20:聖女
緋の目の悪魔は、天使を殺しただけでは飽き足らず。周囲を警護していた衛兵たちをその剣で屠る。
死体の山を築き上げた悪魔は屍の上、その緋い双眸で月を見据える。
『・・・』
悪魔は語らない、彼らが何を思うのかは彼らにしか、わからない。
『......ルーク?』
そこには銀髪の少女の姿、
『やっぱり、ずっと一人で戦っていたのね。でも今は
わたしが側にいるわ...だから今は、お休みなさい』
そう言うと彼女は悪魔に歩み寄り静かに抱きしめた。
彼女の身体から光が放たれ少年を包み込んでゆく。
緋く光る目は閉じられその顔は元の少年の顔に戻っていた。
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「...ん? どこだここ...」
確かセルクに脇腹を貫かれて...意識を失ったんだったな。ふと見ると脇腹の傷口はすでに塞がれていた。あれからどうなったんだ?、ここは...
『やっと起きた?』
目の前には銀髪の少女がいた。
よく考えると頭には心地よい感触が広がっている。
いわゆる膝枕だった。
ルークはばっと、起き上がる。
「セレナ?」
「なんで君が...」
『なんでじゃないでしょ君、君が夜になっても帰ってこないから探しにいったら道端で倒れてて』
『傷もひどかったから、わたしが直してあげたのよっ!』
よく見ると、ここは森の中だった。鬱蒼と茂った木々が風によって心地よく揺れている。
「でも、なんで森の中にいるんだ?」
状況が理解できない...
頭が混乱した挙句、ルークは少女の柔らかい膝を枕にもう一度寝ることを決めたのだった...