表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RACRIMOSA ~異世界来る前からチート持ち~  作者: 夜光電卓
第一楽章 異世界来る前からチート持ち
3/49

♯3 奴隷商襲撃

最初は連続3話投稿しました。第三話です。よろしくお願いいたします。

誤字脱字、感想等ありましたらお願いいたします。

次回以降は水曜、土曜に一話ずつ更新していきたいと思います>>


尚㋅㏠になにか面白い事出来ないかなと思い、後書きに『嘘予告』を載せる事にしました。

ただあまりにもくだらない内容です。また適当に書きすぎてるのでクオリティは気にしないで下さい。

真面目に読んでくださってる方は読み飛ばして頂けると幸いです。

嘘予告は予告なく休止したり再開したりする場合があります。あしからず。



 ヘルブスト王国――奏吾がやって来た異世界トリニタの中で人種族が支配する最大の国である。

 世界に四つ存在する大迷宮の一つ『大ハルシャ』を擁するこの国の王都、ヘルブストの東にその街はあった。

 冒険者の街――ハルシャ。

 その名の通りこの街は魔獣が跋扈する魔の森に隣接し『大迷宮』を持つまさに冒険者と呼ばれる者達のための街だった。


 そのハルシャに向けて三台の馬車が走っていた。

 王都を出て一週間。魔の森を横目に沿った街道がちょうど開けた野原までやってくると、小高い丘の向こうにそのハルシャの街並みが見え始める。

 此処までくれば街まで一時間もかからない。

 馬車に乗っていた奴隷商、アクアム・サーストンは一先ずホッと溜息をついた。


 三つの馬車は全てアクアムが経営する、サーストン商会の商隊だった。

 王都ヘルブストからの帰り道。一番危険なのがこの魔の森の端を沿って続く街道である。

 一つ前の街との間には大森林の尖端が挟まっており、それに沿って出来た街道は、少々遠回りになっている所為か馬車でも二日近くかかってしまう。

 魔の森の裾野の付近は比較的弱い魔獣しか出ないとはいえ、その二日間通る者の気が休まるはずも無い。


 魔の森から時折迷い出る魔獣に恐怖し、不安な夜を最低でも一日は過ごさなければならない。

 その為商隊の三つの馬車の内、一つは護衛の冒険者用になっている程だ。

 そして昨晩、時折聞こえる魔獣の鳴き声遠くに聞きながら過ごす不安な夜を過ごしたばかりだった。

 こればかりは百近くこの道を通っているアクアムでも慣れるものではない。

 そして漸く愛おしい本拠地(ホーム)を小さくも視界に捉えたのだ。この分なら日が暮れるまでに街へはつくことができる。

 溜息の一つもつきたくなるところだ。


 アクアムは懐から葉巻を一本取り出し火をつけた。

 どうも今回の旅は憂鬱な気分が付きまとった。

行きの旅もそうであれば、王都で暫く過ごしている間もそうだった。

 帰りも何かあるかと心配ていたが杞憂のようで、やっと緊張を解せそうだ。

結局今回の行商はアクアムの気分を悪くしただけで、誰もケガも死人も出なかっただけ、上々という事かもしれない。

そんな風にアクアムは紫煙を燻らせる。


「まぁ――今はまだいい。商売としては上々だ。ただ“あの噂”が本当ならここから暫くこの国は荒れるかもしれん」


 アクアムがそう煙と共に独り言を空に向かって吐いた時だった。


―― ガルルゥゥウウウウ ――


 それは獣の咆哮だった。

 一瞬にして商隊全体に緊張が走る。


「アクアム様!」


 隣に座っていた若いメイドが鋭い声を上げる。


「馬車を止めろぉお!」


 アクアムが叫ぶと三台の馬車が止まり、同時に一つの馬車から八人の人間が飛び出てきた。

 それぞれが剣や盾、槍に杖などを持った腕自慢の冒険者達だった。


「今の声――まさか――」

「いや、奴が出るとしたら魔の森でももっと奥の筈だぜ」

「でもあの遠吠え大分近かった気がするッス!――」

「来たぁ、後ろよ――!」


 刹那――地響きにた獣の駆ける足音が空気を揺らした。


「来るぞぉ――」


 冒険者達の声と共皆の視線が今来た街道を振り返る。アクアムはメイドに守られながらもその姿を視認した。


「ヘビーベアが――二体!」


 それはあまりに大きい熊の姿をした魔物だった。大きさで言えば三メートル程か、とても保護色に見えない鮮やかな紫の体毛は針のように逆立ち、上顎から二本の犬歯が突き出ている。


「なんでこんな所に――それも二体だと!?」

「サーストンさん、馬車を連れて町まで逃げてください」


 冒険者達のリーダーらしき男がアクアムに向かって叫ぶ。


「皆さんは――」

「オレ達で足止めします、できればギルドに助けを――」


 冒険者の声は最後の方で爆発音でかき消される。

 八人の母権者の内二人いた魔術師が、焔の魔術を二体のヘビーベアに向けて放ったところだった。爆発と共に発射された火球が二匹のヘビーベアに向かって真っすぐと直撃した。


「やったか――」


 衝突した衝撃で粉塵が巻き散るが、すぐさまその中から二頭のヘビーベアが先ほどと同じスピード突進してきていた。


「チッ、時間稼ぎにもならねぇ――」

「サーストンさん、構わず行ってください――そして助けを頼みます」


 冒険者のリーダーは再びアクアムに向かってそう言うと、向かってくるヘビーベアに鋭い視線を向けて剣をかまえた。


「行くぞ、おめぇら――」


 リーダーの声と同時に残りの三人の冒険者がそれぞれに武器を構えて咆哮をあげる。


「うぉおおおおおおお――!」


 アクアムはその声を聞くと、奥歯を噛みしめて町の方へと振り向いて指示を出した。


「行け、最速で街へと向かうんだ!」


 その声を受けて馬車が再び動き出そうとした、その時だった。


 パシュッ、パシュパシュ――と、馬の足元へと矢が刺さる。


「なんだ――?」


 唖然とするアクアム達を前に、いつの間に現れたのか如何にもガラの悪そうな男達が二十人ほど馬車の前に立ち塞がった。

 その全員が武器を商隊に向けつつ下品な笑みを浮かべている。


「盗賊――!? こんな時に――」


 アクアムは額に青筋を立てて盗賊たちに叫ぶ。


「お前たち見て解るだろう、今はお互い面倒を起こしてる場合じゃない――早くお前たちも逃げないと――」


 そのまま凄んで前に出ていこうとするアクアムをメイドが片手で制した。


「何か――変です」


 そこでアクアムも状況のおかしさに気付く。馬車たちの後ろにヘビーベアが来ているのは一目瞭然だ。だというのに盗賊たちは落ち着いた様子で笑みさえ浮かべている。

 そしてあまりにもひどいタイミングの重なり合い。

 まさか――、

 

「ぐわぁああああああ――」


 馬車の後方で悲痛な叫び声が天を裂いた。振り向くとそこにはヘビーベアの腕によって吹っ飛ばされ、爪で引き裂かれ、傷ついていく冒険者達の姿があった。


「サーストンさん罠だ! こいつ等『奴隷の首輪(スレイブネック)』つけてやがる!」


 リーダーの声がアクアムにも届いた。

『奴隷の首輪(スレイブネック)』とはその名の通り奴隷につけるための契約魔道具の一つである。

 通常は奴隷契約をした者の所有権を示し、同時に奴隷の行動に契約によって制限をかけたり戒めたりするための道具である。


「よりにもよって奴隷商のお前さんが、こんな罠にかかるなんて屈辱だろう?」


 その声でアクアムは眉間に皺を寄せた――。


「貴様――ドープスか」


 盗賊団の中に見知った顔を見て全てを理解し怒りに震えた。


「貴様ぁぁああ――」


「そうだ、そう。アンタのその顔が見たかったんだよ――」


 かつての商売敵を目の前に、アクアムは怒りのまま腰の短剣に手をかけようとした。

 しかしそれをメイドが止める。


「おっと、そのメイドには感謝するんだな。こいつ等には変な動きをすればすぐに射殺せと命じてある。変な気を起こせば、後ろの冒険者達よりも先にあの世に行くことになるぞ」


 ドープスはそう言うと高笑いをこだまさせ、弓矢を持った三人の盗賊の矢の先がアクアムに狙いを定めていた。


「貴様、自分が何をしているのか解っているのか?」


「あぁ、勿論――だがアンタが心配する必要は無い。全ての計画が上手くいく頃には『アンタはもう八つ裂きになってるだろうからな――』」


 ドープスがそうアクアムを蔑んだ時だった。

 後方で冒険者達がどよめいた。


「なんだ、新手の魔物か――!」


 それと同時に後方で悲鳴が上がった――しかしそれは人の声ではなく――、


『ギャゥウウウウ――』


 ヘビーベアの叫びであった。アクアムが後方を振り返ると、一体のヘビーベアの胸が大きく切り裂かれてていた。傷からは血が吹き出し――、そうこうしている内にもう一匹の喉笛が“喰いちぎられていた。

 

「なんだ、何が起こってる!?」


 ヘビーベアとの戦いで満身創痍であった冒険者達は、茫然とヘビーベアがその黒い“影”に襲われていく姿を眺めていた。

 そして二体のヘビーベアは大きな地響きと共に地へと伏した。

 慌てたのは盗賊達である。勿論ドープスも――。

 

「なんだ、いったいなにぐぅうあああ」


 ドープスの言葉は途中で遮られた。なぜならその口は突如現れた何者かに手で塞がれていたのだ。

 その光景をアクアム達は茫然と見つめていた。


「今のセリフを言ったのは――貴様だったな――」


 突如としてドープスの目の前に現れたその黒髪の少年は、今現在右手で口を塞いでいるその中年の男を睨み付けて、こう啖呵を切った。


「おい、その台詞はな――テメェみたいな屑が吐いていい台詞じゃねぇんだよ!」


 そしてアクアムは、人が空へ舞う瞬間を目撃したのだった。





 ――そしてアクアムは、服が空へ舞う瞬間を目撃したのだった。

アクアム・サーストンはその光景に驚愕していた。

 突然降って湧いたように、アクアムとドープスの間に現れた少年。

 服を投げ捨てパンツ一つになった、成人したばかりに見えるその幼顔の少年は、妙な啖呵を切ったかと思うと、ドープスに尻を向けて四つん這いになるとドープスに向かって怒気を放ちながらこう叫ぶ。

「よし、八つ裂きにするなら俺にしろっ!!」

「へっ?」

「はぁっ?」

瞬間誰もが凍り付いた。

「なんだ、来ないのか? 八つ裂きすると言ったのはお前だろうがぁああ!」

「えっ、ハイ。確かにそうですけど。なんというか、別にそう言う趣味って訳じゃ……」

「なんだよ、違うのかよ! 嘘ついたのかよ! 嘘予告だからって、本気で嘘ついていいって思ってるの?」

「いや、そう言う訳じゃないですけど……」

「じゃぁ、なんだよ。俺だけいきなり現れて自分の変な性癖見せただけっていいたいのかよ」

「えっと、まぁそういう事に」

「はぁ? お前ふざけてるの? 男だろ? こっちが腹割って、服脱いで本心曝け出してるのに、それに応えようと思ってないってこと?」

「あの確かに腹割れてますし、服脱いで本心どころかなんかいろんなもん曝け出してますけど。自分そんな趣味はありません」

「なんだよ、けっ、使えないな。じゃぁそっちの葉巻のオッサンは?」

「わ、儂もそういう趣味は――」

「なんだよ、クソッ――じゃぁそっちのメイド――」

「結構です――」

「そう言わずに、なぁお姉さん?」

「結構です!!」


まさかの異世界くる前からの性癖(チート)が発覚。果たして少年は八つ裂きにしてもらえるのか?

そしておそらく忘れ去られている冒険者達の運命は如何に?


風雲急を告げる次回『異世界来る前からチート持ち ~ Racclimosa ~』

♯4 『Mの少年』 是非ご覧ください



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ