第15話「狂える鬼神」
「ぁ」
一瞬、目が潤む。
「殺す。 」
と、頭上に居る、商店街の屋根の上に立つ巨大な蜘蛛女の姿を捉え、叫ぶ。脚に血管で創られた鎌をもう一度生やし、アラクネを切り刻んだ。
「ヵ。」
アラクネは糸となり、消滅する。しかし、ただの三大怪異で済めばいいが、現実は残酷だ。
「キャハッ!勝てたと思った?ザーんねーん!まぁまぁ、死んで逝きなよ!『火炎の腕』。」
蜘蛛女の腕が、火炎に包まれる。そして、意識を失いつつある鬼神を殴り着火させ、肉体ごと焼き尽くした。
「ぁ、ぅ。」
嘔吐感、嫌悪、鬱、数々の陰鬱な感情が渦巻く。渦巻いて、渦巻いて、渦巻き続けて。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
発狂する。発狂して、周り一体を護るべき力で壊した。
ドゴンッ。ドゴンッドゴンッ。ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ!
バラバラ、、、。
ぐしゃり。
「カァ」
死んだ。
「ァァァ。」
嘔吐感。胃液をぶちまけ、ゆっくりと顔を上げる。
「君。君さ、あの女の……弟だよね。アイツは、俺を振った、阿崎なんかと付き合うために。クズめ。あんな奴。死んで当然だろ?」
陰鬱な感情……取り巻く感情が変貌……いや、塗り替えられる。
“怒り”へと。
「あ?ふざけんじゃねぇ!『神の左腕』ぇぇ!」
神を顕現。嘔吐感もそのままに、裁きを下そうと腕を振るう。
しかし、届かない。
「君は。人の話も聴けないのかい?やっぱりそっくりだな。「虚空断絶」。」
凄まじい速さで衝撃波が飛び、智也の腕も翔ぶ。
「霊式式神。“影天”!」
「ハイハイ!呼ばれて飛び出てボッコボコやぁ!」
頼もしき、阿崎の式神が、突如現れる。
「は」
疑問の声すら挙げさせてくれずに、ヴィートは吹き飛ぶ。
「大丈夫?阿崎、構えて。」
「分かった。星華。頼む。」
と、臨戦態勢が即座に反転し、阿崎が前線へと。
「ぁ。」
智也は、また嘔吐感が込み上げ、胃液をぶちまける。
咳払いし、何とかしようとするが、吐き続ける。
「大丈夫。ゆっくりでいいから。阿崎に任せときなよ。アイツ、強いよ?」
智也の、自身の姉からは、多大なる信頼を感じた。
「だ、駄目だ。アイツは、イカれてる。おかしいんだよ。存在が。」
それが、智也の下した判断。絶対に勝てないと。例え阿崎だろうが、碧牙だろうが蒼牙だろうが、勝てないと。けれど、そんな言葉じゃ、信頼は崩せなかった。
「大丈夫。大丈夫だから。任せて。そして、任せときなよ。」
そして。ふとした瞬間に、阿崎が飛んでくる。
「ちっ。これはお前が適任だよ。星華。任せた。」
「もっとカッコイイとこ見せてよ。全く。分かった。アレ、使えばいいんだね。」
「全能『宝天の星華』。」
死にまくる展開で終わるのかと思いきや。希望が見えましたね。
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