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第4話「昼食と書いてバトルロイヤルと読む!!」

〈今回登場する人々〉

ウリエ・ルミコ:山吹色。天使。

葵あおと:地球のような青色。生徒会副会長。

弔咲とむらさき:上品な紫。ザ・お嬢様。

漆・ファー:黒味を帯びたつややかな赤色。クソガキ。

 授業。プリントが配られ、それを前から後ろへと回していく。

 むらさきがルミコにプリントを回す。

「はい。」

「せんきゅー、おでこ姉ちゃん。」

 ルミコはピンセットを使って何やら作業をしていた。

「何してるの?」

「ふりかけのごまを取ってる。」

「はぁ?!」

「次お昼の時間じゃん? ご飯にふりかけ使うじゃん? ごま嫌いじゃん? そういうこと。」

「いや意味わからん!!」

「あ、窓開けないでよ! ふりかけ飛んでっちゃうから。」

「わかったわよ……。」

 むらさきは深く考えず授業に集中することにした。

「いやはや、今日は暑いね!」漆が立ち上がって窓の方に行き、窓を全開にした。「ふぅ涼しいッ!」

 びゅー。ふりかけが宙を舞う。「っ……!てめぇっ!!」

「ぎゃー!!」漆は窓の外に放り出された。

 むらさきが呆れ顔で笑う。「あらあら、ふりかけが舞っておりますわ。まるで散りゆく桜のよう……ねぇ葵。えっ……?」

 葵はチネリ米を作っていた。「あっ、ふりかけが舞っている!」葵が上手く回収して、ふりかけご飯ができた。

「でかした葵!!」「いいコンビネーションだった!!」二人は熱い握手をした。

「入る学校間違えたかな?」むらさきはようやく気づいた。


 お昼。

 弁当を持参する者、購買で買う者様々いるが、学校内で米から作る者はなかなかいない。

 ルミコと葵が弁当箱を取り出す。

 むらさきはその様子を見て「具は持ってきてるのね」と言う。

「具?」ルミコは首を傾げる。

「えっ、違うの? じゃあその弁当箱は何?」

「あぁ、具をみんなから拝借しようと思って。」

「図々しいやっちゃな!!」

 葵が言う。「実は、具は作ったんだけど弁当箱につめるのを忘れてしまったんだ。」

「えぇそんなことある?! いや、葵ならありそうね。」

 ルミコは立ち上がる。「とは言ったものの、私にも良心はあるわけで。とりあえず購買に行ってみようと思うのだ。」

 葵も立ち上がる。「私の責任だから私も行こう。」

「いってらっしゃい。もしダメだったら分けてあげるから。」むらさきは開けかけていた弁当箱を閉じ、二人を待つ決意をした。「存分に暴れてらっしゃい!」

「ありがとう、むらさき。いってきます!」「いってきます!」二人は教室を出て一目散に購買へと駆けていった。

 購買。既に人だかりができていた。

「葵、何買う?」

「ご飯はあるから弁当系、おにぎり系、パン系は除外される。あと、競争率の激しい唐揚げも今回はパス。残されるは……。」葵は棚にある、残りわずかになったあるものを指さす。「コロッケ!」

「コロッケも人気だろう?」とルミコはたずねる。

「今日はメンチカツもあるから、皆そっちに引っ張られている。でも人類は思い出す。コロッケという存在に……!」

「よし、ならばコンビネーションだ!」

「あぁ!」

 作戦はこうだ。まず、ルミコが瞬間移動でコロッケの前まで移動し、二人分のコロッケを掴みとる。

「よし、ゲット!」

 だがコロッケを手に入れようと躍起になった者たちがルミコを掴んで離さない。「それは私たちのコロッケよ!!」

 想定内。コロッケをレジに並んでいる葵に向けて投げる。

「さぁ、来い!」

 だが、すんでのところでそれをキャッチする者がいた。「やはり来たか、主食コロッケのめんち……!!」

「ははん、ざまあみやがれ。アタイからコロッケを奪おうなんざ百年はええんだよ!」

 めんちは購買内を素早く逃げる。お昼休みギリギリまで逃げ続けるのが彼女のやり口である。

 別の惣菜はどうか、いや、もう既に売り切れている。ならば!

 葵はめんちを追うことにした。ギアを上げ、身体をあたためる。「購買を破壊しない程度に、素早く!!」

 めんちと葵の攻防。場慣れしているめんちが優勢に思われた。「ははん、なかなかやるじゃねえか。だがまだだ!」めんちはさらにギアを上げる。

「くそっ……追いつけない……!」

 その時、思い出される幼少の記憶。

「あおと。」

 ママ……!

「あおとは頑張り屋さんね。えらいえらい!」

 ママ、私頑張ってるよ。頑張ってる、よね?

「大丈夫、不安になることは何もない。あおとは頑張ってるよ! 頑張り屋さんのあおとにできないことはないわ! あおとは何だってできる。何にでもなれる。私が言うんだもの。ううん、私の子どもだもの! だから、思い切りやって、あわよくば世界をひっくり返してしまいなさい!」

 そうだよね、私はママの子なんだから、何だってやってやる!

 先ほどのむらさきの言葉が思い出される。「存分に暴れてらっしゃい!」

 雑踏の中からルミコの声が聞こえる。

「葵、楽しめ!!」

 楽しむ。そうだよね。

 みんな、わかったよ。

「私の最高をぶつける。刹那、脚華龍嵐きゃっかりょうらん。」

 その脚、華のごとく軽やかに、龍のごとく豪快に、嵐のごとく青々と。その姿まさしく龍神である。

「まずい、追いつかれる……!」めんちは購買にある物を投げつけ距離をとろうとした。

 その時、購買をうろつくガキひとり、彼女は全てを見ており、咄嗟に身体が動いた。「うちが盾になるッ!! だから葵、行けッ!!」

「漆……! ありがとう!」

 ドサッ。葵とめんちは倒れ込む。雑踏を切り抜けたルミコがコロッケを受け取り、会計に持っていく。

 めんちがつぶやく。「アタイの負けだ。」

 葵は首を横に振る。「いいや、君の走りは見事なものだった。私も皆の助けがなかったら負けていたかもしれない。」

「へっ、そうか。」

 会計を済ませたルミコが帰ってくる。「んじゃ葵、行くか。」

「あ、ちょっと待ってくれ。」葵はコロッケをひとつ受け取ると、それをめんちに手渡す。

「なんの真似だ。」めんちは眉をひそめる。

「これは君が食べるといい。私を本気にさせた褒美だと思って受け取ってくれないか?」

「へっ、何様のつもりだ……ってアンタまさか……!!」

「自己紹介がまだだったな。私は葵あおとと言うものだ。ここの生徒会副会長をやっている。」

「マジかよ。あの伝説の……。そりゃあ勝てるわけないよな。」

「もう一度言う。君の走りは見事だ。ではまたどこかで。」葵は手を振り別れを告げた。

 めんちはコロッケにかぶりつく。「美味い……、美味い。」めんちの頬には涙が伝っていた。


「で、コロッケを三等分すると。ちっさ。」

「まぁ漆にも手伝ってもらったし。」

「へへんっ! 前の借りを少しは返せたかなって!!」

 むらさきはぼろぼろになった三人を見て笑う。「なんでそんなにぼろぼろなのか知らないけど、三人とも頑張ったのね。ほら、私のもあげるから!」

 ルミコと漆がむらさきに抱きつく。「ママぁ、ありがとう!!」

「誰がママじゃこら!!」

 葵は窓の外を見る。ママ、ありがとう。私、頑張ったよ。

 ──第4話「昼食と書いてバトルロイヤルと読む!!」

 いや、まだママ死んでないよ。

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