表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/28

8. サシャとの再会

サシャとアトラが姉弟だという描写を書き忘れてたので、何話か前の話に追加してます!

8*


 建物の中にある売店で飲み物を買った僕たちは、パーティ募集エリアのテーブルにつく。今は誰もいないから、二人でのんびりおしゃべりでもして人が来るのを待とうということになったのだ。こうしていれば、そのうち僕たちみたいな人が集まって、話が進むはず。


 そう、考えていたんだけど……。


 僕とフルルが腰を落ち着けてから、ずいぶんと長い時間が経った。


「だ、誰も来ないね……」


 ずっと周りを見ながら待っていた僕だけれど、とうとうくたびれて呟く。隣のフルルから反応がないのでどうしたんだろうと視線を向けると、フルルはどこから取り出したのか本なんか読んでいる。


 完全にパーティ募集に興味をなくしてる……。


 だけど、それも仕方ないかもしれない。僕たちがここで待ち始めてから、すでに一時間は時間が経っている。初めはのどを潤しながらフルルとたわいない話をしていたのだけれど、そうこうしているうちに誰も僕たちのもとへ来ないまま一時間も経ってしまったのだ。


 僕はまた周囲に視線を向ける。建物の中に人はたくさんいて、たくさんの声が飛び交い、活気がある。それにこの募集エリアにやってくる人もたまにいて、この一時間で二度仮パーティが結成するところも目撃した。


 だけど、僕たちの周りだけ人がいない。そしてその理由も薄々分かっている。


 僕は重いため息を吐いた。


「僕たち、避けられてるよね」


 僕は言った。


 そう。僕たちは他の冒険者から、声を掛けるのを避けられている。かといってこちらから声を掛けようと視線を向けても、お前らには興味ないと言わんばかりに視線をそらされる。そんな反応をされては、僕はとても強引に話しかけられないし、フルルはもともと話しかける気もない。結果こうして一時間なんの収穫もないのだ。


 そして、どうして避けられているのかと言えば、端的に言って僕らが弱そうだからだろう。僕もフルルもまだ十代で、しかもフルルは年より幼く見える顔立ちと体型をしている。僕だってぜんぜん強そうな見た目をしていない。ちっちゃい女の子と、頼りない男の二人をパーティに入れてもうまみがないと思われている。


 こ、これは予想外だったよ。ファルタールでは一人で活動していたし、リディアではすぐにトウリ君たちのパーティに入れたから、こんなことになると思ってなかった……。


「せめて僕たちと同じくらいの年の子がいたらね……」


 僕は辺りを見渡してみる。視界に入る冒険者はみんな僕たちより年上の、少なくとも二十を超えているだろう人しかいない。もっと若い冒険者はおそらくこなせる依頼の幅が狭いため、朝早くに依頼を探してもう出て行ってしまったのだろう。少しゆっくりし過ぎたみたいだ。


 僕は考えの至らなさに落ち込みながら、フルルに声を掛けた。


「ごめんね、時間かけちゃって……。今日はもう無理そうだから、さっき受注した依頼をこなしに行こっか」


 今度はフルルも僕を見る。なんだかパーティを組めなかったことを一切気にしてないような様子で、読みかけの本をしまうって立ち上がる。


「ん、わかった」


 な、なんだか平然としてるね。僕は人が来なくてけっこう落ち込んでいたんだけど……


「じゃあ、はやくいこ」


 フルルは素直にうなずいて、僕をうながす。あっさりしてるなあと思うけど、フルルは僕の言うことに反対もせず、こうして素直に従ってくれる。毒舌で気分屋なところはあるけど、基本はいい子なんだよね。これがマーチさんだったら……。


 僕はマーチさんのことを思い出して、また少し気分が沈む。駄目だ駄目だ、これから依頼なんだから意識を切り替えないと!


 頭を振って、難航するパーティ募集やマーチさんのことを考えないようにする。椅子から立ち上がり、依頼をこなしに行こうと足を踏み出す。その時だった。


「……あの。パーティ、探してるんですよね」


 背後から声を掛けられ、足が止まる。僕は一瞬固まって、掛けられた言葉を咀嚼する。そして、少し前とは打って変わって、一気に気持ちが明るくなる。


 聞き違いじゃなければパーティのことを言っていたよ。や、やった!


 僕は喜び勇んで、にっこり笑いながら振り返った。


「は、はい! もしかして、あなたもパーティの募集を……って、サシャちゃん?」



 僕はそこにいた人物に目を丸くする。声を掛けてきたのは、昨日魔物に襲われているところを助けた少女、サシャちゃんだったのだ。少し遅れて振り返ったフルルが何とも言えない顔をする。


「あ、あなたたちは……!」


 僕たちとの再会に、サシャちゃんも初めは驚いていたようだった。目と口を開いている顔を見ると、年相応の幼さが感じられた。けれど、サシャちゃんの目は次第に細くなっていき、睨むように僕たちを見る。


 な、なんでこんなに警戒されてるんだろうね。


 黙り込んでしまったサシャちゃんになんと声を掛けようか考えていると、珍しくフルルが口を開く。


「あなたもパーティを探してるの」


「……はい。昨日アトラが怪我をしてしまったので」


 フルルの平坦な言葉に、サシャちゃんはそっけなくそう言った。これ以上怪我をしないために、人を増やして安全に依頼を行うってことかな?


 フルルとサシャちゃんは互いに視線をぶつけ合い、また黙り込む。なんだかよく分からない雰囲気が流れる。僕は気まずくなってサシャちゃんに問いかけた。


「そ、そういえばアトラ君はあの後どう? 足に違和感とかないかな?」


「……大丈夫みたいです。血を流したせいでまだ本調子ではないので、今は休んでますが」


「そっか、それは良かった!」


 大丈夫だったみたいだ。僕はほっと胸を撫でおろす。後遺症とかもないみたいだし、少し安静にしていればすぐに良くなるはず。


 冒険者をする上で、身体は大事な資本だからね。何事もないみたいで本当に良かった。


 サシャちゃんは安堵の笑みをこぼす僕に、なにか奇妙なものでも見るような目を向ける。口元を動かして、何か言いたそうにしている。けれど結局口を開かず、うつむいてしまう。


 それから少しして、サシャちゃんはぽつりと呟く。


「……アトラが、あなたにありがとうと。そう言っていました」


 お礼を言われて胸が温かくなる。人に感謝されるとやっぱり嬉しい。


 僕はにこにこと笑って答える。


「じゃあ、どういたしまして、って伝えてくれるかな。あっ、それとね、昨日の別れ際に言ってたアトラ君の治療費のことだけど、そういうつもりで治したわけじゃないからお金はいいよ。なにか僕たちが困っていたらちょっとだけ手助けしてくれるとか、そういうのでいいからね! フルルもそれでいいよね?」


「セージにまかせる」


 そうそう、忘れるところだった。治療費を貰うのはなんだかあれだけど、なにもないとかえって気を遣うかもしれないし、とりあえずこういう形でいいだろう。


 言いたいことを言えて満足した僕に、サシャちゃんはなぜか口をへの字にしている。なんでだろう?


 僕は首を傾げる。それでもサシャちゃんがなにも言わないのを見て、話を本題に戻すことにする。


「それよりパーティのことだけど、どうしよう? とりあえず一度一緒に依頼を受けてみるのがいいと思うんだけど」


 サシャちゃんの返事がないので続ける。


「アトラ君が元気になったら一緒に依頼を受けてみようよ。僕たち朝はだいたいここにいると思うから、準備ができたらまたここに来てもらってもいいかな。その時また詳しく話すってことでどう?」


「……はい。それで大丈夫です」


「よかった。じゃあ、もしなにかあったらこがねの麦亭って宿屋に来てくれたらいいからね。……あ、なんだか勝手に話し進めちゃったけど、フルルもそれでいいよね?」


「……ん、まあ、いい」


 フルルはなんだか含みがありそうに言った。サシャちゃんに思うところがありそうだったからその関係かな……。でもフルルもサシャちゃんを嫌っているようには見えないかったし、嫌なら嫌と言う子だから大丈夫かな。


 僕は一人で納得して、サシャちゃんに「それじゃあ、今から依頼があるからまたね」と告げる。戸惑ったような表情で、サシャちゃんも小さく「また」と呟く。


 一人立ち尽くすサシャちゃんに手を振って、いつも通りにフルルと一緒に、僕は冒険者組合を出るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ