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長すぎるプロローグをあげよう

どうも、知ってる方はお久しぶりです。すんごい久しぶりにあちらの小説の続き書いたら文章がひどいことになったので、前にオリジナルのドラクエでやろうとか考えてたネタを、完全オリジナルにして練習してみました。

いやぁ、思った以上に長くて、読みにくい文章になった。


あまりにも読みにくいので、行間をすこし修正しました。

 先を見渡せばまるで地平線が見えるかの様な程の広大な空間。数十メートルおきにそびえ立つ、巨大で醜悪な造形をした柱―無機質な光沢なのに、生き物の内蔵をより集めてつくったかの様な、それでいて全く似ても似つかない筈なのに、何故か苦痛にもがくヒトを彷彿させてしまうという分けも分からぬ恐怖を訴えかける―が、そこが人工的に創られた建造物の中だということをかろうじて教えてくれる。そのおぞましき造形の柱の所々にこの広大な空間をかろうじて映し出すように燭台が置かれており、その薄暗ささが、また先の見えぬ恐怖を無意識のうちにかもしだすかのようであった。上を見上げてみても、そこに天井が有るかすら怪しく思ってしまう。

 人を潜在的に不快にし恐怖させることを目的として建てられたといっても過言ではない、まるで邪教の神殿とも言われそうなそこは、まさしく邪教の神殿であった。


 否――正しくは違う。


 しかし、それとほぼ同意義と言っても良い。そこは間違いなく、ヒトを排他すべき目的で創られ、ヒトに取っては正に悪夢の様な存在の為に存在するのだから。ただ、違う場所と言えば、神をたたえる場所ではないという所ぐらいであった。

 

 まるで何もかもを飲込み込んでしまいそうなおぞましきながらもどこか神秘的な雰囲気をかもしだす空間は、その負の感情を刺激する空気を吹き飛ばす様な激しい轟音を何度も響かせていた。


「オォォォォォォォォォッ!!」


 薄暗い燭台の灯りの中、甲高い音共に火花が走る。それに伴って聞こえてくるのは、まだ年若い男の力強い雄叫びである。

 男――否、険しく荒々しい形相を顔に浮かべているが、そのどこか幼さの残る顔つきから青年と呼ぶに相応しいか――改め、青年は、美しい金の縁取りをした深い青色の甲冑を全身に纏い、その手にもった、これまた美しくも神々しい輝きを持つ黄金の剣をその全身を使って何度も眼前に向かい振り回す。一瞬のうちに数度も行われるその一振り一振りが正に渾身の一撃。一流の武芸者が一生かけても尚届かぬ極技であった。

 しかし、その剣の極技は相手に与える必殺のそれとして使われるのではなく、己が身を守る為のただの打ち払いの手段として振るわれていた。

 

「∀Oo■■■■■■■■■■■o!!」


 青年の雄叫びも霞んでしまいそうな轟音にて怪音。それは、聞く物の精神を逆撫で、弱い物であれば心を犯される猛毒。

 とても生きているものが出せぬであろうその声の主は、まさしく異形だった。


 ”ケンタウロス”と言う魔物がいる。人の上半身に胴体が馬という合成生物の様な見た目の魔物である。

 

 あえて、近しい物を言えばその異形の主の姿は”ケンタウロス”に似ているのかもしれない。その上半身は一見人のシルエットを取っている様に見えるが、間接が多く妙に長い腕が通常の位置に加え背中と肋骨の下部に当たる位置から生えており、顔に位置する所には巨大な目玉とそれに附属する様に存在する多数の小さな目玉がギョロギョロとせわしなく蠢いている。首から胸元まで縦に裂けた巨大な口がその不気味な口内を覗かせて、下半身は上半身の何倍も膨れ上がりムカデの様に多数の足が不揃いに生えてその身を支えている。そしてそのどちらも見るに絶えない肉の塊が常に蠢き合って構成されていた。


 その異形、身の丈は青年の数倍以上。この広大すぎる神殿はその異形の尺度に沿って造られたと考えてしまう程であった。

 その巨体から振るわれる異形の腕はその質量と硬度、速さ、また高低差からとっても人間を死に至らしめるのに有に数百回以上のお釣りが来るそれを、異形は青年に向けて振り続ける。


 その数既に60を超えたか。


 青年は、繰り出される異形による絶対死の拳をその小さな人の身と、己の剣だけで防いでいた。


「GIAx■■■■■■■■■■■XA!!」


 紫の血が派手に舞い散り、醜悪な神殿を染め上げ、むせ返る様な異臭があたりにこみ上げる。同時にズシンッ。とも、ギチャリ。とも聞こえる音が神殿を揺らす程の振動と共に響く。三対ある腕の一対の片腕を切り落とされた異形の悲鳴を付け加えて。

 青年は人間には到底防げぬ筈のそれを防ぎ続けるどころか、遂にはその巨大すぎる異形の腕をお返しと言わんばかりに切り落としたのだ。

 

 表情等という物が存在しない筈の異形が己が腕があった場所を驚愕のそれを浮かべるかの様に向けながら喚く。それを好気と見たのか青年が駆ける。その身を一瞬だけ縮込ませたかと思いや、爆発する様な速度でその巨体に一瞬で近づくと共に一線。






 眼前には残った腕の掌をこちらに向ける異形。

 その姿は異常な程までに静寂。そこには、先ほどまでの我を失ったかの様な姿等存在しなかった。




 五つの掌にそれぞれ五つの光球が見えた瞬間、青年は振り下ろす予定だった黄金の剣をとっさに自分の前に盾の様に掲げる。




『Bl■■t F■a■e Ω』




 薄暗い神殿全体が太陽に包まれたかの様な目映き閃光が走った次の瞬間、爆発。

 近くにあった支柱の何本を粉々に吹き飛ばし、爆風が砂塵を押し上げる。


「グハァッ!!」


 爆風で吹き飛んだのは支柱だけではなかった。異形に剣が届く距離にいた筈の青年は、吹き飛ばされ何度も地面をバウンドしながらも一向に緩まない速度で、爆発の範囲外にあった無事な支柱の一本に激突し、その無事な支柱を半分程砕く結果となってようやく止まることができた。

 常人では決して生き残れぬその状況に、これまで幾度となく常人の死を切り抜けた青年は生きていた。そして驚くことに、意識を飛ばすことも無く立ち上がるのだった。

 しかし、その姿は到底無事と言える物ではない。

 何かしらの加護を受けているであろう青い鎧は肩から腕にかけて、大きく欠けてしまい。その胴体部は今にも壊れそうにひびが入ってしまっている。その下の身体からは、赤い血がしみ出る様に流れ、青い鎧の表面をつたいしたたる。兜は転がっている途中で脱げたのか、その頭上には存在せず、こちらからも激しい出血が青年の顔を半分程、覆い隠す。

 立ち上げってはいるものの、足は震え、身体はぐらつき、大きく肩で息を吸わなければ今にも倒れてしまいそうだった。


 だが、倒れるわけにはいかない。ここで意識を失えば、訪れる結果は目に見えていた。顔を上げれば、その巨体らしからぬ速度でムカデの様な足をせわしなく動かしながら異形が近づいてきていた。

 青年は、震える身体を押さえつけ、感覚が鈍くなってしまいながらも、右手で握りしめていた剣を構える。


 青年は目を見開き、おのが視界には言った光景を一瞬理解できずに否定する。


「エルダー・ワンが……」


 感覚が可笑しくなっていて今の今まで青年は気がつかなかったが、右手に握っていた黄金の剣はその刀身の半ばから先が存在していなかった。


 エルダー・ワン――青年が振るっていたその黄金の剣は、歴代の勇者(・・ )が手にした神器の中でも最強と呼ばれるものの一つにあげられる神剣であった。剣の切れ味、頑丈さ、しなやかさ等、剣自身における性能は正に人の手では作りえない代物であり、持ち主には身体強化から呪いへの耐性とあらゆる加護を与え、また、その輝くような黄金の刀身からは使い手の意思しだいで浄化の炎を放つことができるという、数ある攻勢神器の中でも間違いなく破格のものであった。


 しかし、その最強の一つであるはずの剣は、今やその黄金の輝きを潜め、半ばから折れた刀身が虚しくあるだけであった。さしもの最強の神器といえど、異形――魔王の放つ超過魔術(オーバー・マジック)の多重撃の直撃には絶えられなかった。それでも、その刀身が折れようとも、使い手の命を救えたのはエルダー・ワンであったからであろう。神器と同じく、人の手では到達できぬ異端の魔術――超過魔術の多重撃など並みの神器では使い手もろとも消し飛ばされていたはずだ。


 しかし、その神器の最後の働きによって辛うじてだが、命を救われたはずの青年の目は虚ろな物へと変わっていた。青年の心は未だその手に握り締めている神剣と同様に折れてしまっていたのだ。

 それも仕方のないことであろう。青年がここまで戦えてこれたのはひとえにその神剣があったおかげなのだから。


 青年が勇者と呼ばれる存在に選ばれたのは、この最強の一つである神器に対しての適正があったがためだった。


 神器――それは、その名が示す通り、神によってもたらされたこの世では作ることの適わぬ祝福武装のことである。その始まりは、御伽話で語られるほどのはるか昔まで遡る。それは、まだ、竜人、エルフ、獣人、ドワーフ、妖精等の亜人と人間が種族の垣根無く、勢力が偏ることの無かった平和な時代。そこに現れたのが『常闇ヲ纏イシモノ』――始まりの魔王とも呼ばれる初代魔王である。何処から来たのかも知れず突如現れたその魔王はその邪気によって世界を歪め、獣を凶暴な魔獣と変え、様々な魔物を生み出し、平和に暮らしていた種族全てを襲い始めた。


 魔王や魔物の達の力は凄まじく、並みの者達では立ち向かうことすらできなかったため、各々の種族から、腕の立つ者達を集め、全ての種族が自分達の持ち合わせる技術の全てを詰め合わせた魔術武装を持たせ、魔王との戦いに挑んだ。これが初代の勇者達である。


 勇者達は強かった。竜人や獣人達が持ち合わせた希少素材をドワーフと人間が加工し、エルフと妖精達が魔術付加を行った魔術武装を持った勇者達は強力な魔物すら物の数とせず、ついには魔王のもとまでたどり着いたのだった。しかし、魔王は強大だった。強大すぎた。魔王には自身に届くあらゆる魔術を無効化する力があり、勇者達の切り札であった魔術武装はそのことごとくが魔王には通じなかったのだ。


 圧倒的な魔王の力に今にも力尽きそうな勇者達の前に突如天から一本の剣が降り注いだ。それは、いかなる攻撃も有効打になら無かった魔王の体を傷つけ、今まさに魔王の手で葬りさられる寸前の人間の剣士を助け、その眼前に突き立てられた。剣士はすぐさまその剣をとり、魔王に立ち向った。


 剣は剣士に強大な力を与え、その輝く刀身は魔王の身を包む闇ごと魔王の体を切り裂いた。闇を切り裂かれた魔王の力は衰え、魔術も無効化できなくなった。それに気がついた仲間たちは剣士を中心に傷ついた体を奮起させ。また魔王に挑み始めた。そして遂に剣士は仲間達の援護の下、初代魔王を打ち滅ぼしたのだった。この剣こそ歴史上最初の神器『名も無き光の剣』であり、その持ち主である剣士こそ後に語られる初代勇者である。


 神器とは魔術付加や祝福付加などでは考えられぬほど強大な力を宿す事と、その奇妙な出現方法からつけられた名である。初代魔王襲来以来、長ければ数百年、短ければ数十年という頻度で魔王が現れる事になった。そしてそれに伴い何故か神器が突如現れる現象も同時に起き、そのたびに勇者が決められた。


 その勇者の選抜方法こそ神器を扱えるか否かである。神器は強大な力を秘める代わりに、その力を引き出せるものは基本的に与えられた勇者のみである。中には前に出現した神器に適性を持つものが現れ勇者となるが、基本的には勇者となるべく者が何かしらの転機(・・・・・・・)を迎えた際に、運命を切り開くかのように突如神器が現れるのだ。そんな気まぐれな出現方法のおかげで、いくつも重ねた時代の中では、勇者が数人いた代もあった。また、神器は武器に限らず、盾や杖、中には服やアクセサリーのようなものまであり、いくつかの分類によって言い表された。


 細かい説明は省くが、青年が使っている『エルダー・ワン』は特に攻撃力を誇る攻勢神器と呼ばれる分類で、三代前の勇者がその代の魔王である『死肉ヲ貪ルモノ』との戦いの最中に出現した神器である。


 この神器に適性を持った青年は元は騎士見習いであった。とある中流貴族の出である青年は長男でないことと、その類まれなる才能で騎士を目指していた。そんな最中、行われた選定の儀にて、何を間違った『黄金の一振り』と呼ばれる最強の一つと呼ばれる神器の適正があることが判明し、騎士見習いの青年は分不相応にも神器持ち(ゴッドホルダー)の称号を得てしまった。


 しかし、青年はその分不相応な称号を得たとき、否、神器を得た時、心から喜んだ。元々、英雄願望のある気質だったのと、その持ち合わせた才能が後押し、青年はしだいに増徴していった。才能と神器の性能にかまけ、他を見下すようになった。


 そのまま何事も無く成長すれば、青年は間違いなく腐っていただろう。しかし、青年が腐りきる前に魔王は現れた。青年は神器持ちとして勇者の称号とともにこれを倒す旅に出る義務があった。そして、青年は嫌々ながらも、他の選定されたメンバーを見下しつつ旅を始めた。が、結果。その旅が青年を変えた。


 才能と神器にかまけ、ろくに訓練をしていなかった青年では、低級の魔獣や魔物ならまだしも、上級の魔物には到底その力は及ばなかったのだ。


 軽い気持ちで挑んだ上級の魔物数体との戦いで返り討ちに会う青年。自身の行いを後悔しつつ迫り来る圧倒的な死から青年を救ったのは、今まで見下していた仲間達だった。仲間たちは強かった。青年の持つエルダー・ワンには到底及ばないはずの武装にもかかわらず、仲間たちはその持ちえる技と仲間ならではの連携で魔物を圧倒した。それこそ、古の勇者達のように。実際に、青年は仲間達の姿に憧れていた筈のその姿を幻視した。


 青年はそのときから心を入れ替えた。否、騎士を目指していた頃に戻ったというべきか、見下していた仲間達に頭を下げ、今までの行いに許しをこうた。そして、自分より実力が高い仲間達に旅をしながらも師事を仰いだ。


 当初は、多少の諍いもあったが、結局の所、和解をして師事を受けることになった青年は元々の才能もあり、命をかける実戦とともに急激に成長していった。それこそ、勇者と呼ぶにふさわしいほどに。



 そして、青年は今ここにいる……魔王の前に。



 青年は間違いなく強くなった。人族の中ではまさに最強であろう。しかし、それは神器ありきでの話だ。いくら才能があろうとも、いかなる苦難を乗り越えて成長したとしても、彼はまだ最盛期には程遠く、年月という積み重ねが少ない。それでも、人族の上位に食い込むには間違いは無いが、そこまでだ。


 それでは届かない。魔王にはその程度では当然届かないのだ。


 そも、青年の戦いは神器を前提においたものだった。彼は初めての実戦から今の今まで神器をその手にして戦ってきたのだ。いくら、青年の心が強くなったとしても、その最奥には神器対する絶対的な信頼が根付いてしまっていた。


 

 禍々しい光が依然虚ろな青年を照らす。

 魔王は油断無く、一定上の距離を開けて先ほど同様に超過魔術による多重撃によって青年を仕留める事にしたようだ。

 もはや、神器も祝福武装の鎧も無い青年にそれを受けることもさばくことも適わない。ここに青年の敗北は決定した。


 徐々に圧力を増す死の閃光を前に、青年どこか安らぎにも似た諦めに笑みさえ浮かべた。


 仕方が無い。その言葉が胸中を占める。


 青年は駆け抜けてきた。神器を使ったとしてもただの人間が魔王に対抗できるほどの濃密な戦いを数年ぽっちの短期間で。必死だった思いは一度立ち止まってしまえば、もう一度駆け抜ける力は失われてしまう。


 歴代の勇者候補達はその全員が魔王に勝てたわけではない。神器とは魔王に勝てる手段ではなく、あくまで対抗できる手段でしかない。神器を与えられつつも、魔王を倒し真に勇者として名を連ねれるのはほんのわずかであり、魔王の前に、いや、それ以前に旅の途中で命を落としてしまうものも多い。


 自分もその中の一人になったに過ぎない。むしろ、腐ってた自分がここまでよくやったもんだ。


 そんな自分勝手な思いを秘めて青年は、せめて最後は目の前の醜悪な魔王の姿ではなく、自分が魔王と戦うために他の魔物を足止めをしてくれた仲間達の姿を思い描くため、目を瞑った。


 自分が死んで魔王が自由になっても、彼らの実力ならば魔王と戦えずとも何とか安全な場所まで逃げ切れるであろう。そして、自分が死んだら現れるであろう次の勇者候補を補佐し、不甲斐ない自分の代わりに今度こそ魔王を打ち滅ぼしてほしい。


 死ぬ間際の刹那の瞬でもというべきか、青年が思考していた時間は本のわずかであったが、その時間も永久でなく、青年の最後を迎えるべく呪文が紡がれた。





 

 



「――切裂けえぇぇぇええええぇええ!!」


 状況を動かしたその一声は、魔王からではなく、弾ける様に折れた神器をふりかぶった青年の口から発せられた。すでに死に体だったはずの神器も、主に呼応されたか半ばから折れた刀身の先を補うかのように炎による刃を形成する。


 元々エルダー・ワンの神器としての最大の特徴は剣の切れ味や頑丈さではなく、刀身から生まれる浄化の炎にある。炎さえ生み出せるのならば、戦闘力の低下は七割ほどに抑えられる。


 だが、その三割は致命的。ただでさえ五分とはいえぬこの戦いにおいて、絶望的差である。さらに敵はすでに、青年を仕留める準備はし終わっているのだ。青年は魔王が呪文を紡ぐのみという、シングルアクションに対して、接近し、振り下ろすというセカンドアクションが必要。しかも、神器破損による威力低下で一撃で仕留められる可能性はほぼ無いと着たものだ。


 どうみても、青年の行為はただの悪あがきであった。それは、もちろん青年にもわかっていた。しかし、青年は諦める訳にはいかなかった。いかなくなってしまっていた。



 自分が死んでも、彼らなら無事逃げ切れる? 彼らが負けるからって魔王をほっぽりかえして、おめおめと背を向けて逃げると? 


 するわけが無い。


 逃げるとかありえんわ。何処の馬鹿だそんな無責任なでたらめ言ったのは? 俺か?俺だわ。頭ぶつけすぎてなんか飛んだわ。


 特に何かと突っかかってくるあの気の強さが、気の強いと書いてある服を着て歩いているような、どこぞの赤髪の娘さんは、死んだ自分に対して散々辛辣な台詞をこぼしながら、魔王に向かっていくに違いない。

 

 

 あぁ……。それは、ダメだよな。負けられないわ。



 青年は駆ける。


 死に至らしめる呪文を放つ魔王に向かって。それは、先ほどの焼きまわしカの様な光景。


 ……間に合わないのは先刻承知



 青年は翔る。


 

 一足飛びに飛び上がり、その身で空を切る。


 右手に握る燃え盛る神器を振りかぶり、開いた左手を呪文の閃光にかざし、自分から飛び込む。


 ……だから



 青年は賭ける。



 命を賭けて、奇跡を対価に。


 ……二つとかそんな話、今まで聴いたことは無いし、強欲にもほどはあるが、これは……


 

 青年は懸ける



 全てを"今後の人生"を懸けて、"彼女を"守り抜く。


「無事帰れたら土下座でも何でもして告白してやるわぁぁぁああ!! だからよこせ!! これは……間違いなく、運命の転機(・・・・・)だろ!! なぁ、神様!!」




 かくして、その願いは叶えられた。


 急に左手に感じ取った確かな存在を逃がさぬようにしっかりと捕まえて構えて、呪文の暴風雨を五体満足ですり抜けて、視界に移った醜い肉の塊を一線。序でに、おまけとばかりに邪魔な腕を全て持っていく。


「GIAx■■■■■■■■■■■XA!!」


 勝利を確信したはずの魔王は、今度こそ心から驚愕の悲鳴を上げる。


 魔王の脇を抜けて着地した青年の左手には、先ほどまでは存在していなかった、青年の半身を裕に隠せるほどの美しい群青に染まる盾があった。


 それは、まごうことなき神器であった。魔法を吸収し、使い手の加護へと変換する抗魔の守勢神器。


 後に、青年――今代の勇者は二振りの神器を扱うことのできる歴史上、唯一の勇者として名を残すことになる。


「ははっ。――ッーさいっこう!! 神様最高!! 帰ったら、絶対、教会で式挙げます!!」


 盾の神器のお陰で、ある程度の傷も回復した青年は、右手に折れたエルダー・ワンを掲げ、また魔王へと立ち向かっていった。


 その顔には、当初あった必死ゆえの緊迫も、後に浮かんだ諦めでもなく、ただ未来への活路を見出したものであった。




           ◇               ◇



『お~、何叫んでるかわかないけど、喜んでる喜んでる』


 盾を投げ込んだ事で、不安定に揺れる水面でちょっと見にくいけど、嬉しそうにはしゃいでるのがわかる。いや~、あんなに喜ばれると頑張ったかいがあるってもんだね。


 いや~、あれを作るのには苦労したよ。今までもいろんな盾とか、鎧とか適当に作ってきたけどさ~、魔法っていう形で一度変換されてる魔力を逆式から元に戻すってのが大変だったね~。後の身体強化や治癒は前に作ったのからそのまんま持ってきてるから簡単だったけど、やっぱ作るならいいものつくりたいしね~。こういう職人気質っていうか無駄に凝り性なのは日本人のいい所ってやつなのかね? 


 日本あんま覚えてないけどさ。


『ありゃ、もう復活したか。今回の奴は再生しないけど大分タフだな……おぉお! そうだ、突っ込め! その吸収君試作四号機なら相手の魔法攻撃は避けないでいいぞ! むしろ、自分から当たりに行け!!』


 魔力吸収して強化されるだけだしね。あぁ、もちろん余剰魔力は所有者の許容量超えたら、盾に溜まって後でまとめて使えるという優れ性能もある。更なる余剰分は使用者の周囲の空間に循環するというクリーン仕様になっているので、アニメとかのお約束である許容量超えたら壊れるといった心配もなく、環境にもやさしいです。たぶん。


 ……いや、ここ以外の場所ってよく知らないからさ、外の環境がどのくらいの魔力が大気に影響ないかとかしらんし。

 

 とまぁ、さっきからグダグダと自作した製品の性能やら、苦労話をしている俺が誰なのか、そろそろ説明しようと思う。


 俺は……そういや名前なんだっけ? いや~、こんなところに長いところいると、ぜんぜん使わないことって色々忘れるんだよな~。ここ俺意外、誰もいないから名前なんて呼ばれないし。


 まぁ、こんなところって言ったり、長いこととか言ったり、たぶん何のことだか分けわかんないだろうから、覚えてる範囲で一から順に説明していくわ。


 自分の名前は忘れたけど、出身地は地球って星の日本という国。そこからどーしてか知らんけど、気がついたら見たことも無いところにいたのよ。


 四方を壁に囲まれた広い部屋で、端っこにため池みたいなものがあるっていうこと以外何も無い。最初は、誘拐されてどっかの密室に閉じ込められたのかと思った。


 まぁ、すぐにそれは無いって気がついたんだけど。というか、それどころじゃ無かったって感じ? 


 ……だってさ~、自分の体がパッとみスカルグ○イモンになってたら誰だって、ねぇ? 呆然とした後、驚いて、また一週してほうけてたねあん時は。


 今の自分の体をもうちょい詳しく描写すると、全長6メートルくらい(後の工作趣味で大体こんなものってわかった)、全身は白い骨の標本みたいで肉は無い。何処と無く、ゲームに出てきそうなドラゴンっぽい骨格なので、博物館とかにある恐竜の骨格標本に近いかな。


 体の中心部にだけ肉っぽいものがあるが、赤とオレンジと緑が奇妙に混ざり合った心臓のような物体で、別に何処ともつながってないのにゆくっりと拍動してる。顔に当たる所もワニっぽい形の頭蓋骨だが、眼窩のところだけ、後ろに貫通して見えないで真っ黒。その中に、怪しく光る光点が浮いてて、たぶんこれが眼。


 な? 何処からどう見ても、スカルグ○イモンじゃん? 俺、完全体じゃん? 


 手とか体に対して異様に長くて手先にかけて巨大になってくところとかも似てる。俺のほうが、体中から棘みたいに骨が飛び出してて、鋭角が多いとか、全体的なバランスがより西洋ドラゴンぽかったりするっていう違いはあるけど、おおむね似てる。


 もうね、驚きすぎて逆に一回りして、暫く呆けてたね。


 で、いつまでも呆けてるわけにもいかないし、色々納得行かなかったけど、とりあえずなんでそうなったのか、とか、ここが何処なのか、とか、ここからどうやって出よう、とか、出た後この姿でどうしようか、とか色々考えることにしたんだけど、結果から言わせてもらうと全部無駄だったね。


 だって出口無いんだもんここ。


 完全な密室だったよ。この体じゃなかったら、空気とかの問題で死んでたろうね。これに気がついたときは、壁壊そうとかもしたんだけど、ビクともしなかったね。こんな巨体でぶん殴ったのに、震えることすらしなかった。なんか、見た感じは壁なんだけど、物体的な壁じゃないっぽい。殴ったこちら側にも反動が全く感じられなくて、言い表しにくいけど急に拳がとまった後、いつの間にか拳が壁に密着してる状態になるというか、そんな感じ。


 よくわからなかったけど、壊せない物だって思うことにした。そん時は既に幾つもおかしなことがあったし、細かいこと考えるのはやめることにした。今の状況がファンタジー物のコミックや小説の定番の異世界転移だとしたら、物理法則とかももしかしたら違うのかもしれないしね。元々、オタク趣味だったからそっち方面に考えがいくのは早かったよ。


 まぁ、たぶんというか、ほぼ確実に異世界なんだけどね。


 そう思う根拠は数え切れないほどある。


 例えば、まず第一に俺の存在。こんな生物、地球じゃありえないだろ。次にここの光源。一切光が入る場所が無いのに、何故か俺は自分の体と部屋全体が見渡せる。しかも、どこにも影が無い。光っていうのは光源から直進して、何かにさえぎられれば影ができるはずなんだが、部屋は均一に明るくて、どこにも光源が見当たらない。物理法則が違うかもって考えたのはこれも要因の一つ。


 そして、なによりも異世界だと核心もって言える要因は、部屋の隅にあるため池のようなものだったりする。


 部屋には他に何も無くて、ここだけ淵に堀があって水が張ってあるんで怪しいからって一番最初に調べたんだけど、水深一メートルの深さも無いただの水溜りで、その時は特に何も見つからなかった。


 結局あきらめて、他に何かできることはないかとあれこれ考えたり行動したりしたんだけど、本当に何も無くて、ただただ無駄に時間を過ごすしかなかった。



 お腹もすかない。寒さも暑さも感じない。何の音も聞こえない。何も無い。


 

 死ぬって。肉体的には死なないかもしれないけどさ、普通に精神が狂って死ぬ。


 何でこんなことに、っていう嘆きの感情が理不尽なことに対する怒りに変化するのは割りと早かったと思う。


 俺は感情を抑えきれないで暴れまくった。でも、暴れる対象が存在しないんだよねここ。壁とか叩いても反動が無いってことは苛立ちをぶつけれないんだよ。


 だから、できることっていうのは叫ぶくらいのことだった。幸い声は出るんだよね。声帯も舌も無いけど、言葉しゃべれる不思議。案の定ラスボス的な凶悪な声だったけど。


 で、もう頭おかしくなりそうで意味不明なこと叫びまくってたら、心臓っぽい器官から同じ大きさの光の玉みたいのがでたのよ。


 いきなり出てきたそれを、暴れることも忘れて見つめてたら、スゥーと、それが移動してため池に吸い込まれていったの。すると、ため池の水面になんか映像が出てきたんだよね。いかにもファンタジーっていう世界の映像がさ。猫耳とかエルフっぽいのとかドラゴンとかそういうのと人間が暮らしてる剣と魔法の世界って感じのが。


 どうなってるか調べたかったけど、下手になにかして、せっかく出てきた映像が消えると困るので、食い入るようにその映像みてたら、その映像は結構勝手に移り変わることもあるけど、基本的に自由に操作できるってことがわかった。自分が見たいって思った方向を大雑把だが写してくれるのだ。


 他にやることが無かった俺は、この異世界ウォッチングにのめり込んだ。音が聞こえないのが残念だが、オタク趣味だったのも助けて、目の前にある異世界の光景に好奇心がガンガン刺激され、映像を操作しては異世界のあちこち見て回った。


 どのくらい時間が過ぎたのか、映像の昼夜の光景から数年ぐらいだったかな。眠くも疲れもしないからずっと異世界ウォッチングしてたんだけど、ある時、水面から何かがこちら側に流れ込んでることに気がついた。


 眼には映らないんだけど、感覚的に何か着てるな~って。よくよく部屋にその感覚を向けてみると、映像が映った時から流れ込んでたのか、そのよくわかんない圧力のようなものは結構な量が部屋に満たされてた。


 なんぞや? と気になった俺は、なんとなく感覚でそれを自由に動かせることがわかったので手のひらに集めてコネコネしたり、部屋に渦を作ったりとして遊んでるうちに、それが何なのか見当がついてきた。


 もしかして、これ魔力じゃね?


 異世界ウォッチングで実際いくつかの魔法らしきものを見ていたので、ゲーム脳的発想から、それっぽいエネルギー=魔力だと当たりをつけた。


 ファンタジー物の王道である魔法が使えるかも! とハイテンションになって、それっぽいこと色々試すことにした。異世界ウォッチングの映像操作がもうちょっと細かい操作ができて、音声も聞こえれば簡単だったんだけど、魔法を使っている身振りだけじゃあどうしていいのかよくわからなかった。


 で、あれこれ試しているうちになぜか剣が出来上がった。


 うん。意味がわかんない。魔法じゃなくて、錬金術でも使ったのかと。しかも、無から有を生み出すとか、等価交換無視じゃないですかー、やだー。あれ? 俺、賢者の石?


 まぁ、正確には、そこにあった魔力(?)を凝縮してたら、剣になったから、まったくの無からではないんだけど、それでも、眼に見えないものから物作り出すっていうのは物理法則マジで違うんだな、と改めて思った。


 剣になった原因はたぶん、異世界ウォッチングで魔法使ってるところを見ながら魔力こねてたときに、戦闘中だったからさ、一緒に剣も見ちゃって、そのイメージが混ざって固まったんだろうね。出来上がった剣をしげしげと見つめてたら、頭の中に変なものが浮かんできた。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名:----

種類:ロングソード

スキル:【炎属性付与】【火球Lv1】

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 


 ゲームとかに出てくる、所謂ステータス画面だった。たぶん、目の前の剣の情報を指している思われる。


 名前が無いのは作られたばかりだろう。このスキルの欄は、参考にしてた魔法が相手に火球を飛ばす火の魔法だったから、そういったスキルを持ったのだろう。まず間違いなく俺のイメージによって作られたものだと思われる。


 大きさや形は、異世界ウォッチングで眼にしたものと全く同じのようだ。(因みにこの時に、自分の体の大きさを知った。ロングソードなのに、俺だと摘めるくらいの大きさしかない)パッと見たかんじ普通の剣だったが、試しに意識しながら振ってみたところ、刀身に炎がまとわりついた。これが、【炎属性付与】なんだろう。

 

 火球の方も『出ろ』と思いながら振れば、刀身にまとわりついた炎が先端に集まって、剣の向けた方向に飛ばされた。火球の大きさは大体、成人男性の手のひらサイズの物が一つ。


 何度か試したが、使える回数に限度はなさそうだが、炎が集まるのに時間がかかるため連射ができず、数も大きさも変更はできないようだ。火球の横に、Lv1って書いてあるし、たいしたものではないのだろう。もしくは、参考にした魔法がその程度だったためかもしれない。


 娯楽に飢えていた俺は、異世界ウォッチング以来のやり込み要素にそれは夢中になって、この現象についてぶっ続けで調べとおした。


 その結果わかったのは、まず、このエネルギーの正体は魔力であっているだろうということ。魔力を集めて、武器の形をイメージせずに、現象だけをイメージした場合、魔法と思われる現象が起こったからだ。これは、武器を作るときよりも断然少ない魔力があれば発動し、イメージも発動する一瞬だけでいいので比較的簡単である。


 逆に、武器を作るときはかなりの魔力としっかりとしたイメージが無いと、霧散するか、粗悪品ができてしまう。また、同時にイメージさえしっかりできれば武器以外の物でも作れることがわかったが、製作したものに、スキルをつける場合、あんまりにもその道具の役割からかけ離れたスキルだとうまく定着しないという点も見つかった。


 例えば、剣に【切れ味強化】を付けるのと、盾に付けるのとでは、剣に付ける方が簡単で、高いLvのものが付きやすい。これは、イメージする際に俺が持ってる固定概念によるものだと思ってる。イメージしやすい物の方が、完成度が高いのだ。


 しかし、イメージするというのは思った以上に難しい。自分では頭の中で完成図をちゃんと描いているつもりでも、そのイメージにはどうしてもばらつきが生じてしまうし、スキルを付けるとなるといっぺんに色んなことを想像しないといけないので、中々納得いくものは作れない。オタクとしては魔法を極めるとかもやってみたかったが、一瞬しか発動しない魔法より、何かの形が残るこの作業の方がコレクター心とゲーマー魂を刺激され、アホ見たいに夢中になった。


 作ってはステータスを見て、一喜一憂し、試行錯誤を繰り返し、よりよいものを作っていく。


 そんな作業が日常化して、そこそこに納得のいくものが作れるようになって着たぐらいか、異世界のほうから流れてくる魔力の質が微妙に変化している感じがした。


 ため池は魔力収集のため繋げたままになっているが、武器製作に夢中でその時にはあまり異世界の方の映像は適当なところに固定して、見て回ることはしていなかった。


 だから、気がつくのに遅れた。


 久しぶりに見て回った異世界の風景は、前の美しかった光景は成りを潜め、禍々しいものへと変化していた。前に見てかわいいと思った獣は、グロテスクで奇怪な姿をしたものへと変わり、美しかった森は生き物を騙し、貪欲にその生を啜っては、その実に醜悪な果実を実らせる。何処からわいたかもわからない、まさにゲームに出てくるようなモンスターの数々が亜人達や人間を殺して回っていた。


 最近は行っていなかったが、この世界を見回るのが好きだった俺にはひどくショックだった。急いで、原因を究明しようと映像をあちこちに飛ばした結果、どうやら、ファンタジーの王道である魔王らしき存在が現れたせいらしいということがわかった。


 音声がこないせいで詳しい状況はわからないが、今は大分減ってしまったが全種族が集まって何とか対抗している。だが、魔王側の方が数も個々の強さも上な以上そう長くは持たない。それは、彼らにもわかっているらしく、どうやら総力戦で敵戦力の足止めをし、各種族混合の少数精鋭のチームで魔王を仕留める算段のようだ。他と比べ質が跳びぬけていい武器で全身を固めた十数人の集団がそれだろう。


 だけど、俺にはその集団が装備している武器があんまり良い物に見えなかった。これらなら、そこらへんに転がしている俺が作った武器の方が断然強そうだ。映像越しではステータスは確認できないようなので、真実はわからないが、俺は嫌な予感がしていた。


 結果、その予感は当たっていた。


 目の前に映る映像には、ほとんど壊滅している少数精鋭部隊のメンバーの姿。半分以上が倒れ、既に数人は帰らぬものとなっている。残ったものですら、立っているのがやっと。反対に魔王にはダメージらしいダメージは無し。


 あまりにも一方的すぎだろ。あの、体に纏ってる黒いオーラみたいのが原因か。そういえば、確か前作った奴に……あった!


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名:----

種類:ロングソード

スキル:【光属性付与】、【魔力切断】、【魔力吸収】、【魔力還元】、【光斬刃Lv55】、【ランダムスキルシールLv20】

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 俺が取り出したのは、煌びやかな装飾がされた柄に、白い刀身の中央には青い大きな宝石が埋まっている剣。前に王道RPGの主人公がもってそうな剣をイメージして作った奴の一つだ。まだ完成度が甘いけど、【ランダムスキルシールLv20】――斬った相手のスキルをランダムに一時封印する――がついてる、これならあの厄介そうなスキルを持ってる奴とは相性がいいはず。


 いいはずなんだけど……。


 そう、いくら相性が良い武器もでも使えなければ無意味だった。俺はただの傍観者でしかないのだ。いくら向こう側を知ろうとも、強力な武器を作っても、まるで無意味。ただの自己満足の範疇を超えず、俺は此処で孤独に完結していた。外への活路は無い。今まで考えようとしても、考えなかったことを目の前に突き付けられたみたいで、俺は一生懸命作っていたはずのその剣も凄く無価値なものに見えた。


『っ! 危ない!!』


 そんな、精神状態だったからだろうか、俺はメンバーの男の一人が魔王の手によって殺される寸前の映像を目の当たりにして、つい、手の中にあった剣を魔王の攻撃をさえぎるように映像に向かって投げ込んでしまった。


 ただ、水面を揺らすだけに終わると思われたそれは、水底につくことなく、水面に吸い込まれるように消えていった。


『えっ!?』


 俺は驚愕に目を見開いた後、すぐさま反動で揺らめいてる水面に移る映像に意識を戻すと、そこには、今まさにしにかけてたはずの男が先ほど俺が投げ込んだ剣を持って、魔王と対峙している姿があった。


 今まで、消えてしまう可能性を考慮して一度も水面には触れなかったせいで、気がつかなかったが、もしかして、この水面は映像を映すと共にゲートの役割があるのではないかと、もしかしたら脱出手段見つけたかも。と考え、取りあえず役に立ちそうな武器を他にも投げ込んでみた。


 が、期待とは裏腹に、それらは水面を通り抜け、水底に到着してしまった。


 もしかしたらと、手も突っ込んでみたが、映像が乱れるだけで、結局最初の一本以外は通ることが無かった。



 なぜだろうか?


 そう考えているうちに、魔王は剣を持った男と、剣によってスキルが封印されたのか、弱体化した事により、男の仲間達の援護も相成っていつの間にやら倒されていた。すると……


『えっ! ちょっ、ちょっまっ!!』


 映像が一瞬揺らめいたかと思うと、今まで一度も消えなかった映像が薄くなっていき、遂には消えてしまった。


 その時はとにかく焦ったが、もう一度『出ろー! 出ロー!! ワンモア! ワンモアチャンス、ミー!!』とかやってたら、また光の玉が心臓付近から出て、水面に吸い込まれていくと、同じように映像を映し出してくれたので助かった。唯一の手がかり&娯楽だからね。


 あの後どうなったのか気になって、色々調べていたら、変な違和感に気がついた。あれだけ荒れていた風景や町並みが、一通り戻っているのだ。さらには、種族間のバランスも最後に見たときに比べ大きく変化しているように見えた。よくよく調べてみると、どうやら数百年の時が過ぎているらしい。映像が切れた後すぐに繋げたにも拘らずにだ。


 後にわかったことだが、どうやら、この部屋と外の異世界との時間の流れが違うみたいで、この映像を繋いでいる時のみ、同じ時間の流れをすごすようだ。もしかしたら、この部屋とあの世界もまた別の世界で、あの光の玉によってたまたまつながっただけと考えた方がいいのかもしれない。あの世界以外につながったことは無いが。


 とにかく、このゲート(仮)がいつでも開けるようになったようなので、これもまた様々な考察と実験を繰り返すこととなった。なんか、ずっと実験ばかりしてる気がするが、自分の常識が何一つ通じないから仕方ないのと、意外と調べごとが嫌いじゃないからだろうな。だって、気になるじゃん?


 毎回おんなじだと飽きが来るので、今度はゲートについてわかったことを箇条書きにしていくことにする。


①ゲートは基本、物を転送する役割は働いてなく、映像を見ることしかできない。


②ゲートが役割を果たすのは、ゲートに移っている人物が何かを強く欲することによって、そのとき必要となる物のみ通過可能(作った武器のスキルが関与してると思われる)。また、何故か魔力だけは向こう側から常に一定量が流れてくる。


③向こうの世界はどうやら定期的に魔王と思われしものが現れる。


④魔王はその姿能力に関係性は無いが、世界を汚染し、人族に対して強い敵対心をもつ共通点がある


⑤魔王が倒されると、一度ゲートが閉じ、再度開いたときには最低でも数十年の時が過ぎている


⑥異世界のゲートを開くスキルは存在しない(生成しようとしたが全て失敗に終わる)



 わかったことはこんな所だが、結構時間がかかった。


 魔王がちょくちょく出てくるせいで、中々検証が進まなかったのだ。もう数十回以上、ゲートを開きなおした。魔王を無視してると、人族が滅びかけるから無視もできなかった。魔王に合わせた武器とか送らないと簡単に負ける。


 人族も中にはそこそこ強くなるものもいるのだが、やっぱり基礎スペックからして差が大きすぎて、とても俺の作った武器無しでは勝てない。前に送った武器はどうやら、他のものには使えないのが多いようで、新たに作ってやる必要もあると、中々に大変だった。


 まぁ、それの原因は、武器の性能が高すぎて、所謂装備に必要なステータスの中に武器のスキルに対する適正が必要なためなんじゃないか~、と考えてるんだが……。

 

 まぁ、それはそれとして。そういった実験の数々をこなして、遂に俺はこの部屋からの脱出を試みることにしたのだ!


 ゲートに関することで、物体の転送にかかわるのは②を見れば推測できることだが、ゲートの反対側からの力が必要ではないかということだ。つまり、こっちからだけ送ろうとしても、向こう側で誰かがそれを欲しいと考えて、受け入れてくれないと道ができないんだと思う。


 つまり、俺が向こうに行くには、俺の存在を誰かが、欲しいと思ってくれないと向こう側にはいけないということ。


 俺の存在を知っているものが向こう側にいない以上、この結論が正しければ永遠に俺はここから出られないということになる。

 


 が、しかし! 開発厨の俺は、ここで、とあることを閃いた!! 


 

 それは、自分の意識を写せるスキルを持った肉体を魔力で作ってしまい、魔力による転送ができるスキルを同時に付ければいいのではないか? ということだ。


 魔力は常にゲートを超えてきているので、こちらから向こう側に行けないということは無いだろう。また、この肉体で向こう側に行っても化け物扱い、最悪新たな魔王扱いされるだけなので、どちらにせよ新しい肉体は必要だったため、うまく行けば一石二鳥の作戦である。


 というか、もうこれ以上どうしていいのか、思いつかない……かなり希望的な観測入ってるし、これがダメだったら……あ~、考えないカンガエナイ。




 ……とにかく実戦あるのみである。


 盾送った後、無事魔王が倒され閉じってたゲートをもう一度、開きなおして、っと。


『この時のために長い間貯めていた魔力を……一気に集めて! イメーェェージ!!』


 ――俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の肉体、俺の…………にくたい?



 集めていた魔力が霧散する。



 『あ~……俺の体ってどんなんだっけ?』 


 

 俺はすっかり自分の姿を忘れていた。


 というか、名前も覚えてないのに姿とか今さらだよなぁ~。もう感覚的には百年以上ここにいるし、明確なイメージとか無理だって。


 だからといって、今更、諦める訳にもな~。しまったな、一歩目から破綻した。


 ……う~ん。おっ! そうだ! 何も自分の体じゃなくても明確にイメージできればいいんだし、此処は俺がはっきりと覚えている奴の姿でいこう。


 しかも、難しいスキルを乗せるんだ、なるべく条件に合いつつ俺がいまだ明確に覚えてるほどの姿……いるはずだ……俺の奥底になら……あの頃(・・・)の俺は毎日のようにイメージしてたじゃないか……条件は魔力で作られている存在……そして、俺を写す存在……ヒット!



『うぉぉおおおー!! 萌え上がれ、あの頃(オタク)の魂よ!! ~ッ、キタキタキタキタッァアー!! イメーェェージ!!』




           ◇               ◇




 竜の骨の中心部。その常に拍動を繰り返していた心臓のような器官が膨大な魔力の塊へと変化すると、部屋全体の魔力を根こそぎ取り込みつつ、とある姿へと変化していく。


 白く腰まで届くような長い髪、肌の色もまるで雪のように白く、肌理の細かい肌は幼いながらもどこか妖艶さをかもし出す。顔もこれまた美しく、少し目尻が尖っており、釣り目がちな目のその瞳は血の色を差すかのような赤色。顔の横からは、細長いエルフのような耳が飛び出している。身長は百三十センチをと少しといった所か


 その美しい姿をした少女(・・)は、何も纏わぬその身で、握りこぶしにした両手を腰につけ、膨らみかけの薄い胸を張るという少女らしからぬ格好で高らかに叫んだ。


「白○ン爆誕!! って、ちげぇぇぇぇえええええ!!」


 そして、その後すぐに蹲った。




           ◇               ◇




 いや、確かにイメージしやすいよ? 好きなキャラでしたし、条件にもばっちしだからさ、真っ先に浮かんだよ?


 いくら最初の段階で躓いて焦ってたからって、自分の器に幼女はねーよ……。色々アウトだよ。全裸だし。


 しかも、なんかやり直そうにも元に戻んないんだけど? 器作るだけの予定だったのに、なんか俺のボディから直接魔力に変換されて生成されたみたいだし、心臓のパーツ無くなってるんだけど? つか、俺の本体はあそこ(心臓)だったのか。あっ、目の光無くなってるな~。


 と、暫く現実逃避で愚痴言ってたけど、一応成功(?)したんだし、あんま文句いってても仕方ない。それに、今更性別とか此処から出れるならいっか、ていう感情もあるにはあるしね。数百年の性別不明で生きてれば、ある程度は……いや、それでもちょっと……。



 とりあえず、いつまでも全裸のままっていうのは色々アウトなので、魔力で服を作った。これまた、イメージ優先で白いケープのついたゴスロリと白いリボン。ようはまんま白○ンの服。ただし、せっかく作るので色々スキルはくっつけた。


 序でに、向こう側にいったらたぶん戻ってこれないので、用意を済ませることにする。


 取りあえずは武器! 自分で武器を試行錯誤して作ってたから、実際使う側になると色々悩む。


 さて、どうしようか? と考えたところで、目の前に佇んでいるスカルグ○イモンな俺ボディが目に入る。心臓の部分と、目の部分が無くなったので、今では本当にただのドラゴンの屍に見える。


 最初は戸惑ったが、何だかんだ本当の自分の体より長く使ってたので結構愛着があるだけに、その姿がなんとなくさびしく感じて、今ではずいぶんと小さな左手でそっと、今でもずいぶんと大きい左手の表面をなぞった



瞬間、俺ボディの左手が、白○ンボディの左手に吸い込まれてきえて、白○ンボディの肘の少し上から左手先にかけて白骨化した。


「おぉう! えっ!?何々??」

 

 スワッ、捨てたボディの呪いかと、割とガチでびびったが、よくよく見たら、白骨化したのではなくて、白い骨のような巨大な篭手を付けている……ように見える白い巨大な手になっていた。


「おぉいぃぃいい!! どうすんのこれぇ!? ヤッパリ手ジャン! 篭手には見えるけどこれ手だよ、取れないよ!? 何? スカルグ○イモンさんな俺ボディはやっぱり置いてかれたくなかったてか!? そんなラスボス的見た目でドンだけさびしがりや何だよ!!」


 その後、色々試したが、結局取れなかった…。しかも、この手さ、篭手に見えたとしてもなんか呪いのアイテムっぽい。せっかく見た目の問題解決したと思ったのに。


 一応、武器にも盾にもなりそうだし、全くのマイナスではないんだけどね。


 それとこの左手を見て、他のゲームのとあるキャラクター思い出したことにより、メインの武器も決定した。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名:----

種類:デスサイズ

スキル:【火炎属性付与】、【エナジードレイン】、【マジックドレイン】、【概念化】、【超重量化】、【頑丈Lv45】、【亜空間収納:特大】

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 長い赤い柄と、その先端には同じく赤く染まった弧の字の刃。所謂、デスサイズという、架空の処刑道具であり、ファンタジーやゲームの世界では、よく敵キャラが武器として使っている巨大な鎌だ。


 本来は、武器に適した物ではなく、扱いにくい上、構造上耐えられないのだが、そこはスキルさえ付けてしまえばこっちのもの、なにより、思い出したゲームキャラが使っているので、イメージがしっかりしてる分、下手な武器よりも強くなるってもんだ。


 それに、この武器は武器としての役割のほかに、大事な役割がある。【亜空間収納:特大】である。


 俺は、手に持った鎌をスキルを意識しながら、何も無いところで大きく振るう。すると、空間に切れ目が生じて、亜空間の入り口ができる。この中に、色んなものを突っ込めて、中のものを取り出すときは、もう一度使えば何処でも取り出せるという、便利スキルである。まぁ、ただのゲームの”道具袋”なんだけどね。実際にあったらかなりのチート道具である。




 そして、俺は、今まで作ってきた道具を全部、亜空間に突っ込んだ後、念の為に腰にショートソードをくくりつけてから、ゲートの前に立つ。


 旅立ちの準備はこれで完了だった。


 緊張で高鳴る胸を落ち着かせながら一息。最後に部屋を見回し、まだ八割方残っている俺ボディに別れを告げる。



「……いってきます」



 目をつぶり、ゲートに流れる魔力の流れに意識を傾ける。


 失敗するとは思わない。なんとなくうまくいく確信があった。きっとスキルがあるんだろう……そういえば、焦っててこの体のステータス確認してなかったな。無効についたら確認してみるとしよう。


 意識を集中して、軽くなった体を、魔力の流れに乗せる。


 そして、俺は……











 ……今、どこかの森の中にいる。

 

 どうやら、うまく成功したようだ。久しぶりに感じる清浄な空気の匂いが心地いい。


 しかし、此処は何処だ? ゲートを固定した場所では……コテイスンノワスレテタ。


 そういえば、つなげ直した後、直ぐに白○ンボディの製作して、そのままショックですっかり忘れてたな。出発前も結構いっぱいっぱいだったし。

 

 まぁ、いいっか……どうにかなるだろ。


 取りあえず、このボディのステータスチェックするか。ところで、自分自身のステータスってチェックできんのかね? 道具以外って、やったこと無いんだが、一応この体も作ったものだしたぶんできるよな?  


って、え゛っ……。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名:■■■■エシ■ノ

Lv:1

種族:魔王の影

職業:魔法使い

スキル:【ブレス:凍てつく吹雪】、【氷結操作】、【怪力:極大】、【邪眼Lv1】、【瘴気Lv1】、【超過魔術】、【次元魔術】、【転移Lv1】、【魔力掌握】、<変身:第二形態封印中>、<魔器練成:封印中>

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 ……………………え? 何これ??? 色々、突っ込みどころ多すぎるんだけど?





魔王の影って…………あれ? 俺って、魔王だったの?







 ――よしっ!




 とにかく、レベルを上げよう! ←現実逃避

これはひどい……。文章もひどいが、いつも使ってるPCが使えなくなったので、書いてるソフトが違うんですが、行間が見にくいのに気がつかなったせいで、凄いことに。練習用だからある程度はいいや精神で書き上げました。……さすがに少し修正。


取りあえず、生存報告的なものをなろうであげたいな~と思って、昔ドラクエでやりたかったネタをやって見ただけです。

魔王系TS少女の最強もの。

見た目はスペク○ラルフォースの爆炎のヒ○のコスプレをした、白○ンだと、思ってください。

ヒ○さんの姿でもよかったけど、どうせギャップ狙いの作品なので、少女化させたほうがいいかな~と。



あぁ、後ハーメルンにあちらの作品を三月初めには上げときますんで、そっち目当ての方は向こうでもよろしくお願いいたします。新話はまだ無いけど……。ただいま進行度約30%(新話と同時に移転とか言ってるからこのざまだよ)


取りあえず、前にあげていた話だけでもあげようとしたら、持ってきたハードに、1~5話が入ってなかったので3月1日にあげます。

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