♯17 襲撃の真相
第十六話です。
更新遅れて申し訳ございません。まさかの嘘予告待ちと言う状況で更新遅れました。PV一万超えた~! やった~! ありがとうございます!!
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次回は月曜に更新したいと思います>>
「この街は大きく分けて四つの勢力が派閥として存在している。一つはギルド長であるディックを中心とする派閥。儂等が属する派閥だ。冒険者ギルドの理念を中心に、人種で差別することなく、全ては実力主義――ギルド派とでも言うのかな」
「この街をよくしようとしてるだけだよ、親父さんは――」
アクアムの言葉にワーカーはそう補足する。
「他に、このハルシャも属するキノック領の領主、キノック伯爵を中心とした派閥。壁を守っている王国兵を統括する騎士を中心とするヘルブスト騎士団の派閥。そしてその全てに無関心な派閥だ。まぁ、彼等は『アーロン・ガラッド』をその中心と考えているようだが、彼はその派閥争い事態にも無関心だからな」
奏吾の脳裏に昨日の彼の鋭い眼光が蘇る。
「ドープスはその中でも、キノック派のお抱えの奴隷商だった。現領主であるトーリフ・キノック伯爵は、祖父の代からこのハルシャとそこから王都へ向かう間に通る、パーベル、リコリスの三つの街の領主だ。彼奴は差別主義な上にルーメン正教の熱心な信者でな、息子を大聖堂のあるノーヴェンにまで修行に行かせている。まぁ、国レベルで言えばエイボン派と呼ばれる、ルーメン正教の派閥が迷宮の利権を得るために送り込んだ貴族だ。
ただこの街でも先ほどのように他に三つの派閥が存在するから、自由に私腹を肥やす事はできん。それが彼奴を苛立たせている理由の一つなんだろうが――」
「つまり、今回の襲撃はドープスを使ってそのキノック派、ましてやそのルーメン正教の派閥が、アクアムさん達を暗殺しようとしていたと――?」
「その側面が無いわけではないだろうが、今回は国レベルの話しでは無いだろう。先程言った騎士の派閥。これがエイボン派の政敵である、スカル派という貴族を主流とする一派がほぼ全権を掌握している。それとウチとで三竦みの状態になっているんだ。エイボン派自体は下手に手を打ってこないだろう。何より儂等を攻撃するという事は、下手をすれば冒険者ギルドを敵に回すという事だ。傍観している無関心のほとんどは冒険者、最悪の場合それさえも敵にまわる事を考えれば、今の膠着状態がどの派閥に対しても都合がいい筈だからな。だから、今回の襲撃はもっと小さい街レベル――いや、キノック個人レベルの話だ」
「キノックの――個人? でもそれじゃあ派閥争いとは関係ないんじゃ……」
「最初はな。事の始まりは半年近く前だ。元々、キノックとドープスの癒着関係には悪い噂があった。しかし、それを言及するには証拠も無い。ただ、彼奴はドープスの奴隷契約の秘術を使って、違法に奴隷を売買していたという噂だけが流れていた。つまり――」
「違法な人身売買」
「その通りだ。犯罪者でもない限り、人を無理やり奴隷にすることはできん。金銭や、相手の納得があって初めて奴隷にする事が出来る。これは奴隷契約の儀式に於いて絶対だ。人間至上主義のこの国でも、獣人達などの亜人は『惰民』と蔑まされる事はあっても『奴隷』にするには奴隷契約が必須。捕まえて勝手に奴隷にする事は国法と冒険者ギルドに禁じられている。
そもそも冒険者ギルドの理念は、三百年前の三代目勇者により『自由』とされているからな。人種、国籍、性別――何に於いてもその生きる権利に於いては自由でなくてはならない。だからこそ奴隷契約をした場合、その主人は奴隷の衣食住を約束し、最低限命や身体を害する事を禁じられている――。とは言っても、迫害され、下手をすれば難癖をつけられて奴隷にされるこの国に、わざわざ亜人が望んでくる事なんてなかなか無いがな」
アクアムはそう言って苦笑した。
「ドープスの奴隷商は、キノックと共に他所から人や亜人を誘拐し無理やり奴隷契約をして商売している――とそんな風に噂されていた。半年前まではだが。
しかし儂等は確信していた。一つにはトーリフ・キノックという奴は好色だったからだ。ドープスの売買記録にも年間でかなりの数の女性がキノックの元へと売られていた。
おそらく捕まえた中で、キノックの御眼鏡に適った哀れな女性が無理やりドープスの元で契約されていたのだろう。
他にキノックは珍しいモノをコレクションするという収集癖がある。これは物だけでなく人もだ。珍しい種族――例えば獣人やエルフなんかもそのコレクションに入っている筈だ。ただ書類上ではあくまでこれらは正式なドープスから買ったという事になっていた。状況はあまりにグレーだが、どうみても黒だった。
しかし証拠が無い。誰も何もできなかった――。しかしそこで彼奴のバカ息子が言ったワガママが、状況を少し動かしてくれた。それが半年前で――そして今回の襲撃の始まりだ」
「バカ息子?」
「彼奴には三人の息子がおる。長男は父親と仲が悪く、なおかつ先ほど言ったスカル派と懇意で、今は王都で騎士として生活している。
次男は大人しいが父親のお気に入りでな、父親と同じく敬謙なルーメン信者で、先ほど言ったようにノーヴェンで修行している。おそらくこやつが次の伯爵だろうと予想されている。
そして最後の三男、ルチーニ・キノックというバカは冒険者でな。よく言えば自由奔放、悪く言うと考えなしのバカ小僧で、兄二人がいて自分は伯爵を継げないからと、冒険者になったのはいいが、親父の笠を着て、我儘し放題出来ると思ってる阿保だ」
「はぁ……」
アクアムの呆れたような口調に、奏吾は溜息交じりに応える。ただ、どうもこの三男が面倒そうにしか思えない、妙な不安がよぎっていた。
「この阿呆が、自分の家のお抱えであったドープスに一つの頼みごとをした。それがきっかけだ。ある人物を自分の奴隷にしたいと――。その相手が、ウチの奴隷だった」
「ウチの――って、アクアムさんの所の奴隷って事ですか?」
「そうだ奴隷になるという事は、誰かの所有物になるという事だ。奴隷商で売れるまではその奴隷は、その者を売っている奴隷商の所有になる。つまりだ、ルチーニはウチからその奴隷を盗み出してくれと頼んだんだ」
「そんな事が出来るんですか?」
「出来たんだろうな、あのドープスには。他の奴隷契約を解除して、新たに契約し直すことが――」
他の奴隷商の秘儀は、自分には解らないとアクアムは言った。
「どうやらルチーニは父親から好色の癖をついだらしくてな。ウチのその奴隷が気に入ったらしい。何度か売ってくれと来たのだが、とある理由で売らなかった。
まぁ、そんな理由が無くてもキノックに名を連ねる所に、ウチの奴隷を売るつもりなんかは一切なかったが、それでも諦めきれなかった」
「それで、その奴隷――おそらく女性を誘拐して、無理やり自分のモノにしようと」
「まぁな、ただその相手ってのが問題だったんだ」
言葉を続けたのはワーカーだった。
「おそらくルチーニが彼女の事を気に入ったのは、ただ見た目が気に入ったからだけじゃない。アイツは好きで冒険者やってるが、実際の実力は正直酷いもんだ。それでも現在アイツの官位制度は大Ⅳ位だ。つまり――」
「つまり、奴隷に戦わせてるって事ですか?」
「そう、アイツは常に安全なところにいて奴隷を危ない目に合わせている。まぁ戦闘奴隷の使い方としては間違ってないんだが。
それでもアイツが大Ⅳ位になるのはディックの親父さんの落ち度だ。大Ⅳ位まではギルド長の独断で官位制度は上げられる。でも、この街の冒険者の数つったら膨大だ。一人一人確かめられてる訳じゃない。ほとんど下から上がってくる書類に、依頼の達成度や、素材の売却数なんかのデータが書いてあって、それにポンポン判子を押すのが親父さんの仕事だな。その所為でアイツも大Ⅳ位までなっちまった。まぁ、流石にギルド長の推薦が必要な大Ⅲ位は無理だったがな」
「という事は、その女性は腕も確かだったと」
「そういう事、正直オレでも敵わないだろう、冒険者の位階制度としては大Ⅱ位。初めて会った時にはもうアクアムさんの所で奴隷になっていたから、なんで奴隷になったのかは知らないけど、正直この街で五指には入るだろうな」
「五指――!」
先日のリックの話では、アーロンを頂点に住人の有名な冒険者がこの街にはいるらしかった。ワーカーもその内の一人だ。しかしそのワーカーも十人の中では下の方らしい。なのにその奴隷は五指に入るという。その強さは折り紙付きだろう。
「ドープスはあらゆる作戦を立てて、彼女を捕えようとしたが結局失敗に終わり、返り討ちに遭って現行犯で捕獲された。それが半年前だ」
「なんとまぁ――」
思わず奏吾は呟いてしまった。無謀と言うか無茶と言うか――。そんな事を頼むルチーニもルチーニだが、それをなんとかしようとするドープスもドープスである。
だが、もしルチーニ脅されてドープスが遣らざるおえなかったというなら、むしろ同情の余地があったのかもしれない。
「これを奇貨とみた儂等は、ドープスから芋づる式にキノックの罪も暴けるのではと思った。だがルチーニは勿論、父親のトーリフも知らぬ存じぬでな。ドープスから奴隷を買っていたのは事実だが、正式な手続きの上で購入したもので、その流通ルートなどは知らんとの賜った。そしてそうこうしている内に、監禁中だった筈のドープスが脱走した」
「それがドープスの賞金首になった理由ですか?」
「そうだ、おそらくキノックの手によるものだろうが証拠はない。というか揉み消された。そうしてドープスは冒険者ギルドの賞金首となり、行方を眩ませておそらくキノックと共に儂等への復讐の機会を伺っていたのだろう。元々商売敵というのもあってドープスは儂の事を妬んで負ったからな」
まぁ仕方のない事だろうなと奏吾は思っていた。科学捜査が発展した日本だったらそんな杜撰事件はあっという間に解決していただろう。中身が大人の小学生探偵も、祖父が名探偵な高校生探偵もけしてお呼びではない。
しかし魔法があるとはいえ、文化基準が中世のこの世界では権力こそがモノを言う。
それこそ確定的な証拠でもない限り、事件のあらましは掴めないだろう。
ましてや相手は貴族だ。
「今回、君のお陰でドープスは捕まった。だが、そのドープスとその仲間の盗賊全員は昨日の時点で処刑されている。キノック伯爵の命によってな」
「えっ!!」
「逃亡中の犯罪者だ。それも奴隷商の掟を破り、恣意的奴隷の首輪を使った。故に極刑だそうだ。それにしても早すぎるが……」
「えっ、それは未遂だったんじゃ」
「明らかになっているのはな。キノックによって隠されている分は事件にもなっていない。問題は一昨日のヘビーベアだ」
そこで奏吾は昨日のヘビーベアにも、奴隷の首輪がついていた事を思いだした。
「魔物のテイムについても奴隷商の仕事だ。本来ドープスのやっていたフール商会は、そちらに強い商会だった。おそらくその過程で、人を無理やり奴隷にする秘儀ができたんだろうが、今回の事件で奴は個人的に大Ⅲ位もの魔物に首輪をつけて、なおかつ人を襲わせた。それも逃亡中に――おそらくキノックでなくても極刑だったろう」
「つまり証拠隠滅の為に、キノックの命令でドープスは殺されたと?」
「魔物に首輪をつける事は相当に難しい。そもそも奴隷契約には本心がどうであれ相手の承諾が必要だからな。魔物から承諾を得ることなんてできん。だから契約としてどうしても無理やりな力押しになってしまう。
だからこそ低ランクの魔物でないと奴隷の首輪は通用しないし、してはいけないと言われている。高ランクになればなんとか首輪をつけられても、コントロールできず、暴れる可能性が高いからな。事実、魔物のテイムで有名だったドープスも大Ⅴ位までの魔物を完全にテイムできるという事で有名だった。あの時のヘビーベアはきっと簡単な制御しか出来なかったんだろうが、儂達を襲わせるには充分だと思ったんだろう」
「ドープスは高ランクの魔物の制御が難しい事は良く知っている。それでも強行したのはおそらくキノックの命令だったからだろう。だからこそそれがバレる前にドープスを消したんだ。口を塞ぐために――」
ワーカーはそう言いながら目は怒りに燃えていた。
「以上が一昨日の真相だ。結局キノックに繋がる証拠はまた無くなってしまったが、ソーゴ君のお陰で儂等は生きている。今回の失敗で彼奴もそう簡単に儂等には手を出してこないだろう。流石に半年間で二度も失敗していれば、誰でも怪しむだろうからな。問題は、儂等には――という事だ――」
奏吾はアクアムが何を言いたいのか解った気がした。
「つまり、俺が狙われる可能性があるって事ですね――」
奏吾の言葉にワーカーは低く唸る。
「そうだ。君は知らなかったとはいえ儂等を助けてくれた。いや助けてしまった。キノック達には君が儂等の派閥に属していると思っただろう。そして儂等の襲撃からこの街の勢力図を変えようとしていた事はドープスが言っていたことから予測できる。しかし襲撃が失敗に終わったことでその計画も巧くいかない筈だ。君への憎しみは計り知れないだろう。君は知らなかったこととはいえ、この街の派閥争いに巻き込まれてしまった」
勇者召喚に続いて、派閥争いにまで巻き込まれる。奏吾は自分自身の悪運にため息の出る思いだった。とは言え、
『あぁ、勿論――だがアンタが心配する必要は無い。全ての計画が上手くいく頃には『アンタはもう八つ裂きになってるだろうからな――』』
そう言って嗤ったドープスの事を奏吾は今でも覚えていた。あの時はその台詞についてただ怒りを覚えただけだったが、きっとハッタリでは無かったのだろう。
「今、この街でのキノックへの風当たりは強い。しばらくは大人しくしているだろうが、君へは何かしてくる事は充分に考えられる。命の危険もあるかもしれない。何より、一昨日の所為で君は他の派閥からもウチの派閥へ属していると見られているだろう。一昨日は判断するための情報も、選択するための時間もなかった。だから……」
「だから、自分の首が礼になるって言ったんですね? もしもの場合、アクアムさんの首を持ってキノックに取り入り助命を願うために」
「ソーゴ……」
「いいんだ、ワーカー。本当に君は頭がいい。まさにその通りだ。それに自分で言うのもおこがましいが、儂等の派閥で儂はそれなりの地位にある。儂の命を預かっているというだけでも、騎士派の連中にもいい牽制になるだろう。
君の希望を予想するなら、そういう派閥争いに巻き込まれたくないと無関心派でいることだろうか。その場合キノックから逃れるための言い訳として儂の首は有効だろう。『この通り、ギルド派とは関係ない』と言えるだろうからな」
「ワーカーさん、それは駄目だ。絶対に――それならオレが!」
「発覚すれば問題になる。冒険者と言えど、無暗に人を殺すのは犯罪だ。しかし儂等、惰民となれば――」
「あの……シリアスな雰囲気の所申し訳ないんですけど、そんな事しませんよ」
奏吾がそう言うと、眉間に皺を寄せていた二人が目を丸くしていた。
「しかし、命を狙われるかもしれないんだぞ」
「まぁ、そうですけど。正直派閥争いとか面倒ですし、どこかの派閥に入るとかは考えてません。敢えて言うなら先程の『無関心派』になるんでしょうけど、この街で冒険者として生きようとしてるのに、そんな無関心でいるってのも変ですしね。
でも、俺はアクアムさんもワーカーさんの事も信用しています。それは一昨日初めて会って、俺を助けてくれてそう思えたし、あの時、皆さんを助けたことを後悔もしていません。むしろ今は、あの時助けられて良かったと思います。
もし助けられなかったら、二人にも、サイドBのみんなにも、ルルスさん、リックさん達にも会えなかったでしょうから。
だから、俺はアクアムさんやワーカーさん達の味方です。別にギルド派とか言って率先して派閥争いで動こうなんて、思ってません。
でも二人が困ってる時は助けたいし、俺が困ってる時には助けてもらいたい――」
それはルルスに教えてもらった事だった。
「それじゃ駄目でしょうか? 命を狙われているというなら、それも仕方ない事です。冒険者なんですから、死とはいつも隣り合わせ、それで失敗したら自分の責任。殺される気は無いですけどね。むしろヘビーベア二体相手にした俺に、キノックがどうちょっかいを出してくるのか楽しみですよ」
アクアムの話しを聞いていて、正直奏吾はあまりキノックという男を大物だとは思えなかった。
ドープスは大層に言っていたが、キノックの計画とやらはあのヘビーベアに首輪をつけたのをアクアムのした事として擦り付け、それが暴走したことによって商隊が壊滅した。という筋書きだったのではないかと奏吾は考えている。
そしてアクアムが死んだところで、半年前の事件も全てアクアムに押し付け、自分は返り咲き、代表を失くしたサーストン商会を吸収。件の奴隷も手に入れ、より大きくなったドープスの店を使ってキノックは私服を肥やし、同時に擦り付けられたアクアムの罪で、ギルド派を追い込む――とそんな感じ程度の計画であろうと奏吾は見ていた。
普通に考えれば上手くいかない(実際巧くいかなかったが)計画だが、領主であるキノックがいれば無理に通せる計画ではある。
とても頭がいいとは思えないんだよな――と奏吾は心の中で思っていた。
その程度なら、充分に相手が出来るとも。
すると突然アクアムが大声を出して笑いだした。
その様子にワーカーも驚いている。
「……ハハッハ、ハハ。すまん、まさかそう返してくるとは思わなかった。失敗したら自己責任か――。やはり君は頭がいい。きっと偉大な冒険者になるだろう」
アクアムの顔は晴れやかだった。初めて見るアクアムの顔。いつもどこか緊張した感じで張りつめている印象だったアクアムの、本当の笑顔を見た気がした。
「さて、なら儂の首じゃあ礼にはならんな。他の礼を考えなければならん」
「いや、ですから御礼はいらないですって。ヘビーベアの討伐料もあってお金も充分ですし……」
奏吾がそうやって狼狽えはじめると、ワーカーもいつの間にか笑顔になっていた。
「なら家はどうだ? アクアムさんなら用意できるだろうし、一昨日オレの家に来た時に羨ましがってたじゃないか」
「一人であんな大きな家に住んでどうするんですか! それに昨日から寮に住み始めたばっかりなんですよ俺!」
奏吾とワーカーがそんな風に言い合っていると、アクアムは腕を組んで悩んでいる様に低く唸る。
奏吾は何故かそれがとてもわざとらしく思えた。
「ウーム。金もダメ、家もダメ……となるとコレならどうだろう?」
アクアムはそう言うと、手を二度ほど叩く。奏吾とワーカーが様子を伺っていると、応接室の扉からノックが聞えた。
「入れ」
アクアムのその一言で入ってきたのは、飛び切りの美人だった。
明るいブラウンのショートカット。色は白く、目は少し幼いが奏吾よりも年上であろう妙な色香を漂わせている。
首には奴隷の首輪。ただし今まで見た事のあるものと少し違い、その中心には紅というにはピンクに近い大きな宝石が装飾されている。そして何よりその下の胸にある大きな塊は、スレンダーな体躯のバランスを崩すことなく、重力に逆らって揺れていた。
そんな――そんなメイドがそこに立っていた。
「彼女はアーニャ、アーニャ・ネイキッド。彼女が儂からの謝礼だ」
奏吾はそのアクアムの言葉に開いた口が塞がらなかった。
奴隷商アクアムから謝礼だと渡されたのは、美人なお姉さんメイドのアーニャだった。
そのあまりの美貌に心奪われる奏吾。
アーニャは静かに笑うと、奏吾に自分の頼みを聞いてほしいと願った。
突然の出来事に戸惑う奏吾。そしてワーカーは彼女に警戒を示し、話しを聞くなと奏吾に告げる。だがアクアムもまた、アーニャの願いを聞いてほしいと頼み込む。
奏吾が出した決断は一つだった。
『例え、美人局だろうと、美人の願いは叶えてみせる!』
変な男気を出した奏吾は……三十分後自分の答えを後悔することになる。
フリルやリボンのたくさんついたピンク色のドレス。
桃色の髪をリボンで左右に二つ結ったカツラ。
そしてどこかで見たような――弓。
奏吾は思った、あのお願いを聞かなければ良かったと。
『私と契約して魔法少〇になってよ!』と――。
契約してしまった奏吾の行方は、アーニャとアクアムが企む『奏吾ほ〇ほ〇化計画』とは、
そして希望も魔法もありえるのか、
まさかの新連載『異世界来る前から妹持ち ~ I Love little sister ~』
♯18 『イニシエーション・らぶ♪』 是非ご覧くださいね☆
「ちょっと、まてぇええええええ! 前回大人しいと思ったらなにやってくれっ……えっ、終わり? 作者の集中力切れた? ちょ、ちょっとまてぇええええええ!」
『てへっ♪』