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新作予定※タイトル不定

作者: 小松菜大佐

どうも、僕です。

新作最有力候補です

ない。

 あるべき何かが欠けている。嫌な違和感だ。思い当たる節を探すものの、何も分からない。答えに繋がるとっかかりさえもない。

 もしかしたら、逆に何も思い出せないことこそが違和感の正体なのかもしれない。そう思ってしまうほど、その何かは綺麗に抜け落ちた。そして確実に抜け落ちていると理解できる程、その何かは大きかったのだろう。そんなことを思っていた。

 ゆっくりと意識が浮上する。

「……」

瞳を上げると、まっさらな空が見えた。小さな雲がぽつりぽつりと散在していて、空の澄んだ蒼をさらに際立たせている。

 次に近くしたのは、鼻をつくみどりの匂いだった。そこで手に触れている細かな、硬い感触に気がつく。それぞれが紐くらいの太さだった。引っ張ると軽い音がして簡単にちぎれる。それと同時にさらに強く緑の匂いがした。手を目の前に。なんてことのない只の草だ。つまり今俺は、草原に寝転がっているのか。

 これ以上寝ている意味もないだろうから、俺はひとまず体を起こす。目の前に広がっている景色は予想していたものとほぼ一致していて、だからこそというべきだろう、俺は驚いた。

 空と、草原があった。そして、それしかなかった。

 なんだこれは。頭にふと、小さな頃に見たアニメの残像がよぎった。やけに紐が長いブランコに乗って揺れるというより振り回されるシーンが印象的な、自然豊かな山に住む女の子の話だ……った気がする。失った物を思い出せない今の俺に確かな物はないから、仮定するしかないのだが。

 まあその中に出てきた、どこまでも広がる草原が、人がいる形跡の少ない草地が、今見ている景色と重なったのだ。しかしそれは、周りを険しい山に囲まれた結果人が少ないのであって、それが今俺が見ている景色とのズレであった。周りは起伏という概念を忘れそうになるくらい平坦で、山はおろか丘さえ見当たらない。草が一面に広がる地平線に囲まれるなど初めての経験であった。

 頭の中に言葉がめぐる。夢、仮想空間、幻覚、バーチャルリアリティ。今この状況を明確に描写できる単語はなんだ? 思考があちこちに錯綜して、脳が焼けてしまいそうだ。

 そんな俺は、緑の中で異彩を放つ花を発見する。

 時折吹く風に揺られる、背の低い黄色い花。地を這うように広がる葉。その近くには誰もが見たことのある綿毛を付けた草があった。

 軽い音がして、地面に張っていた根ごとごっそり抜けた。

 ……ただのタンポポだよな。

 当たり前な、そうあって然るべきな、当然なことを思いながらそれを見つめていると、突然感染するようにして周りの雑草がタンポポに生え変わり始めた。

 白髪を抜くと増えると言うけれど、それはあくまで迷信のはず。しかしこのタンポポは殊勝にも、根拠も根幹もない、事実無根な仮説に従おうというらしい。俺が驚く間にも、みるみる黄色が増えていき、緑と黄の勢力図が塗り替えられていく。まさにペンキに塗られていくように、加速度的なスピードで面積が増えていき、そんなことを考えている間にも広がって、もう目の前はすっかり黄色一色だった。疑うべくもなく、自分の死角も黄色に染め上げられていることだろう。

 まさかこんな歳になって、少女趣味極まれる夢を見ることになるとは。少女趣味とは、少女が持つからそう呼称されているのであって、だからこんなおっさんの俺が、いや子供の僕が、いや、あれ?

「俺、いや僕? は、何歳なんだ?」

幼少の頃の記憶はあった、だが、俺、いや僕、そんな何かの記憶は、一生をたどっていくにつれてあやふやになっていた。小学校のとある一点からはさっぱりだ。

 もしかして自分から抜け落ちた大切な何かっていうのは、記憶?


「大正解だよ。君には大事な大事な、命に代えられるほど重大な記憶がないんだ」


「うわっ!?」

俺の目の前には、いつの間にか光の玉のようなものが浮いていた。俺の反応に満足したのか、いたずらに成功した子供のように、驚きで身をのけぞらせた僕の鼻先をかすめるように飛び回って、再び目の前に戻ってきた。

「あはははっ。久しぶりに成功したっ。久しぶりだよ、僕を見てびっくりした人を見るのはさ」

「お、おい、いきなりなんだ? それにお前は誰、いやむしろ何だと問うべきか? 後ここはどこだ。何故俺はこんな所にいるんだ?」

「ちょっと待ってよ。そんな餓鬼みたいに次から次から聞かないで。君はもう、良識を持った大人じゃないか」

「あ、あぁ、すまない。ちょっと今混乱していて……」

そう言って謝る僕を見て、また光の玉が動き回る。より激しく、笑い転げるように、俺の視界にのたうつ残像を残した。

「あはははっ。あはははははっ。君は本当に面白いね。君はまだ、ただの子供だよ」

そう言って、玉はゆっくりと、わざと軌跡を残すように目の前を横切っていった。それはどういう仕組みか分からないけれど、軌跡の中に若いというより子供っぽい顔が大きく映し出される。これが俺の、いや僕の、今の姿ということか。まあ、まだここが夢の中である可能性が残っているから、この顔もただのイメージで、実物とは大きく異なる部分がある場合がございますかもしれないが。

「って、騙したのか!?」

「ごめんね、君の反応が本当に面白いからさ。何も思い出せない君に代わって、君の身の上を説明すると、君の死亡時刻は星暦250年2の15、14時01分45秒、王政でもなかったから身分はただの高校生――――いや、君が生きていた頃には高等学徒兵に変わっていたのだったかな?

 いやはや、どうして君たち人間というものは、そうもたやすく機構やルールを変えることができるのだろう? 僕からしてみれば安定するまでに何らかの異変が起きる公算があまりに高すぎる。まあ人間という生物の寿命が短く、先行きが常に明るくないと不安になるのだろうけれど……しかし今それは関係ないか。とりあえず、今は一つずつ君の疑問に答えていこうか」

光が再び自分の目の前を横切った。ふわふわと不規則な軌道を描いて楽しそうに動き回っている。なんだか少し羨ましい。

「いきなりなんだ、という疑問に対する応えだけれど、それは後回しにしよう。僕が君に会いに来た理由がその応えそのものだからね。後々、勝手に説明することになると思うし……次の問いの、僕が何者かということに答えようか」

「あ、あぁ……お前はどこからどう見ても人間じゃあないからな。しかし流暢に日本語を話しているし、加えてまず言葉を発する口が見受けられない」

「うーん、自分のことなんだけど、説明しようとすると難しいね。言うなれば……思念。そう、思念だね。今僕たちがいるこの世界を当地するご主人が生んだ、ただの思念体さ。この世界自体が凄くあやふやで、世界を構成する性質や、概念や、法則が定まっていないから、君たちの世界ではありえないような現象が起こる。その権化がこの僕ってわけだ」

「う、うーん……? ま、まあ要するに、俺の知ってる物理法則やら、質量保存やら、それらを全て無視した存在だってことか?」

「まあ、それで大体合っているかな? まあ、そこまで深く考えなくても、僕に興味を持つ必要はないよ。僕と会うことは、今この時間を除いて、過去にも、未来にも、どの世界であっても、どの時間軸であっても、もうないからね。安心して、君の失った記憶と共に僕も忘れるといいよ」

「む……納得は、いかないけど。でも問い詰めても意味はないよな?」

「うん。タイムリミットもあるし、これ以上僕について語ることはないよ。というか、さっきも言った通り、僕も僕のことをあまり知らないからね。

 ……さて、次に答えるのは、ここがどこかということかな? それはさっき言ってたように、ここはご主人様が創り出した、ありとあらゆることが崩れ、捻れ、歪んだ世界さ。あははっ、あははははっ。だから僕は空を飛べるし、タンポポは急成長して尚何の影響も受けずに綺麗に咲くんだ」

そう言って、光はまた飛んだ。そこには、俺が覚えている限りの生活の中で学んできた法則や、常識がまるで存在していない。

「さあ、それでは本題に入ろうか。君がここにいる理由。そして君が記憶を失った理由を、これから話すとしよう」

「……」

僕は思わず唾を飲んだ。

 ガラリと世界が入れ替わる。緑は全て消え去り、それどころか重力、引力、全ての法則が消えた。地面はいつの間にか頭上にあった。しかし入れ替わった地面が抱えていたはずのタンポポはその場に残っていて、そのまま飛び散るように眼下に消えた。


「君がここに来た理由は他でもない。君には一つのゲームに参加してもらう。文字通り命運を掛けた、強き若者達の、殺し合いにね」


さて、ここまで上げてきた3つの作品。


このどれかで次の小説を書こうと思います。


皆さんのリクエストがあれば変更しますが、ない場合はこれになります。


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