ミッション04;子の卒業式らしい部長の、スムーズな有給取得を実行せよ
なろうラジオ大賞6に参加させてもらってます。
「ハル先輩と俺」の社内恋愛シリーズ化でお題全部にチャレンジしよう!の、4作目。
「卒業」は入れたけど・・・恋愛は・・・ははは。
「今週の木曜でしょう?もう明後日じゃないですか」
「急で申し訳ないとは思うし、無理なら仕方ないとは思ってるよ」
来客を見送った俺が片付けようと会議室に戻ると、申し訳なさそうな部長と隠し切れない不満がにじみ出た課長が、何やら言い合っている。
「失礼します」
そっと入室するも、既に飲み終えたコーヒーの紙コップは重ねて端に寄せられ、テーブルも拭かれたようだ。時代は令和、個々の価値観はともかく、男女や役職で雑務を強要しないのが会社の方針。それでもペーペーだし、と戻った手前、手持無沙汰も何なので、カップと台拭きを持ち、軽く会釈をして部屋を出た。
事務所に戻ると、主任のデスク周りに同僚が集まっている。活発に意見を交わす様子で、何やら相談しているようだ。
「戻ったか、健太もちょっとこっち!」
呼ばれて俺も主任のデスクへ向かう。
「木曜、部長は休暇だから。部長が予定していた打合せとサンプル説明は私と課長で対応するので、社内の調整をしたい」
主任は直近のスケジュールを再度振り分けて、簡潔な指示を出してくる。さっき会議室で課長と話していた感じだと、もっと面倒なのかと思ったのに。
「以上、質問ある?」
「いえ・・・先ほど会議室で課長が渋っている感じだったので、もっと大変な事なのかと」
「ああ、あの人は社外の打ち合わせが苦手だから行きたくないんでしょう。けど仕事ですし、うちの会社はチームプレー重視ですから」
主任は爽やかな笑顔で言い切る。
部長は年上の課長を気にしているのに、主任は割り切っているんだな。
「部長の娘さん、高校の卒業式だそうですよ。奥さんが予定していたそうなんですが、急に出張が入ったとかで」
交代は当たり前だよね?ってな顔で言う同僚の赤城さん。
「今は会社も夫婦も助け合い、『誰の役割』で縛るんじゃなくて、互いに努力と譲り合いが必要だよな」
同じく同僚の紺野さん。
「私も時短させてもらってるから、資料作りは在宅で協力しますよ」
育休明けの夏菜さんも。
俺は他の会社を知らないが、働きづめだった母の職場とは別物なのだと想像できる。
それなりに歴史はあるけれど、田舎で小規模な会社が不景気と人材不足を乗り越えるには、人的環境整備しかなかったらしい。
だとしても、この成果は凄いんじゃない?
「私もたくさん、助けてもらったんだよ。恩返しチャンス!」
ハル先輩の笑顔も眩しい。
距離感近くてめんどくさいと思ったけど、俺も視野広げないとダメだな。
読んで下さって、ありがとうございます。
恋愛ジャンル・・・詐欺でスミマセン。
次は頑張ります。多分。きっと。