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虚弱なヤクザの駆け込み寺  作者: 菅井群青
第一部
35/102

病院廃墟


 車に押し込まれると手を縛られ頭を布のようなもので覆われた。

 後部座席に座らされ両隣に乗り込んできた男たちの体温を感じて一気に震え出す。


「大人しくしてたら……命はとらねぇよ」


 耳元で囁かれ、より一層震え出す。


 車が動き出した。

 光田さんは無事だろうか……最後に見た光田の姿は私をかばって頭に金属バットを受ける姿だった。


 どうか、どうか……無事でいて──。


 自分の置かれている状況も危険なのはわかっているが、どうしても怪我をした光田のことが気になってしまうのはやはり医療人だからだろう。


 しばらくすると車が減速し砂利らしき場所へ侵入し停まった。


 バンのドアが勢いよく開けられ横にいた男が幸の腕を取り車から降ろす。

 建物の中を引き摺られるように歩くと、急に腕を離され床に転がされる。


「……った」


 肘を激しく打ち付けてジンジン痛む。

 頭を覆っていた布が外されると目の前にその布を握りしめながらタバコを咥えた男と目が合った。ヤンキー座りをしたまま至近距離で幸の顔を覗く。


「ふーん、この女で間違いないの?」


 金髪の髪にパーマをかけた綺麗な顔の男が後ろに控えたスーツの男に声をかける。細めの紺のスーツを着たその男は一見ホストのようだ。


「間違いなく龍晶組の組長の女です。毎日欠かさず通っています」


 あー……、ちょっと違う。それ腰の治療なんですとは言えない。だって患者の情報は守秘義務だから。出会った時の組長が生まれたての子鹿みたいにガタブルだったとは言えない。


「趣味が悪いな。もっと巨乳が好みかと……こんな洗濯板──」


 この男はいつか始末してやる。口の中に手を突っ込んで奥歯ガタガタ言わしたい……幸は確かな殺意を抱いた。


 周りの男達はこの若い男の事を組長と呼んでいた。この若さでどこかのトップらしい。

 幸が周りを観察する。壁に管が入っていた跡や天井、ドアのつくりが病室のものと似ている。どこかの病院の廃墟らしい。随分と前に閉院したのだろう。床にビール瓶やゴミも散乱していた。


 組長と呼ばれた男は幸の前に来るとニコッと微笑んだ。天使のようだが、こいつはマズイと本能が叫ぶ。


「俺、黒嶺会の組長してる黒田竜樹(くろだたつき)っていうの。よろしくね、名前は?」


「他のヤクザからは先生って呼ばれてるわ」


 こんな奴に名乗りたくない。


「このアマ──」


 後ろの舎弟が一歩前に出たのを組長が手を挙げて制止する。意外そうな顔をして幸を見る。


「意外に気が強いんだね……さすが、あいつの大切な女だな……汚したくなる」


 竜樹が幸の頰に手をかけて幸に口付けた。幸はすぐにその唇を噛み抵抗する。


「いってぇな……」


 竜樹の唇が噛まれて赤い血が滲む。痛みのある部分を親指で擦り血が出ているのを確認した竜樹は乾いた笑いを浮かべる。


「とんだ、暴れ馬だな……おい、あれセッティングしろ」


 竜樹の言葉に奥の黒いカーテンが二つに開かれる。そこには病室を再現した部屋に大きなベッドか置かれ、壁には俗に言う大人のオモチャが綺麗に並べられていた。

 無知な幸でも分かる。AV撮影所のようだ。いろんな位置に三脚付きのカメラが置かれている。


「こ、これ……」


「いまから先生には女優になってもらう──タイトルは、そうだな輪姦される女医……なんてどう?」


 幸は近づいてきた男に腕を取られ、その大きめなベッドに放り投げられる。


「嘘でしょ……」


 手も縛られたままで抵抗できない。ジリジリと詰め寄る男達を睨むことしかできない……。


「さぁ……はじめようか?──アクション」


 監督である竜樹の冷めた声が部屋に響いた。

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