神々のお役所事情
ようやく四話目にして世界の説明をば....
神様って案外ブラック企業だよなぁ....と思ってます。
あちこちから願いという名の無茶ぶりが祈られるんだもんなぁ
休む暇ないよなぁって。
神頼み、したことはありますか?わたしはありますよー
三億とかいわないから、七億当てさせてくれ!って願ってますがジャンボ買う時期には小遣いがないというジレンマ。
あ!小遣い値上げを願えばよいのか!(今更気がつくとか....)
それぞれのお国に在らせられる神々が、それぞれに采配を振るっていたのは、随分過去の神話時代の話だという。
なにしろ全ての生き物に魂は宿り、爆発的に増えたヒト属性然り、ありとあらゆる動物植物万物に魂はつきもので、それこそ神々総出で当たらねば生命の誕生も死も司る事が難しくなったという。
バランスの崩れた世界は崩壊してしまうのだ。
崩壊を危惧した神無月という特定の月に神々が集い会議をする風習のある八百万の神々が居るというとある国の【大国主】という名を持つ神の呼び掛けに応じ、全ての世界でそれぞれの国の全知全能で知られる神たちが集ったのが【ジャポネスクオリンポスサミット】と後の世代に呼ばれる有名な会議である。
会議後、一芸に秀でた神々や女神たちから適任な神を数千神程定めるための選挙が行われ、魂の管轄管理を神界の一大事業と認め、神々の負担を減らすために一元化したのが現在の神界である。
現在は各部門ごとに女神や神があらゆる世界の、全ての信仰の祈りの元に届く内容を吟味し、部門の裁量で魂の均衡を図っているのだ。
唯一神といい、ただ一人の神が修めるお国の神は、魂の浄化再生出生死去などが細分化されたことにより、何万年かぶりにようやく休暇をとることができた、と喜んだという。
神界がお役所方式となり、窓口が細分化されたことにより、あらゆる神の御業は円滑に進むようになったのだ。
死神は早くから分担制を導入していたということで、死去担当なのは変わらずで、たまには他の仕事をしてみたい!有給無償消化反対!と大々的なデモがあったというのは別の話。
兎にも角にも、世間的にも有名であるという理由から、初代運命機能委員役所、通称神庁をZeus神を長官とし、理事会役員を公平に選挙を三千年に一度行う事と定められている........。
先程の、転生を司る女神からの無茶ぶりに【ようこそ!運命機能委員役所*神庁へ!~神庁の誕生から現在~】とかかれた薄いパンフレットを眺めながら誕生したばかりの女神ウルワシューは長いため息をついた。
お茶たてなくちゃ~、などとのんびり過ぎて無責任にすら見えるあの女神に【ちょっと花摘へ....】と逃げてきたばかりだ。
水鏡ばかりが印象に残っていて、どう歩いたかも朧気だが、白い石畳と、真っ赤な柱が連なる外廊下を抜け、緑が眩しい中庭に出た。とぼとぼと項垂れたまま庭に出でる。
赴任初日。
すでに同じように其々の課に赴任した同期たちはきっと希望と誇らしさを胸に任務をこなしている事だろう。
サボるなんて恥ずべき事だ、と巨大過ぎる位巨大な樹木の袂、青よりも蒼い水を湛えた泉の側に設えられたベンチに座って項垂れる。
精霊時代から憧れてきた白亜の神庁。
精霊大学を出て、女神審査に合格した時は嬉しくてしばらく眠れなかった程だ。
できれば恋愛課か、誕生課がよかった。女神花形の恋愛課に任命されたらこんなに憂うつではなかったのに....とため息も長くなる。
転生課は輪廻転生のうちの転生のみを扱うようで、六道輪廻とは一線を画している。
六道輪廻は魂の循環。昆虫や草花、動物、魚、精霊であろうといずれかの魂の輪廻をする。ヒトも例外にあらず、六つの道のいずれかに生まれ変わることを大前提としている。
片や転生とは、ヒトがヒトにのみ、生まれ変わるのだ。
一般的には某かの宿命を帯びたままの魂が転生すると解釈されている。
宿命を果たせなかった魂が次の生でその宿命を果すのだ。
そこまでは事前研修で習ったばかりだ。
赴任初日の今日....転生課の門をくぐった途端に女神の愚痴とも判断のつけようがない長口上と共に、はじめて見せられた試練の儀。
ヒト一人の人生の岐路の瞬間そのままを巨大な水鏡でつぶさに見たのは新米女神には刺激が強すぎた。
「あの女神様は恐ろしい方だわ....わたくしの弱さを試してらっしゃるに違いないもの....」
両手に持ったパンフレットに視線を落としながら肩を落とす。
ご期待に応えなければ....真面目な新米女神は立ち上がりながら長い裾のスカートをパタパタ、と叩くと「そういえば、突然過ぎてまだ女神さまのお名前を聞いてなかったわ....」と独り言ちた。
勇気を持って戻らねば....ふわり、と長い裾のスカートを翻し、新米女神は中庭を後にする。
長い廊下を再び戻る。白い石畳、幾重にも連なる赤い鳥居、豪奢な彫り物が施された天井....全く混沌とした意匠ながらどこか調和が取れている不思議。
歴代の担当神たちのお国の神殿の意匠なのであろうか。
赤と緑と黄金の龍が彫り上げられた柱の一画を抜け、豊かな蔦が絡んだ白亜の柱が連なる一画。
転生課、と描かれた扉が高く聳えている。
両開きの巨大な扉は新米女神の細腕ではびくともしないであろう。
巨人が二人掛かりで全力で押し開けねばならぬような重厚さだ。
新米女神は扉を見上げ、扉横の赤いカーテンを暖簾のごとく持ち上げた。
カーテンの後ろには、普通のドア。無味乾燥もいいところの銀色のアルマイトの取っ手をひねれば、スッと押し開けられる。
ひとつ、大きく息を吐き、「ただいま戻りました....」と声を掛けて入室した。
薄いドレープをたゆませた幾重にも続く天幕。
ゆらゆらと水面の底に居るかのような光の揺らぎが室内に淡い光を反射させている。
美しい蔦が絡む大きな水晶が中央に聳えながら淡い光を浴びながら透明な虹を煌めかせ、見るものをその光で癒していく。
転生課エントランスは室内ながら穏やかな小川の底を漂うような不思議な内装をしている。
その奥から女神が「あらぁ、ちょうどよかったわぁ お湯が沸けたところよぉ」と顔を覗かせる。
こっちよ、こっち、と手招きされ、先程の水瓶のある室内に向かった。
真っ白な部屋の中央に設えられた巨大な水瓶。
瓶のまわりにはなにやら文字らしき彫り物がなされて、所々に宝石の類なのか光る石が嵌め込まれているようだ。
「ああ、この部屋じゃ飲食禁止なのよぉ、こっちよ、こっち。いらしてー。....ところで、貴方、お名前なんだったかしらね?」
明日から家族旅行で大阪にいってきます。
人生初のたこ焼き食べるんだ!と今からワクワクです
大阪の神様ってビリケンさんなんですよね?