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虚弱なヤクザの駆け込み寺  作者: 菅井群青
第一部
15/102

女豹と狐



「申し訳ありません。つい興奮してしまって……」


「い、いえ……」


 待合のソファーで座る心の横で糸の切れたマリオネットのように動かない幸田を見て幸ははにかんだ笑いしか出来ない。心に腕を組まれているが合成写真のようだ。


 実は今回の見合い話は心と光田だった。


 心の父親が勘違いしたのか爺かわからないが、心は街で見かけた光田に恋をしてしまったらしい。


「実は、初恋なんですの」


 頰を赤らめるが先ほど光田が襲われているのを見ていた身としてはもう可憐だとは思えない。


 お昼にお見合い会場に現れた組長に光田への思いを語るうちにお互いの恋を応援したいとへんな同盟が出来上がったらしい。なにがまずかったって、二人が中身がそっくりだからだ。黒豹と女豹の運命の出会いだ。心のWデートの夢のためにまずは幸と友達になるところからだとここへ連れてきたらしい。


「その計画だったのになんで襲ったの?」


「あぁ、あれはですね……」

「チッ」


 組長の舌打ちが混じった。組長が話そうとしないので心が幸のポケットを指差した。


「携帯電話のかわいらしい自撮り、ですわ」


 その言葉にマリオネットと化していた光田が次は案山子のように直立する。だらだらと冷や汗をかきながら組長の方を見る。組長は満面の笑みだった。この笑顔の時の組長はマズイ。だが、光田は気づいてしまった。その横で同じような笑顔で微笑む心も一緒だと──。


「私、独占欲が強いのかもしれませんわね」


 いや、独占欲どころか多分組長と一緒で性欲もでしょうね!


「光田様……?」


「は、はい、なんでしょうか?」


 心がソファーから立ち上がり光田の胸元を掴むと可愛く微笑んだ。光田の顔が強張る。


「逃がしませんよ?」


 その言葉に再びソファーへとマリオネットが横たわった。


「いや、ハッピーエンドだな」


 組長の満足げな言葉に、どこがだよ! とは言えなかった。


 ちなみに町田は一人相手がいないのでいじけて帰ったらしい。見なくてよかったと思う、本当に。

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