♯2 授かったチート
最初は連続3話投稿しました。第二話です。よろしくお願いいたします。
誤字脱字、感想等ありましたらお願いいたします。
次回以降は水曜、土曜に一話ずつ更新していきたいと思います>>
尚㋅㏠になにか面白い事出来ないかなと思い、後書きに『嘘予告』を載せる事にしました。
ただあまりにもくだらない内容です。また適当に書きすぎてるのでクオリティは気にしないで下さい。
真面目に読んでくださってる方は読み飛ばして頂けると幸いです。
嘘予告は予告なく休止したり再開したりする場合があります。あしからず。
光が消えた先は開けた野原だった。
陽の光が暖かく、そして風は爽やかだ。
空気も上手い。
「帰りに事故に遭った事を考えると、夜から昼間になってるし――異世界に来たって事になるのか――? とはいえ、太陽は一つだし見た目は牧歌的というかなんというか。これで月が二つも登れば信じようもあるんだけど――異世界と言いつつナントカ牧場じゃぁないよなコレ?」
奏吾は悪態を吐きつつ周りを見回した。
後方に森、そして野原の向こうには街があった。後方には森があり緑が風にあおられて波打っている。
「いかにも中世ヨーロッパ……だよな? テーマパークじゃなきゃ」
奏吾は一度深呼吸をすると右手をグー、パー、と握って実感を確かめる。
格好はアルバイトの帰り――フードのついたパーカーにジーパンという簡素な格好。事故に遭った時そのままだ。
腰のジーパンのポケットにはスマホと財布だけ。
スマホは勿論電波が立っていないし、此処が異世界なら財布の中身は使うことは出来ないだろう。
どうやら現実みたいだなと心の中で独りごちる。
やけに『異世界モノ』を強調した、あの似非医者――もとい自称神様か――の言う通りならこれは高度なヴァーチャルリアリティという訳でも無いらしい。
VRMMOネタじゃないのは――幸運なのか不運なのか。
「まぁ、そんな技術が実際にあれば、今の俺は廃人になっていただろうし――そもそも本当に異世界かどうかは確証がないしな」
それから一度“力”を確かめる。
「やっぱり――、いつもと変わらない」
先ほどと同じように握ったり開いたりしている右手を凝視しながら、奏吾は先ほどまでの診察室での出来事を思い出していた。
あの時、あの自称神様と話している時、奏吾は何度か“力”を発動しようとしていた。
異端の力、普通の人は持たない能力、自分が化物である理由。
しかし“力”はまったく発動しなかった。発動する気配もみせかった。
まるで初めから“あの力”なぞもっていなかったかのように。
十七年生きてきてこんな出来事は初めてだった。
勿論、あの男の言うことが間違いでなければ、あの診察室は神域みたいなところの筈である。
ならば奏吾の“力”が発動しないよう結界か何かが張ってあってもおかしい話では無い。
あの出鱈目であまりにも説明不足な似非医者の言葉を信じようと思うには充分な理由である。
あの医者の性格と笑顔は別として――、
「あ~、もう何を信じていいのか……取りあえず一つずつ確認していくか」
奏吾はそう言うと目の前に落ちていた小石を拾った。
「言語理解はこの世界の人に会ってみないと解らないから――とりあえず“鑑定眼”からだな……」
拾った石を鑑定しようと目を凝らしてみる。
凝らしてみる――凝らして――。
『 石 ―― 何も変哲もない石 』
突然視界にパソコンのウィンドウのようなものが出てきて、そう書かれてあった。
「これじゃまるでRPGだな ――なら……」
奏吾は石を放り投げると、自分自身の掌に観察眼をかけてみる。
『 STATUS
NAME Sogo Kudo
AGE 17 ⇒⇒ 』
「成程、ステータスが見れる……なら……」
とステータスの画面を意識でスクロールしていく。案の定SKILLという項目を発見する。そこを詳しく見ようと意識する。
案の定スキルの一覧が表示された。
「へぇ、魔法も使えるようにもなるのか、これは少しテンション上がるな。それから……あった、これが守護霊だな」
表示されていたのはGuardianの文字だ。
「これがあの似非医者の言っていた守護霊――呼び出す為には」
これは幸福な事を思い浮かべないとダメとか制限ないよななどと思いながら、奏吾が詳細を読み進めると『 守護霊の契約をしますか? OK or Ccancel 』の文字が浮かんでいた。
「本当にゲームの世界じゃぁないよな、ここ」
OK と心の中で呟くと、急に足元が光りだした。
「これは――魔方陣ってやつか!?」
足元に現れた発光した幾何学的な円形の――紋章のような図形。
「――っ、しまった!」
所謂――魔方陣が紫暗に輝く中、奏吾はバランスを崩した。
見ると足元が沈んでいた。地面に出は無く、魔方陣に――。
「クソッ、足が――流砂、いや底なし沼みたいだ」
奏吾はしくじったと感じた。孤立無援で見知らぬ場所へ送り出されたとはいえ、あまりに簡単にあの似非医者の言うことを信じすぎたのかもしれない。
「これ全部罠だとしたら――っ、クワッ!」
みるみる内に奏吾の下半身が埋まっていく。
このままでは不味い――そう思った奏吾は全身の力を抜き――、
次の瞬間、予想外の驚愕がその顔に張り尽く。
「ヤバッ、そうだあの医者、俺の“力”も――」
必死に抜け出そうと“力”を使ったのが仇になった。
これがあの似非医者の罠だとしたら、奏吾の“力”の存在を知っているのだからそれに対する対策を立てていない筈はない。
“力”が魔方陣に干渉されていく。そして魔方陣の足元は一転して真っ暗な闇へと変貌していた。
「う、うわあぁぁあぁぁ――!!」
急転直下の重力に奏吾も抗う術は無く、体は奈落の底へ落ちていく。
頭上には地上の光が一瞬にして小さくなっていった。
「日本にいても、異世界にきても結果は同じ――まぁ“化物”の最期はどれも同じか」
暗闇の中を落ちていく奏吾は消えていく光を見ながらそんな事を思った。
光が欲しかった。暖かい光が。
独りじゃないと――多くの光に囲まれて生きていきたかった。
死にたくなかった。
光の中で――生きていたかった。
でも俺は“化物”――光の中では生きていけない。
今でも聞こえてくる両親の絶叫、彼女の悲鳴――そして。
俺は――“化物” 光の中では――。
『違ウ――、俺ワ――“化物”ナンカジャナイ』
声が聞こえた。
幼い声――。
気づくともう何処にも光は見えない。もう落ちているのかそれとも止まっているのかもわからない。
真っ暗だった。
でも自分の姿はハッキリ見えた。
そして目の前に――、
「ね……猫? でも――」
目の前にいたのは確かに猫だった。それも黒い子猫。
ただ一見してそれが自分の知っている猫では無いことが解った。
紅い瞳に尾が二つに別れている。
「猫又――?」
『闇ノ中ニ光アリ、光ノ中ニワ――』
ニァア――とその猫は哭いた。
奏吾の前に突如として現れた黒猫。彼は云う。『力が欲しいか――』奏吾はその言葉に力強く頷く。
『そうか、欲しいか――。しかしそれならば私の質問に正確に答えるのだ』
「質問?」
『そうだ、では第一問。パラッパラ♪』
「へ? 第一問?」
『どうしてあの時、彼女は力を失くし、私の声が聞えなくなったのでしょう?』
「えっ、えっ? っていうか彼女って誰?」
『 ① 彼女が恋をしたから
② 彼女と彼が喧嘩したから
③ 私が白猫と恋仲になって嫉妬したから
④ 答えは映画を見た人達の心の中にこそある
さぁどれ?』
「いや、さぁどれ? じゃなくてだから彼女って誰? 彼って? っつーか白猫って、最後の答えに関してだけは個人的に納得したくないし、ってかアンタ何者だよ!」
『ふっふっふ、ボクの正体を知りたければ、取りあえずどら焼きを数十個――』
「なんか色々混ざって苛立ってくるけど、もう猫ネタならなんでもありなんですか!」
『体重はりんご三つ分』
「聞いてないから――」
予想外の猫キャラの登場に混乱する奏吾。色々なところからお叱りを受けそうな上に、作者人前でつまらないと思ってしまう嘘予告。
早くも第二回目にしてこのままで大丈夫なのか!?
連載危うい次回『異世界来る前からチート持ち ~ Racclimosa ~』
♯3 『どうしよう嘘予告』 是非ご覧ください。