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第72話 再び空虚感

~翌日~


凜花「キラリおはよ~!」


キラリ「おはよ……」


凜花「ねぇキラリ、昨日はどうだった?」


キラリ「んん……けっこう疲れた……」


凜花「何があったの?」


キラリ「なんか立ち方とか歩き方とか色々教えてもらって……」


そう言ってキラリは思い出したかのようにスッと姿勢を正し、菜松から習った歩き方を実践してみた。


それを見た凜花が口をポカンと開けて立ち尽くす。


凜花「ちょっ……え!?ウソぉ~!めちゃくちゃカッコイイじゃん!!!」


キラリは立ち止まりクルリとターンをして凜花の方へ振り返る。


キラリ「これ、けっこう疲れんのよ……」


凜花「いやぁ……喋ると残念なんだよね……でも何か別人見てるみたいだった!キラリ!凄くいい女って感じに見えるよ!」


キラリ「いや、元々いい女だからさ!」


凜花「だから喋んない方がいいって……」


キラリのルックスは並以上であるのは間違いない。難があるとすれば口と素行の悪さだけである。


凜花「キラリ!頑張った先にきっと良いことが待ってるよ」


キラリ「そうかなぁ……」


凜花がニヤニヤしながらキラリの顔を見るのでキラリは気になり


キラリ「さっきから何ニヤついてんの?」


凜花「ううん……別にニヤついてなんか……でも……」


凜花はキラリに話したくて仕方がない。しかし悠陽に固く禁じられてるので、もどかしくてしょうがない。


キラリ「なんだよぉ~、気になるじゃん!」


凜花「とりあえずもっともっといい女になって翼のお父さんに認めてもらわなきゃね!」



~その日の放課後~



キラリが校門を出て凜花と帰宅するところへ、やはりシルバーの高級車から運転手の男が降りてきて後部座席のドアを開けて


運転手「お疲れ様です。ではお乗りください!」


と、キラリを促す。

他にも沢山の生徒達が歩いているが、もはやこの光景は珍しいものではなくなっていて、チラチラとキラリの方を指差しながら好奇な視線を送りながら通り過ぎていくが、騒ぐ者はいなくなっていた。


キラリ「凜花……ごめん……」


キラリは申し訳無さそうに言うが、凜花は逆にキラリを車の方へ強引に向かせて


凜花「花嫁修業なんだからもっと楽しまないと!」


そう言ってキラリの背中をポンと叩き送り出す。


キラリ「うん……行ってくるね……」


そう言って車に乗り込む。





~とある高層ビル〝Future Tycoon〟~



キラリは昨日と同様、壁全てに鏡が張られた、だだっ広い部屋に通され真ん中の長テーブルの前に据えられたパイプ椅子に腰を掛けて待っていた。


しばらくして部屋のドアをノックする音が聞こえ、“ガチャ”とドアが開いた。


菜松「こんにちは、キラリさん」


相変わらず無表情無感情な菜松が顔を出す。


キラリ「な…菜松さん……こんにちは……」


菜松はヒールをカツカツ鳴らしながらキラリの正面に立ち


菜松「ではさっそく昨日の復習から始めましょうか。キラリさん、立って」


キラリ「はい」 


菜松「では向こうに向かって歩いてみて」


キラリ「はい」


コッコッコッコッ………


菜松「そこでターンしてみて」


クルッ、コッコッコッコッ………


菜松「はい、ちゃんと覚えていらっしゃいましたね。非常に美しいですよ」


キラリ「………」


菜松「では次のステップに進みましょうか」


そしてキラリは菜松から2時間程お辞儀の仕方のレクチャーを受けた。


菜松「はい、キラリさんよくできました。歩き方同様、忘れないように毎日鏡の前で練習してくださいね。では今日はこの辺で」


キラリ「はい、あの……菜松……さん……」


菜松「はい」


キラリは非常に言いにくそうにモジモジしてる様子を見て菜松が顔を覗き込む。


菜松「どうされましたか?」


キラリ「何か……菜松さんと居ると不思議と翼のことを思い出しちゃう………」


菜松「そうですか?」


キラリ「うん……何でかわかんないんだけど……菜松さんと翼は全然違うんだけど……ちょっとした優しさが……」


菜松はキラリの頬にそっと手を当て薄っすら笑って


菜松「そうですか……私があの方と……それは非常に光栄なことです」


菜松は何かを思い出しているかのように視線がどこか遠くを見ている。


キラリ「菜松さんは翼のことを知ってるの?」


菜松「えぇ、よく存じておりますとも……」


キラリ「そうなんだ……どこで知り合ったの?」


菜松「そうですねぇ……あのお方と最初にお会いしたのは……」


そう言いかけて菜松が腕時計に目をやり


菜松「キラリさん、そのお話しはまた機会があればゆっくりとお話させて頂きますね。今日はもうお時間なのでごめんなさい……」


キラリ「そう……ですか……」


キラリはまたもや菜松の心の扉の前で“ピシャッ”とシャットダウンされたかのような空虚感に(おちい)っていた。


菜松は部屋のドアを開けてキラリが退出するよう促す。

キラリはペコリと頭を下げて部屋を出る。

菜松が先頭を歩きキラリが後ろからトボトボと付いて歩くと


菜松「キラリさん、歩き方をお忘れですよ」


後ろを振り返りもせずにそう言った。

キラリは驚き菜松に習った綺麗な歩き方で再び歩き出した。

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