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ペルソナ・ノン・グラータ  作者: セアーコー
2/3

プロローグの次

特定境外地区移住のための特派使節団

一般協力員・久米直の書簡

と、表紙にある。一枚めくると、こうあった。


本史料は第五十八回ワルパド帝国史研究総会議において、一級史料と定められたものである。早急な史料批判が要求された為、第五十二回から第五十七回まで対象であった「アメランタイン口述記録」は本史料の充分な検討が成るまで対象から外すものとする。


本史料は久米直(西暦【地球暦】2008〜???)の個人的日記を閲読し、必要箇所を抜粋したものである。


そして次の1ページから、始まった。


2025年1月5日

俺は一般協力員、という奴に選ばれたらしい。詳しい事はわからん。封筒が届いた、外務省から。とにかく、何かに選ばれた、という事だけはわかる。それしかわからん。


2025年1月5日 追記

来月の4日に何やら国から迎えが来る、というのもわかっている。


1月7日

担任が困ったような顔で声をかけてきた。

「久米にとってはなぁ...不幸か幸福かはわからんよなぁ。だからこそ、俺は応援しか出来ないと思ってるんだ...実際、俺もその恩恵に預かっちゃったわけだからな...まぁ、感謝、というのも変だが...ありがとうな...」


俺はしばらくその発言の意図を考え、ただこう言った。

「先生...」


発言の意図は、全くわからなかったのだ。


2月3日

両親が俺をリビングに呼んだ。やりかけの切り絵を中断し自室を出て二人の前に座ると、母親は既に泣いていた。

父親は豆を食べていた。

母親はごめんねと一言言ったきり、後は泣いていた。

俺はいいよ別にと言って、こんなに泣くと疲れてしまうだろうと思った。

母親はもう、決して若くはないのだ。

父親は豆を食べるのをやめて俺に話しかけた。

父親は今まで何かしながらでないと俺に話しかけることは無かった。仕事をしながら、テレビを見ながら、新聞を読みながら。

父親が俺の目を見て話し出した。

「お前が知っている以上の事は何も言うな、そう言われている」

無言が続いた。

「だったら...」

「だったら話さなきゃいいだろ、って?」

無言。

「俺もそう思うが、だがな...」

セリフは続かず、無言。

沈黙に耐えきれなくなったのか父親は豆に手を伸ばし、しかし皿の上で手を止め、その手で俺の手を掴んだ。

そして黙って強く握った。あぁ、俺の手の方が大きくなってしまったんだな。と感じた。だがな、の続きは聞けなかった。父親は、豆の皿をこっちにやった。食え、ということらしい。

涙を拭いた母親が、酒を2杯注いできた。

一応未成年だけど、と言ったら

「父親は、1度で良いから息子と酒が飲んでみたいものなんだよ」

と言われた。そうなのか?と振り返ると父親は黙って頷いた。そうなら早く言えば良いのに...と思ったが、父親は、少なくともうちの父親は---不器用な生き物なのだ。


結局、何も教えてもらえなかったし、俺も何も聞かなかった。それでいい、と何となく思った。

何文字くらいで投稿したら良いんでしょうか。

数字に関わる事は私にはわかりません。

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