第一話「色彩々」
ちょっと遅くなっちゃいました!
僕は今書類を持って、ここ。――愛媛県の一番南にある、僕の同期の家へやってきた。その理由は、僕の同期――日月智也に【彩牙】から発行された、書類を渡す為である。
「久しぶり!智――」
そこまで言って急速に止まる。何故なら、智也の家の玄関もベッドも、智也が座っている場所以外のあらゆる部分が足の踏み場も無いほど汚れていたからだ。
「おお。朽葉じゃないか。ささっ、俺の家入りたまえ。」
「入れるかあっ!そもそも、ゴミのせいで踏み場が無いんじゃあ!」
「君って突っ込む時変な喋り方になるよね。」
などと頭おかしい(勿論智也が。)話をしていると。
「えーっと、そろそろ本題に入ろうか。」
はぁ。誰のせいだと思ってんすか。
「ああ。じゃ、本題に入るかな。本題は、新たな怪異、それもアイツが関わる怪異だ。」
と、僕は資料の内容をかいつまんで説明する。すると、それまで、やんわりとした態度だった智也の顔色が変わる。
「本当か?朽葉。嘘なら今言っておいた方が良い。じゃねぇと。」
「いや、何年一緒に居ると思ってんすか……嘘では無い。」
「ならいい。悪かったな。さ、行こうぜ?」
「次の冒険へ!ってやかましいわ!」
などと張り詰めた雰囲気から一転し、また、アホらしい雰囲気になった。そして。
「あ、詳細が聞きたい。よろしく。」
「ん。分かった。任せろ。怪異としては、血が搾り取られて、真っ青になった死体と、もう一つ。全身に切り傷をつけて血塗れになった状態の死体が有りました。どちらも失血死です。あ、あと、そのどちらも肝臓が消えていました。」
と答えた。すると、
「なんか混ざってる?」
「僕も思ったよ。該当する怪異は、「青い紙赤い紙」、「紫ババア」の二つですね。」
そう。この時点でおかしい。完璧になんらかの人物が関わって来ている。
「青い紙赤い紙」は、赤い紙を選べば全身が血塗れになって死に、青い紙を選べば、血液を抜かれ、真っ青になった状態で死ぬ。「紫ババア」は、人の肝臓を奪う。僕が今話した内容も綺麗に該当している。
二つの怪異が同時に存在する確率は極めて低く、しかもその怪異が手を組むのは流石に有り得ない。それが僕達の見解となった。
まぁ、なんにせよ。
「調査。してみるか?」
「当たり前だな。行くぞ!ほれ。」
「この近くの私立中学校に目撃情報があるんで、行こうぜ。」
「おう!行くぞ!サンキュな「資料」。やはり持つべきは優秀な部下だぜ!」
「大概戦うの僕なんだけど⁉︎」
――私立中学校――
既に外は真っ暗でいかにも何か出て来そうな雰囲気が立ち込める。
あ、ちなみに、政府公認の組織の為、なんらかの依頼、もしくはそこが関係あると睨んだ場合、政府に話を通せば、簡単に開けてくれるのだ。僕達は早速、学校の中へと入っていった。
そして、特に何事も無く四階のトイレに上がってこれた。それから、トイレには。既に妖力が立ち込めていた。妖力とは、怪異や式神などの人ならざる者達が持つ、力の源である。それに特性があり、低級怪異はその特性を扱う事で戦うのだが、それはまた別の話。
「ハハッ完璧ビンゴじゃねーか。でも、アイツ。阿崎の気配はねぇな。」
ふいに、そう智也が話しかけてきた。
「はい。そうですね。」
その時だった。突然のハスキーボイスが鼓膜を打ち付ける。
『赤い紙が欲しいか?青い紙が欲しいか?』
(来やがった!どう対応する?どうしようか。)
僕が焦りに焦っていたその時、
「どっちも要らんわゴミカス。死ね!怪能「鬼の右腕」‼︎」
と、叫び、ぬ○○○に出てくるあの右腕を解放する。
その瞬間、怪異のハスキーな叫び声が鳴り響く。
『己己己!我等は阿崎様の僕‼︎我は強いのだ!貴様如きに負けるものか!』
そんな叫びも、最後の抵抗をするかの様な腕の振り上げも虚しく鬼の右腕。それに葬られた。
「終わったな。」
「いいえ。まだ、紫の方がいる筈。」
と、警戒するように頼んだ束の間。
「ガハッ!」
と呻き、きょうかがらすを強化ガラスをぶち破って四階のトイレから智也が吹っ飛んでいった。そして、僕にもその魔の手がやってくるが、一足早く
「クソッ!ざっけんな!異能「四大元素」‼︎“土”」
俺の異能「四大元素」。それは、火、水、土、風の四種を操る異能だ。この世に10人しか居ない【自然系】の
異能力者の一人が僕。【彩牙】所属、【蒼牙】焔咲 朽葉。それが僕だ。
そして、今、“土”を操る。四大元素の土は、加工物や、鉱石、地面を操る。勿論俺もそれが出来る。ただし、一つの些細な弱点が、地面に手を触れなくてはならないと言う事。まぁ、別に壁とかでも良いのだが。トイレだし、あまり触りたく無いがひたっと冷たい感触を送りつけてくるトイレの壁に異能発動の意志を込めてその力を発動する。そして、トイレの壁、いや、今はもう、学校の壁か。とにかく、壁を歪ませ、俺の望みに一番近くなるであろう形に変貌させる。グニャリと壁を動かして急いで智也の元へ駆け付ける。
「大丈夫すか?俺がなんとかする。任せてくれ。」
とだけ俺は言った。
「戦闘の時だけ、お前の一人称俺になるんだっけ。慣れねぇなそれ。」
やめてほしいんだが。
「こんな時まで阿呆なこと言ってんじゃねえよ。“水”」
“水”は癒し。その力で今度は智也を治す。そして、俺はまた“土”を使い、駆けて行く。
「“水”“火”【六芒星】‼︎《太陽極光》‼︎」
“水”は癒し、創造、水を操り、“火”は破壊、怒り、火を、操る。その二つが混ざり合う事(錬金術の中で火は△。水は▽)で六芒星と成り、純粋な破壊の力も、また、創成する力も持つ最高のエネルギーへと変貌する。そして、そのエネルギーを凝縮して、直径20mもの地球からしたら全く小ぶりじゃない太陽を創る。その太陽をくるくると回し、ゆっくりと怪異に向けて放っていく。コントロールがしずらいからゆっくりと動かすしか無いのだ。そして、お年寄りの女性の姿をした、全身紫色の怪異は当たってもいないのに、既に焼け爛れていた。そして、苦しみから解放する絶大な力を持った太陽が襲う。最後に紫婆は断末魔の様な掠れた声を上げて消滅した。しかし、それでは済まなかった。一瞬だった。
気付いた時にはもう遅かった。いつのまにか、腹部に風穴が開き、口から赤黒い液体を吐き出した。そして、俺は膝から崩れ落ちていった。
苦しい。熱い。痛いんじゃ無い。熱い。呼吸が出来ない。
(ああ。これ、肺が潰れてんのか。死んだわ。クッソ。)
突如現れる死の感覚に慣れなく思うも死にたく無い思いを抱きながらも、諦観した。
「と……も……や。」
お前の異能でお前の【死に戻り】で、俺を――
「ふざけんなぁ!テメェ‼︎」
最後に彼はそんな言葉を言っていた様な気がした。
俺はゆっくりと意識を失って――。
次回は視点が変わりますんで、お楽しみ下さい!
いやー赤、青、紫。似た色なんでそんな色彩々じゃ無いかも(笑)