19:悪魔の覚醒
そして玉座まで開かれた道を刹那で駆け抜け、
玉座に座った青年の首を飛ばす。
だがすぐに違和感に気付く、それと同時に
ルークの脇腹に鈍い痛みがはしる。
「⁈」
「くそ、やられた」
すぐに気づく、ルークが斬ったセルクは人形
本体は違う場所にいた、
始めから気づかれていたのか。
なんて頭のきれる奴だ。
恐らく聖槍を人形に持たせることで本物だと思わせ、それにまんまと引っかかった。
そして無防備な背後からの一撃、違和感に気づいて、すぐに避けなければ殺られていた。
「なんて奴だ...」
「それはこっちのセリフだよ、あの体制から即座に致命傷を、避けるなんて思わなかったよ」
「だが、ここまでだその傷ではもう俺に勝つことはできまい」
本体のセルクが姿を現す。
「くそ血が止まらねぇ」
駄目だ意識が... こんなところで立ち止まっていられない、くそ、くそっ!
そんな思いとは裏腹に
ルークの視野がだんだんと狭くなっていく。
そして遂には意識が途切れる。
金髪の青年は倒れた少年を冷たい目で見据える。
「君は、もっと天使の力を有効に使うべきだ。来世でな、さらばだ少年」
そう言い、セルクはその槍をルークに向ける。
「⁈」
その瞬間、青年の右腕は聖槍もろとも吹き飛ばされた。
青年は状況を理解できない。何が起こった⁈
見ると力尽きたはずの少年が蒼い炎をその身に纏い、闇色の靄を周囲に散らす長刀をその手に握り締め、ゆらりと立ち上がるところだった。先ほどまでの少年とは違いその目は緋く光り血走っている。
その全てを見下すような恐ろしい双眸にあてられ青年は小さく呟く、
「蒼い炎、煉獄の業火の象徴...」
「君は、悪魔なのか...」
移動を認識させない速度で迫る悪魔をセルクは土人形で防ぐ、だがその全てを悪魔は破壊していく、およそ10秒にも満たない時間で最後の土人形は砕け散った。
青年は残った左腕に聖槍を持ち、悪魔の斬撃を薙いでゆく。
だがそれも長くは続かず聖槍が弾きとばされ、青年は跪く。
「一体、君は...」
続きを言い終わらないうちに悪魔は青年の首を飛ばした。
主を失った聖槍はその輝きを失い、無慈悲な悪魔によって粉々に砕かれた。