8:彼女
「必要ないよ...」
『え、でも...、なんでも、なんでもいいから
何かお礼がしたいの』
『だめ?』
少女が可愛く首をかしげる。あざとい...
「それなら1つ質問に答えてくれるか」
『う、うん何でも聞いて!』
「この街の魔術師の居場所、知ってるか?」
『え、えっと私が魔術師だわ...」
「お前、名前は?僕の名前はアブディシュタル=ルーク、ルークと呼んでくれていいよ」
長い銀髪に頭には蝶をかたどったと思われる髪飾りをつけた相対的に言っても美しい少女。
身なりも豪華でどこかのお嬢様という感じだ。
こんな少女が魔術師、にわかに信じられないが
『名前、私の名前は...セレナ、家名はないわ。
セレナと呼んで』
「君、魔術師なのか、ちょっと頼みがあるんだ、
聖護符って作れるか?できれば高位の護符が
いいんだ。金はいくらでも払う」
『聖護符ね、わかったわ対価はいらないわ命を助けてもらったんですもの』
「少し疑問なんだけど、君、魔術師なんだろ?あの程度の魔人自分でもなんとかできたんじゃない?」
セレナがうめく。
『ぐっ、使えない魔術師で悪かったわね!私は戦う
たぐいの魔術師ではないの、わかった?』
戦うたぐいの魔術師ではないならどういうたぐいの魔術師かは気になったが、今は後回しだ。
『ところで聖護符なんて何に使うの?
悪魔を封じる時ぐらいしか使い道はないはず
だけれど?』
痛いところを突いてくる、だが話すわけにはいかない
どうするか、そんなことを考えていると
『まぁいいけど、ところであなたこそ何者なのよ
この街の聖職者、悪魔に対抗できる人たちは皆殺されたって聞いたけれど?』
都合よく話を変えてくれたか、助かったと思いつつ
答える。
「僕は...ただの旅人だよ」
『ただの旅人が魔人を一撃ね〜
まぁいいわ、詮索が過ぎたわね、ごめんなさいね』
見たところ彼女は僕と同じ15ぐらいに見えるが
人は見かけによらないということだろうか
魔術師なら見かけを変えることぐらいできるか
そう思いつつ僕は彼女に問う。
「どれくらいで、できるんだ?」
『幸いなことに聖護符ならうちの店に山ほどあるわ。
取りに行きましょうか?』
「いや僕も行くよ、手前が省けるし」
『そう?助かるわ。じゃあついてきて』
彼女はその長い銀髪をかきあげると歩き始めた
僕も彼女についていく