第三話「色彩々3」
割と今までで一番書きたかったものかもしれない。
(取り敢えず今回は捨て回。)
「でも。できる限り情報集めだ!」
俺はそう言いつつ、鬼の右腕で地面を抉る。ここが学校の運動場でよかった。相手の顔が月光に照らされ見える。それは、赤髪が夜空になびき、月光で天使の輪が出来る。そして、その中で輝く事を諦めたかのような黒眼。奴――彼女はひたすらに戦闘に酔いしれていた。
「テメェは!阿崎んとこの!」
「ハイ。私は酔狂阿崎宗介様から【陶酔】の地位を頂きました。あの方は最強なのです。それで、我が式神による死闘をお楽しみ下さいませ。そちらを肴とさせて頂きます。是非。陶酔、させて下さいね?」
などとはなす。その顔はうっとりとした顔して、自分だけの世界に入っているかのようだ。そして、式神?と言ってたな。まぁ、大丈夫だろ。情報が知りたいだけだし。
「さて、足掻いて足掻いて私のつまみになって下さいね?《幽冥水陶式神》“風雷”。」
そう言い放った瞬間、妖力が集められ、人型の形を成す。そして、その強大な力を持った化け物はおもむろに手を振りかざす。その瞬間、俺の腹から赤黒い液体がビシャリと音を立てて流れ落ちた。
「ああ。綺麗な血液。いい。良いわぁ。とても画になるわよ!最高の肴を見つけたわ。ウフフ。」
などとふざけた事をぬかし、嗤う。更に、その人型は手を動かさずとも先ほどの攻撃が出来るようで、今度は背中が切り開かれた。
「ガハァッ!クソッざけやがって。」
と俺は勢いのままに突進した。そして、気付く。風が集まっていることに。
「そういう事か。この式神の能力は“風刃”。風の刃か。」
と、俺が考察を披露する。しかし、突如バチっと鳴ったかと思うといつのまにか俺の片目が今度はぶった斬られていた。
「グワァァァァァァ!」
「どう……なって……?」
「フフッもう長くないみたいね。お疲れ様。まだ酔えてないけど、よく頑張ったわね。」
赤髪が揺れる。
「一つ。教えてあげましょうか。私の式神、“風雷”はね、式能“風刃”と式能“雷刃”なの。片方は遠距離特化、片方は速度特化。しかも知能は人間と同等、会話もできるのよ。ねぇ?風雷?」
「はい。全ては主人の為に。」
「クソッしくじっ…………た。」
こうして、俺は意識を失った。側から見れば美女が俺を見守るかのようにして。
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「こんな時まで阿呆なこと言ってんじゃねえよ。“水”」
「へっ?」
ああ、そういう事ね。確かに死ぬ可能性があるな。この異能は、死ぬ可能性が高い所つまり峠を越えたところからやり直しになるんだったな。久しく使ってないから忘れてたぜ。
「へってなんすか?」
「あー。死んで来た。」
「あ、マジすか。じゃあもっと警戒するか。」
「おう。」。
「取り敢えずぶっ放すか。“水”“火”【六芒星】‼︎《太陽極光》‼︎」
デジャブの嵐に乾いた笑みが溢れそうになるが、今は堪える。そして、その時は訪れた。
肺近くの風穴。それは十中八九“風刃”によるものだろう。だから俺は迷わなかった。
「オグフッ!」
俺が変な体勢で、かがみこむ。そのお陰で俺は足取れかけ(朽葉に頼めばなんとかなるが。)。
「サンキュ。“水”。でも、あんま無理しないで下さいよ?」
と、心配される。そりゃそうか、誰だって傷付くのを見るのは嫌なものだ。それは今まで人一倍そういう場面に出くわす事の多かった俺には分かる。そんな感慨を抱いていると、奴はやってきた。
「あらあら。どうやらお二人共生き残ってるみたいね。まぁ、良いわ。やってしまいなさい。“風雷”。」
あのバケモンが襲い来る。
「怪能『鬼の右腕』。」
取り敢えずはこれで様子を見よう。先程とはちがう。
「あ、2対1じゃ不公平よね?“風雷”。」
「はい。少し不公平です。」
「フフッ。私も加勢したげるわ。どうぞ、私達を戦いに陶酔させてね?」
などと彼女も戦闘に介入してきたのだ。
「私の異能は無い。けどね。誇れる物はあるのよ?式神の操縦。それと、巫術、魔術の習得とかね。阿崎流巫術“壊羅”。当たるだけで細胞が崩壊する霊弾よ。じっくりと味わいなさい♪」
「ヤベッ!」
朽葉に狙いを定めたようだ。だが、悪いな朽葉。助けに出向きたいが目の前の式神が邪魔だ。
「さっさと倒す。お前はしっかりと持ち堪えろよ!」
俺はそう激励をする。
「もちろん!なんなら倒しますよ!」
と言っていた。
「風刃。」
目の前の式神は、一言呟いて風の刃を飛ばす。しかしその刃を俺は力の限り腕を回し、打ち消す。更に右腕で地面を抉り、大地を砕く。その砕かれた土石片は礫となって襲い掛かる。
「フンッ。《大地隕片》‼︎」
「チッ!めんどくさいなぁ。“雷刃”。ハァ。《雷刃双蓮華》。」
そう言い放った瞬間、速度重視の雷の刃双つが華の模様を描いて隕片を打ち砕いてゆく。そして――
「風刃。」
俺に風の刃が襲った。
次回と次次回で第一章は終わりかな?