18:対峙
一人で座るには大きすぎる玉座に腰掛け、その街の高級ワインを惜しむことなく飲み干した、金色の長い髪の美青年、セルク=バスクールは、ほんの一瞬で消えたながらも己に向けられたわずかな殺意を感じ取り、彼はいつも側に置いてある、金色に輝く聖槍を手に取り意識を外に集中させていた。
ルークは聖堂を守る衛兵を全て声を上げる間もなく
無力化し、玉座に座るセルクの様子を聖堂の柱の影から窺っていた。
「いい加減出てきたらどうだい?」
はったりか?こっちの場所を探そうとしているのか
バレているなら暗殺は失敗、だが場所がわかっていないならまだ刺せる。
「そこの柱の後ろ僕には見えているんだよ」
「バレたなら仕方ない、ひとつ頼みがあるんだが」
そう言って柱の後ろから姿を見せる。
「なんだ?今更、許してくださいとでも言うつもりか?」
「悪いことは言わねー、その槍俺に渡しなそうしたら命は助かる」
「ふはははは、それは面白い冗談だ」
「お前も天使の本性を知っているだろう?そいつら
に関わってろくなことはない、俺がそいつを殺してやる。」
「はは、同じ聖晦を持っている君に言われても
説得力がないよ」
「そうか、なら死んでも文句を言うなよ」
言い終わった瞬間、ルークの雷光を纏った聖剣はすでにセルクの喉元にまで届いていた。
「神速の剣、思い知れ」
だが、一筋の雷光は、一本の槍に阻まれた。
「聖槍ラファエル 司る大地の力を解放せよ」
その瞬間なにもない空間から土の人形が現れる。
「ラファエルの司るもの、それは地、この大地に立つ限り、私に勝るものはいない」
「残念だったな、初撃で私を殺せなかったのが運のつきだ」
確かにこれはやりにくいルークは冷静に分析をする。
雷を司る彼の剣では土人形にはダメージを与えられない。持久戦に持ち込まれた時点で不利な状況に追い込まれている。
その間にも迫り来る土人形を切り捨てながら
彼は打開策を考える。
「だめだ、セラフィエル何か打開策はないか⁈」
『そうだね、君は土人形をどうにかすることに必死みたいだけど、そんなの無視してあいつを狙いに行きなよ』
お前この数を無視してあいつまで辿り着けるわけないだろ。100体以上もの土人形がルークに襲いかかっている。
『いや、僕の力の一部を使えばいい奴らの速さなら
雷光の速さには追いつけない』
「天使を殺すのに天使を頼るなんてな...
笑えねぇがやるしかないか」
セラフィエルの力を取り込み肉体が天使に近づくことでルークの体からはまばゆい光が放たれる。
「一閃撃」
閃光の如き一撃でルークの前に立ちはだかっていた
土人形が一体残らず吹き飛ばされた。