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易きに流れる魔王様
「魔王様、今回の魔界会議のマニフェストの承認を。」
西洋風の机の上に承認待ちの紙が山積みにされている。
それに一つ一つ目を通しながら採用か不採用かの判を押す地道な作業。
一応魔王のハズなのに凄く地味な作業だ。
”高杉 良一”は魔族大統領、つまり魔王だ。
至って特別なことと言えば俺は異世界人だということと、魔法の耐性が極端に高いだけだ。
(最近、マニフェストが全部同じ内容に思えるようになってきた・・・)
今日何度目かも分からない溜息をつく。
急に背後から突風が流れ込む。
同時に山積みにされた紙は宙に舞った。
「良一お茶でもいかが?」
金髪の少女が良一の首に手を回す。
「ディルドレ、普通に正面のドアからって何回も言ったのに・・・」
ため息をついて床に散乱した承認待ちのマニフェストを見回す―――
「―――お茶にしようか!」
新は注がれた紅茶を見つめていた。
ここ何ヵ月魔王として職務を全うしてきたのだろう。
なのに特に変わったことなど無いのだ。
死んだ魚のような目で紅茶を見つめているのでディルドレは一つ話を切り出してきた。
「良一と初めて会った時の話をしようよ」