これまでのあらすじ
(こちらの話は『俺は神様』、または4+1thrones転生の騎士と抱擁の羽根(ハッピーエンド第一部)の続編となっています。初見の方にごめんなさい……。)
父なる王竜と慕われる一人の雄竜が統べる竜の国チャロアイト。時は三代目王竜エイブラハムの時代。エイブラハムとその妻フェリシアには、五人の嫡子が産まれた。
しっかりしているが感情に左右されやすい長男ロート、冷静沈着な切れ者次男ブラウ、平和を愛する聡い三男ヴェルデアスル、父を慕うしとやかな長女スミュルナ、そして、その無垢な優しさを守るべくエイブラハムによって王族の責務から隔離されて育てられた次女アマリィジュ。双子であったロートとブラウの政権争いはなく、次期王位継承者はロートに殆ど確定。同大陸にある人間の国であるカルト王国・インジェリット王国両国とも、表立った衝突はなし。少しの不穏な空気はあれども、平和に時は進む筈だった。
しかし、不穏な空気とアマリィジュの無垢が事件を起こす。従者を持たぬ彼女が自ら選び、好んでつけた人間の従者カヌエの力不足により、アマリィジュが誘拐される。激昂したロートとその弟妹は手勢を連れ、カヌエの報告通りの誘拐者の拠点に向かった。そこには人間の国の者、アマリィジュがおり、彼らによりカヌエの素性が明かされる。
竜に匹敵する強さを持つカヌエ。彼は、愛する幼馴染を蘇生する秘薬を求める力を得るため、竜の魔力から製造される麻薬によって肉体を強化した人間であった。しかし同志ヨハンにより蘇生の不可能を知らされたカヌエが選んだのはアマリィジュ。彼の寝返りによりロート一行はアマリィジュは救われるが、カヌエは致命傷を得、相手は人間の国の本隊でないことに気付く。
彼らの狙いは、王都にいる最高権力者……父なる王竜エイブラハム。ロート一行はマーシャ将軍にその場を任せると、飛竜に乗って急いで王都に向かう。エイブラハムの妹として生を受け、王位を継ぐ意志はないことの証明に王族であることを捨てたマーシャは、エイブラハム襲撃の犯人の察しがついていた。最近カルト王国に現れたとかいう自称守護神のマシューという男。その名は、エイブラハムとマーシャの弟であり、王族のしきたりに従ってエイブラハムによって王国を追放された弟の名、マシューと一致していたのだった。