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21:理由
『ちょ、ちょっと起きてよ』
少女が少年を揺さぶる。
「...ん、なに?」
『なんで?なんでここで二度寝⁈』
そうか少し寝て頭がすっきりする。きっと俺が意識を失ったあと悪魔に身体を乗っ取られて...天使を殺したのか。それで力尽きて彼女に助けてもらったのか...
「ありがとう助かったよ、セレナ」
だが、とルークは思う。
「聞かないのか?なにも」
「見てたんだろ?」
『そうね、聞いてもいいのかしら?』
『どうして天使を殺すの?』
なぜかこの少女には自分のことを正直に話せる気がした。
「そこまで大層な理由じゃないんだ。ただの復讐だよでも一番許せないのは...自分なんだ」
「何もできない自分、だから僕は力を欲した。天使や悪魔がいる限り、この世界のバランスは保てない。力がある限りこの世界から悲しみは消えないんだ。力を持つものが全てを奪っていく」
『そんな世界をあなたが終わらせるの?』
「あぁ、僕はもう何も失いたくない...」
それは少年の噓偽りのない心からの叫びだった。