第八話「影と蔦の式神“日月星華”」
「それじゃ、相手するよ。」
そう言って、崩壊した、銀座付近にあった事務所で姉貴と仇の戦いが始まった。
「まずはどうされるのが好みかな?犯罪者さん?」
そういう事か。犯人が誰かわからない筈だった阿崎が、『狂姦』を犯人だと理解したのは顔を見ていた姉貴が教えたおかげだろう。今、理解した。
「んー、サクッと殺されてほしいな?『火炎の腕』。」
「残念。“残影”。そして、“分影”。」
強いな。“残影”でフェイクを作り、“分影”で自分を増やす。そして、分影で生み出した分身に戦わせておけば自分はやられない。
「ははっ!面白い力だねぇ‼︎良いね良いな良いよね良さそうだ!“寄生”」
「分影に寄生した⁉︎」
阿崎が驚愕の声を上げる。
「フフッ!ハハハッ!最高だ!『火炎の腕』!『影引き』‼︎」
前方指向生の影の腕が分影もろとも姉貴をぶっ飛ばす。しかも、火炎により、再生不可能状態にして。
「フフッ。残念ながら、貴女如きにやられてはあげないわよ?阿崎!」
「おう!“影踏み”!」
阿崎は軽やかにステップし、姉貴を自分の影の中へ仕舞い込んだ。そして、もう一度、“吐き出す”と形容するのが一番なほどに姉貴がぶっ飛んだ。そして。
「「“影集”‼︎」」
真夜中の深夜。という限定的な時間だからこそ使用可能な膨大な量の影が形を成してゆく。
「「はァァァァァァァ!“黒鯨”‼︎」」
膨大な量の影が黒い鯨になり、狂いに狂った異常者を呑み込んで――
ゆかなかった。
「そうか。 分影と化してたんだったな。星華。俺がやる。任せてくれ。」
「分かった。」
こうして、阿崎と姉貴の意見が一致して、それがここのみんなの意思表示となる。
「怪異の力。それが怪能。その中でもsss級の怪異の力。行くぞ。『八尺眼』‼︎」
そして、阿崎が目を閉じ、『狂花』がそれを隙と見て、『影引き』と『火炎の腕』の併用で阿崎を一刀両断して――
「ア?」
しなかった。そこには、しばしの静寂。そこに突如漏れ出る『狂花』の呻き。そして、それは漏れ出た勢いのまま悲鳴に変わった。
「アガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎」
そんな絶叫を残して、死んだ。その隣で、阿崎も苦しそうに呻く。
「グウウ。つか、うんじゃなかったぁ!」
「だ、大丈夫か?」
「あ、ああ。悪いな。あれを使うと一瞬だけだが俺も死ぬんだよ。」
「うえ。」
ヤバすぎるな。デメリットにも程があるんじゃなかろうか。見たところ激痛も継承しちゃってるみたいだし。それで死ななかった奴が出てきたら確実に殺されるぞ。
まぁ、でなさそうだけど。
まぁ、何はともあれ、これからも色々ありそうだな。……まだ見ぬ仇――『狂姦』についても。
第二章前半
END
これにて前半終了。ちなみに『狂花』は生き永らえております。まぁ、死んだといえば死んだけど。