤色。クソガキ。

 授業。いつものようにプリントを前から後ろへ回す。

 むらさきがルミコを見る。

「何してるの?」

「折り紙。」

「毎時間色んなことを思いつくわね。それで何折ってるの?」

「龍。」

「龍? でも三角のパーツばかりだけど。」

 ルミコの机には緑色の紙と、三角形に折られたものが丁寧に並べられていた。

「三角のここに隙間があるでしょ? それで、こっち側は貝殻みたいに頂点が枝分かれしてる。この隙間に三角の頂点の片方を差し込む。もう片方はまた別の三角パーツの隙間に差し込む。これをいくつも組み合わせて形を作っていくんだ。」

「なるほど細かいのね。それでいつできるの?」

「もう大部分はできてるよ、ほら机の下。」

 ルミコの机の下には、三角パーツを巧みに組み合わせてつくられた躍動感ある龍が置かれていた。

「折り紙手芸っていうらしいよ。これの次はフクロウをつくるつもり。」

「ルミコって器用なのね。」

「まあね。フクロウつくったらむらさきにあげる。」

「あら、いいの?」

「うん、この龍も漆にあげるつもりだし、いいよ。」

「ありがと! 楽しみにしとくね!」むらさきは微笑んだ。ルミコは鼻血ブーしそうだった。あっぶね。

 ルミコはふと思う。「むらさきって放課後何してるの?」

「放課後? 特に何も。」

「たまにはカフェでも行こうよ!」

「いいわよ! けどルミコ、たまにはって言うけど、私たち今日初めて会ったんだけど。」

「まだ学園生活初日だったね。ということは、この6話分全部1日の出来事ってこと? 高校生活ってこんな波乱万丈なの?」

「さすがに詰め込みすぎよね。カルピス原液を直で飲むくらいの濃さよ!」

「思い切ったことするなぁ。夏休みまであと何日あるってんだい。」

「このままのペースだと夏休みまで50話くらい費やすことになるわよ!」

「やべぇ! 筆者が持たねぇ!!」

「でも私たちが筆者の心配したって仕方ないじゃない。」

「それもそうだ。あんなの死んじまえばいい。」

「酷いわね……。」

 キンコンカンコン、終業の鐘が鳴る。

 ルミコが立ち上がる。「さて、行くか。」

 むらさきも同じく立ち上がる。「いざ。」

「あ、葵と漆も来る?」とルミコが聞く。

「行きましょ!」「へへんっ! 行くに決まってるぞッ! いざッ!!」

 カフェ。

「よく考えりゃ、筆者がオシャレな飲み物の名前を知ってるとは思えないぞ」とルミコが筆者をバカにする。てめぇ。

「バカを言えッ!! 筆者なんてぶっ殺してうちらだけで楽しめばいいッ!!」漆は筆者ぶっ殺しゾーンをうろちょろする物騒なガキである。

「まぁ、適当な飲み物とって、読者に想像させるスタイルにしたらいいんじゃない?」と葵は筆者に助け舟を出す。優しい。

「甘やかしちゃダメよ。と言いたいところだけど、新作のやつ飲みたいし、今日は大目に見ましょう!」むらさきはなんだかんだ言って我々のママである。美しいおでこが脳裏に思い浮かぶ。

 ルミコはふと思う。「そういや、私部活入ってないや。皆部活とか入ってんの?」

「私は何も。生徒会の仕事が忙しくて。」

「私は書道部に入ってるわよ!」

「うちは剣道部ッ! めんッ。そばッ。うどんッ。」

「あ、漆。もしやごぼうチャンバラ得意?」

「何それ? でも多分食べれる。」

「暇な時やろうよ。」

「おけッ!」

「ルミコは何の部活入るの?」と葵が聞く。

「トーテムポール部かな。」

「そんな部活うちに無いわよ」とむらさきがすかさずツッコむ。「……それで、その部活は何するの?」

「トーテムポールで輪投げする部活。」

「バチ当たるわよ! それに、トーテムポール部じゃなくて輪投げ部でいいじゃない。輪投げ部もないけど!」

「何かを狙うという意味では、弓道部が近いかもしれない。」

「葵、フォローしなくていいのよ! それに全然近くないから!」

 漆が手を挙げる。「うち矢で射抜きたい人がいるッ!!」

「それは好きな人? 嫌いな人?」と葵が聞く。

「嫌いな人に決まってんじゃんッ!!」

「カフェで殺人衝動を吐露しないでちょうだい。牢屋で恋バナする羽目になるわよ。」とむらさき。

「みんなトーテムポールは持ったな!!」トーテムポールを抱えたルミコ。

「「おーっ!!」」葵と漆もトーテムポールを抱えている。

「あんたたちどっからトーテムポール持ってきたのよ!!」

「弓道部にカチコミじゃあ〜っ!!」

「「おりゃーッ!!」」

 三人がカフェを出て弓道部を殴りに行く。

「待てこのトーテムポール部野郎!!」むらさきが瞬時にカードでお支払いを済ませ、漆のトーテムポールを奪い取って振り下ろし、皆の行方を阻んだ。

 ルミコが「あっぶね走馬灯が見えたぜ。」と冷や汗を拭う。「走馬灯の馬が腐ってて助かった。」

 漆がはっとする。「その馬、もしかして体力測定の時の……!」

「ふっ、多分そうだろうぜ。」とルミコ。

 漆が涙ぐむ。「そう、我が愛馬はまだ三途の川の辺りをうろついていたのねッ! あとで迎えに行かなくちゃ!!」

「あぁ迎えに行ってやんな。今生の別れにならないようになっ。」ルミコが黄昏れる。「夕陽が綺麗だぜ。」

「……その馬、桜鍋にして食べてやろうか。」むらさきは息を切らしながら言う。

「おーい三人とも〜。」一足先に弓道部にカチコミしていた葵が大きく手を振りながら戻ってきた。

 ルミコが手を振り返し、戻ってきた葵に聞く。「どうだった?」

「弓道場の柱が腐っていたからトーテムポールに替えてきた。」

「反応は?」

「個性的ですねと褒めていたよ。」

「それは何より。」ルミコご満悦。

「葵、それは褒めてないわね。」

 むらさきは世の中には建前と本音があるということを教えたが、葵はいまいちピンと来ていない様子。葵は話を続けた。

「柱をトーテムポールに替える時、弓道場の屋根が崩れてしまったから、複数のトーテムポールを横並びにして屋根にした。」

「さすが葵だ。トーテムポールを贅沢に使った匠の技だよ。」とルミコがグッと親指を立てる。

「弓道部の顧問の先生も、『今度アメリカに行ってみようかな』と言って喜んでいた。」

「それでこそカチコミの甲斐があるってもんよ。……あ、そうだった。」ルミコは何かを思い出した。「ねぇむらさき。」

「何かしら?」

「折り紙手芸でトーテムポールつくったんだ。あげるね。」

「あら嬉しい、ありがと……ってえぇ!!」

 高さ4~5メートルはありそうなトーテムポールの折り紙手芸。

「しかも動くし、移動する。ここに取っ手、ここに足置き場があるから、チャリの代わりにもなる。」

「変に実用的ね。……実用的なのかしら?」

「それ一番乗りッ!!」漆がトーテムポールにしがみつく。

「ならば私も」と葵。

 ルミコもトーテムポールにしがみつく。「悪いなむらさき。このトーテムポールは三人用なんだ。」

「いいわよ私は歩いて帰るから。」

「チッチッチッ。」とルミコが人差し指を振る。「トーテムポール部のリーダーは、トーテムポールの頭部にある仮設椅子を組み立て、そこに座ることになっている。トーテムポールを四人用にできる権限を持っているのは、リーダーしかいない!」

「いつから私トーテムポール部のリーダーになったのよ!」

「まあ細かいことは置いといて、私たちを踏み越えて特等席に座りたまえ。」

 むらさきは何だかんだ言いつつ、トーテムポールをよじ登り、頂上を目指す。「意外と頑丈にできてるのね。」

 むらさきは仮設椅子を組み立て、座った。「眺めは悪くないかも。」

「さてリーダー。出発の合図を。」

「リーダー!」「リーダーッ!!」

「OK! ではみんなつかまって! 出発進行!!」

 トーテムポールは何処へゆく。いつか夢見た地平線のその先へ。

 夕焼け空には一番星が輝き、バカ四人組のトーテムポール部を微笑ましく見届けていた。

 ──第6話「トーテムポール部、始動!!」

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