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天使達の終息

 鐘が鳴り終わると、ガブリエルは窓の外を見た。


「やぁね。すぐに日が暮れるんだもの」

「お話をしているとあっという間ね」


 ウリエルも同調して頷いた。


「それにしても人を殺すのって難しいわ。探偵小説のようにはいかないもの」

「あぁいうのは、一人が考えて作るからうまく行くのよ。皆でバラバラに考えちゃうから、変な話になるんだわ」


 ラファエルが俯きながら欠伸をする。


「寝ないで考えたわりに、あまり良い話にはならなかったわね」

「あら、意外と面白かったわよ。「悪魔に憑りつかれている」なんて、そうそう思いつく話ではありませんもの」

「貴女のもなかなか良かったわ。少々反則だと思うけど」


 ミカエルは邪気のない顔で「考えてくるの忘れたんだもの」と言った。他の三人は揃って呆れた表情をする。


「今回の「テェマ」は、貴女が言い出したのよ、早季子さん。考えてこないなんて卑怯だわ」


 鐘が鳴った今、ガブリエルがミカエルの名前を呼んだところで、咎める者はいなかった。


「「サラ姉様」がどんな人か考えるのに夢中になってしまったんですもの。けど、意外と皆さんの考えた「サラ姉様」が面白くて驚いたわ。特に声の印象なんて、全然違ったでしょう」

「私、「サラ先生」は絶対に透き通った美声だと思ったのだけど」


 ウリエルがそう言うと、ラファエルが首を横に振る。


「「サラ様」は甘ったるい、少しくどいぐらいの声が丁度いいわ。そっちのほうが印象に残るもの」

「もういいわよ、今回のお話は終わったんですから。それより、次のテェマは?確か、ミヨさんじゃなかったかしら?」


 少々投げやり気味にミカエルが言うと、ラファエルは外国の女優がやるような、もったいぶった仕草で眉を持ち上げた。


「考えてこなかった罰として、次も貴女であるべきだわ」

「なら次も同じ話にしましょう。私、今度こそ「サラ姉様」を殺してみせますわ。今日の皆さんよりも上手に」


 挑戦的に言い放ったミカエルに対して、他の三人は愉快そうに笑った。

 話した順番に、挑戦に応じる言葉を投げ返す。


「あら、次はもっと素敵な殺し方をしますわ」

「そうよ。一度目に殺している以上、私達のほうが有利なんだから」

「今度は悪魔じゃなくて、狐とかにしようかしら。吸血鬼もいいわね」


 四人は顔を見合わせて、心底可笑しそうに笑った。


 少女たちの戯れに生み出されて、殺されてしまった「サラ」は、再び殺されることを約束された。


 天使を名乗る少女たちは無邪気に笑いながら、礼拝堂を後にする。

 残されたのは朽ち果てたステンドグラスや、埃まみれの椅子ばかりだった。


-終劇-

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