♭1 幕間~ある兄弟の会話~
「これはこれは、また久しぶりのお客さんだ。どうです調子の方は?」
「貴様に心配されることなど何もない――」
「それはまた、釣れないお言葉ですね兄さん――、せっかく心配しているというのに」
「貴様に兄さんと呼ばれる筋合いも無い。そう言う貴様は如何なのだ? 吾輩のレガリアの準備が出来てからというもの、少しばかりの時が流れたが――」
「またまたヨークスを……噂を聞きつけたからいらっしゃたのでしょう? ストゥルティのレガリアが準備が出来たと」
「……」
「遂に此方もレガリアを招く事が出来ました。まぁもう少々準備にテンプスはかかるでしょうが、それでも一年もすればルードスは始められると思いますよ」
「……」
「何かご不満でも――?」
「貴様はこのルードスを終わらせる気はあるのか?」
「勿論ですよ、都合これで四度目ですからね。そろそろパトリアに至るポルタを開くための、クラヴィスを持ちしレガリアが出てほしいと切に願っていますよ」
「本当にそうか?」
「そういう兄さんはどうなんです? 正直、レガリアが決まってからクラヴィスが目覚めた気配は無いのですが?」
「そう簡単にクラヴィスが覚醒するのであれば、今まで三度も貴様のルードスに付き合ってなどいない」
「それはそうですね。でもどうなんです? ルードスの勝敗はそれぞれ一勝一敗一分け――、あくまで勝敗は。しかし本当の意味での勝利を、私達は一度として手にしていない」
「当たり前だ。真の意味での勝利を手に入れたのなら、吾等ケントゥリアの運命は決まり、ルードスなどする必要など無いのだから」
「フフ……どうも兄さんは、ルードスを楽しんでいないようですねぇ。それ程に前回の敗北が悔しかったのですか?」
「ルードスはルードスだ。クラヴィスが目覚めないルードスなどに、興味など無い。楽しむ必要は無いが――一つ忠告しておこう」
「ほぉ、何をです?」
「此度は前回とは一味違う――」
「フフ……フハハハハハ! 兄さんがそんな自信を持って言うなんて、いいでしょう。なら私も一つだけ。おそらく今度のレガリアは、今までで一番クラヴィスに近いでしょう」
「なに? クラヴィスの製法が解ったとでもいうのか?」
「いえいえ、ただ此度のレガリアを招いてから、メンシスの動きがありましてね」
「成程――ならば此方もそうだ。ジョクラトルのレガリアを定めた時、メンシスに動きがあった」
「――! それが兄さんの自信の理由ですか? それだけでは無いように思うのですが」
「それ以上の情報交換は互いの為にならん。だろう?」
「それも、そうですね。しかしお互いのレガリアが決まった時に、メンシスの妙な動き――」
「我々がクラヴィスに近づいている証拠と見ていいだろうな。ただそうなるとレモラの妨害が何かあるかもしれん」
「そうですね。しかしレモラが動くでしょうか? 彼等の周りにはペクスが、そして私の側とは限らないですがストゥルティもいます。あの引き籠り達に何が出来ると――」
「油断は禁物だ。ルードスは何が起こるか解らん。最初のルードスとてそうであったろう?」
「――、そうですね。フフフ、これでデアも暫くは面白くなりそうです」
「やはり、貴様がルードスを終わらせようとしている気がせん」
「そんな事はありませんよ。ただそれでも我等悠久の時を在る者達にとって、退屈程敵わないものもありませんから」
「違いない――。ならばクラヴィスを手に入れ、パトリアを解放し――」
「デウスエクスマキナを手に入れ、トリニタを一つにする。真の意味で――」
――勝利するのは、自分だ。
兄弟はそう言って互いに微笑む。
「ルードスの開始は、此方のレガリアが準備できる一年後」
「それまで、今しばらく待とう。吾がジョクラトルの踊る様でも見物してな」
「楽しみにしておりますよ、兄さん――」
兄が消えると、弟は静かに笑う。
「兄さんは変わらない――。少し情報を流しただけで、ほいほいそちら側の情報も流してくれる。だから、駄目なんですよ。貴方にはアイテールの王には相応しくないんです。
とはいえ、ジョクラトル側のレガリア決定の際にもメンシスの動きがあったのは、正直予想外でした。いったい、アルテミスがあの箱庭の中でいったい何を企んでいるのか……本当に今回のルードスは、面白くなりそうですね――ならば」
大いに楽しませてもらいましょう――と、ルーメンは静かに微笑んだ。
「さてさて、お兄ちゃんの過去も少しづつ明らかになって来て。そして謎の兄弟の会話……ふむぅ……伏線がだいぶ増えてきましたねぇ……これはいつか私の存在も本編に……」
「いや、出ないよ。俺に妹なんていないし。っていうか前回だけの特別キャラじゃなかったの君?」
「なに、言ってるんですかお兄ちゃん。あなたの妹はここにこうしていますよ!! なにせ嘘予告です。どこからが嘘で、どこまでが嘘……なんて読者が解る訳ないじゃないですか。勿論、作者も☆」
「いや、作者は解っておこうよ。というか、なんかお前が来てから嘘予告のテイスト変わってない? なんかどこかの『~物語』的なアニメの予告みたいな掛け合いになってきたんだけど……」
「じゃぁ、予告編クイズでもします?」
「しないよ。しないから。場合によっては怒られるから!!」
「予告編クイズ~!!」
「だからやめろって!!」
「お兄ちゃんは、いつになったら実は自分に妹がいる事に気付くのでしょうか?」
「だから嘘だろ……もうそのやりとりはやったから……」
「……」
「えっ、なに……なんで急に黙るの!? なんで?」
「お兄ちゃん、これは嘘予告ですよ。言ったじゃないですか、嘘の塊だって」
「とはいえ、作者もそんな伏線残したか調べなおしてたじゃん!!」
「お兄ちゃん、バカなんですか? ああ阿保なんですね。根本的な事を度忘れしたダメダメ主人公なんですね」
「言い方なんかムカつくな……なんだよ根本的な事って!?」
「結局、この嘘予告書いてるのも作者なんですよ。それが書いているもので急に在りもしない伏線張ってたって自分で書いて、それを自分で読んで慌てて『そんな伏線張ってたっけ!?』って調べる……なんて作者いると思います。そこまで行くと、もうその作者、終わってますよ」
「……たしかに根本だけど、それいったらお終いじゃない? もう色々お終いじゃない?」
「という訳で、私という妹の存在は実在するのか、しないのか……名前とキャラは決まるのかどうなのか!?」
「それ、本当に募集してないよね!? 活動報告とかにも書いてないからね!?」
「私の存在の有無の伏線はなんと五話先と六話先、『第二十話』と『第二十一話』に!!」
「次回ですらない!! って、本当に俺に妹いるの!? どこまで嘘なの!?」
「という訳で、謎展開の次回『異世界来る前からチート持ち ~ Racclimosa ~』
♯16 『派閥争い』 是非ご覧ください。ちなみに妹は実在しても、本編にはまったく出ません!!」
「それは本当……でいいんだよね?」