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天使達の休息

 ウリエルの話が終わると、ガブリエルが口を開いた。


「つまり、私が見たのは絵を追いかけて飛び降りた姿ではなくて、俊彦氏に殺された姿だと言うの?」

「それはわからないわ。見ていたわけではないし。俊彦氏から逃げようとした先生が窓から落ちちゃったのかもしれないでしょう」

「貴女が俊彦氏を唆して、サラ様を殺した……」


 ラファエルが考え込みながら口を挟む。


「その場合、殺したのは俊彦氏なのかしら? それとも貴女?」

「私よ。私が先生を殺したの。俊彦氏は私の道具に過ぎないというわけ。人を刺したかったら、ナイフを使うでしょう? 私は俊彦氏を使って先生を殺したの」

「では肝心の俊彦氏はどうしたの?」

「さぁ、あれ以来お見掛けしていないわ。逃げちゃったのかしら」

「でもそれは変じゃないかしら?」


 ラファエルは眉を少し寄せて、疑問を重ねた。


「貴女は彼に、サラ様が読んでいた御本の内容を細大漏らさず話したのでしょう?」

「その通りよ」

「だったら俊彦氏がサラ様を殺したのは、悪いことではないはずだわ。どうして逃げる必要があるの?」


 その指摘に、ウリエルは鼻白んだ様子で顔をそむけた。


「そんなの知らないわ。道具がどこに行こうと、私の知ったことではないもの」

「貴女が殺したのだと言い張るなら、道具の行方は知っていないといけないわ。殺人に使った道具から犯人がわかるなんて、探偵小説では定石ですもの」

「そんなのは貴女の理屈よ」

「それもそうね」


 あっさりと認めたラファエルは、優し気な口元に笑みを浮かべた。


「そして私の理屈から言うと、サラ様を殺したのはガブリエルでもウリエルでもないわ」


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