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死神スーサイド  作者: 栗田正平
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第2話死神と死神

「死神」のメンバーが狂気に満ちていく。


 ブロックさんは何を言っているのか。今の俺の頭ではすぐに理解することができなかった。


殺人を犯すために俺たち自殺志願者を集めた?なぜ?どういうことだ?俺は混乱している。今何が起きているのか、正しく理解できない。順調に進んでいたはずの計画が、大きな音を立てて急に壊れ始める。人生というのはいつもそうかもしれない。どんなに頑張ってもどんなに願っても、失敗や挫折は必ず現れる。それも急にだ。だから死にたかったのに…




「ん?」



俺は今…なんて言ったんだ?



「死にたい」


そうだ、俺は今死にたい。今すぐ死にたい。そうだ、そうなんだなんの問題もないんだ。結局死ぬことに変わりはないんだ。ブロックさんの急激な変わりように面食らっていて、大事なことに気づいていなかった。


「俺は死ねるんだ」


そう思うと俺は口元が緩んできた。さぁ殺してくれ。とは言ってもあんまり痛いのはやめてくれ。楽に死ねるやつで頼む。この際なぜブロックさんが殺人をしたがってるのか、どうせ死ぬ運命である我々をなぜ殺す意味があるのか、ということはもうどうでも良い。


そんな喜びに包まれている俺と打って変わって、「死神」のメンバーは荒れ狂う。


「おい、なんだよこれ!?どういうことだ…おいブロック説明してくれ!」


「なんかの冗談わよねぇ?ねぇどうなの答えてよぉ!」


「あぁあぁ、終わりだ終わり。だから人間なんて信用できないんだ。信用できない。信用でき…信よ…し…」


「あぁ、なんたる運命…神は私を見放したか……」



 「あぁ…うるせぇぇぇぇ黙れ!お前ら死にたがってたじゃねぇかよ!お望み通り死ねるんだ。良いじゃねーか!ガタガタ騒ぐな!」


 そんな言葉を発した人間はブロックではなく、俺だ。俺はやはりこいつらとは違う。こいつらは結局子供の家出と同じだ。何か気に食わないことがあれば、その度に家を出て、逃げようとする。俺がこいつらを嫌いなわけは、逃げるからじゃない。またすぐ帰ってくることだ。逃げたくせに、どのツラ下げてまた帰ってこられるんだ。だったら最初っから逃げるな!お前ら結局かまってほしいだけじゃねーか!大丈夫?って心配されたいだけじゃねぇーか!フザケンナ!


 「 そんなお前らなんかさっさと死んじまえよ!」


 真っ暗な静寂の中に突然異物のような光が現れる。車が光り出す。すると車はゆっくりと動き出し、先のない道をゆっくりと、しかし確実に進んでいく。僕らの死を待っているかのように道の先には闇が広がっている。車内には狂乱乱れ、車が揺れる。死にたくない死にたくない。本来、そんな言葉を言うわけがない人間の集まりのはずだったわけだ。耳が侵されていくのを感じる。でもそれも後10メートルの辛抱だ。5メートル、3メートル、1…車が傾く。



 「さよなら。ろくでもないこの世界。」

  

 車の進行方向が90度変わった。俺はこのときが、生きてきて一番良い表情になった。



バンッ


 人が重力に逆らえない姿はなんともおかしな光景である。



 俺たちは下へ下へと押し込まれる。俺は「死神」のメンバーに挟まれるように車内に押し込まれている。車内に響きわたる悲鳴のような叫び声。まぁ、俺もまさかこんな死に方になるとは思っても見なかったが…。ちょっとは落ち着けよーーーブチッ



 目の前が真っ暗だ。死んだのか?死んだら霊になったり、地獄や天国に行くなんてよく言うが、実際にはそんなところなんてない。あるのは真っ暗な静寂だけだったんだな。まぁ、こんなもんか。でも…意識がある…。どういうことだ…?死んで…ないのか!?


 ーじぇ すいs ぢえう で もrt. ゔぉうs ゔぉうs もうっれz えt ぇてs だんs ぇ ぺtりn ー


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


俺の聴覚がおかしくなるほどの大音量が脳内に響き渡るように聞こえる。いや比喩ではなく、これは本当に脳内に聞こえている音だ。明らかに耳とは別の聞こえ方をしている。これは一体なんなんだ…?と目を開けた瞬間光が差しこんできた。今は夜のはずなのに…。


 俺の視界に映ったものは、眩しく輝いている山中の景色と、車内で倒れている「死神」のメンバー。どうやら俺は車が落下した衝撃で割れた窓ガラスから身を出したようで、起きたときには車から出ていた。おそらくだが、「死神」のメンバーは全員死んでいる。ブロックを抜いた「死神」のメンバー、全員の身体を見つけた。酷い有様だった。首がない者、腕がおかしな方向に曲がっている者などいたが、全員ピクリとも動かない。無口だった前髪の長い少年も腕が折れ、足がもげ、顔の付近には大量の血が覆っている。みんなみんな、死んだんだそして冷静になって気付く。



 「俺は死ねなかった。俺だけ死ねなかった。なんでッ!…クッソッ!…なんで一番死にたい人間が死ねないんだぁぁぁ」


すると山の茂みから、黒いマントのようなものを身につけた顔の見えない者が現れた。驚くべきことにやつは宙に浮いている。足がないのである。驚き、戸惑いながらヤツに質問を投げかける。


 「あんたは一体誰だ?」


 するとヤツはゆっくりと喋り出す。


 「私はを死神。お前をは不死身にのしにきた。」

 

!?こいつは一体何を言っているんだ?そう思ったが、どうやら日本人ではないようだ、喋り方や言葉が明らかにおかしい。特に助詞が。でも、死神だと!?ま、まさかな…


 「死神!?不死身?お前は一体何を言っているんだ?あんたはブロックの仲間なのか?どうなんだ!答えろ!」


 ブロックの仲間なら納得がいく。生き残りがもし現れてもいいように崖の下で待ち伏せていてもおかしくはない。

  

 「ブロック?なんだそれは。私はをお前に地球の死神のを殺人を止めて欲しい。だからでお前を不死身にはしてやった。それが嫌ならばが死神を止めることだな。」

  

 めちゃくちゃな日本語でもこいつが言わんとしていることはなんとなく理解できた。


 「俺を不死身にした…だと!?俺はもう一生死ねないって言うのか…。そんな、そんなことって…。」

 

 「お前…死ねないのはが嫌ならばが俺の言うことにを聞け。」

 

 「言うことを聞けだと?」


 「お前達にを殺そうとした人間、それが我々死神界での有名なの「地球の死神」だ。」

  

 「地球の死神…?」


 「我々死神がは死期が近い人間を殺すのが役目だ。だが、ここのところ我々のにターゲットである人間のを次々とあいつはが殺しているのだ。このままでは、我々の仕事をがなくなり、生きていけなくなる。」


 「な、なるほど…つまり、集団自殺を装って集団殺人を行っている「地球の死神」のせいであんたら本物の死神は、仕事をなくしているってわけだ。ってことは、ブロックさん、やっぱりこれだけじゃなく、過去にもやっていたってことか…」


 「そういうことだ。そこででおまえに頼みがある。……「地球の死神」にを殺してほしい。我々死神はを死期が近い人間しか殺すことがはできないし、そもそもふれることにができないのだ。」


 「!?は?お、俺に人殺しをしろだと…!ふざけるな、そ、そんなことできるわけないだろ!」


 「なら、おまえは一生死ぬことがができない人間のままだな。俺にはおまえが死ににたがっていることをに知っている。おまえは一生生きることで、これから地獄をを永遠と送ることのになるのだ。」

 

 「て、てめぇ、ひでぇ酷すぎる…まるで悪魔じゃねぇか…」


 「悪魔ではなく、死神だ」

 

 「…ちゃんと喋りやがった…! ……分かった。殺すことはできねぇ。でも要はあいつにこれ以上殺人を行わせなければいいんだろう?俺に考えがある。」


 「?」

 

 「あいつが殺人をするのは自殺志願者を集めて、集団殺人をするときだ。ならその集団殺人を俺が止める。それでどうだ。」

 

 「それじゃあ、意味がはない。その場は食い止めることがができても、生きていたらいつか必ずまた集団殺人にを行うだろう。それとも、毎回止めるとらでも言うのか?」


 「ああ、そうさ。諦めるまで、食い止めてやるさ。でも、ああいういかれた殺人を犯すような人間ほど、一度の失敗っていうのは心にくるものは大きいはずさ。そう何度も繰り返す必要はないかもだぜ…。」


 「ずいぶんノリノリじゃないか?」


 「ふん…そうかな…でも今俺、生まれて初めて生きているって感じてるよ」

 

 こうして俺は死神に頼まれて、「地球の死神」、死神人間の殺人を止める為、もう少しの間生きることにした。だが勿論これは全部死ぬ為だ。


ここからが僕の本当の人生の始まりだと、このときの僕は気がついていたのかだろうか。少なくとも、今までとは違う世界がここには広がっている。それだけは気がついていたはずだ。


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