第1章3話:エルフの兄妹
「何だ.今の」
いきなり,熊が真っ二つになる光景に俺達は呆然となるしかなかった.
すると,真っ二つになった向こう側から,
「”軍”はオレの獲物だ!熊ごときが邪魔すんじゃねえよ!」
と言いながら,斧を構える青年の姿がそこにはあった.
「で,お前ら死ぬ覚悟は出来たか?なあに,この斧を振り下ろせば,あの世行きだ.痛みなんか感じる暇もねえよ.じゃあな!」
と言いながら,その青年は斧を振り下ろし始めた瞬間に,ゴツッという音が聞こえて青年はうずくまった.
「兄様,この人達は”軍”の人達じゃないよ.服装が違いすぎるもの.たぶん”迷い人”だよ.お城に連れて行くよ.」
そして,青年の隣に右足を降ろす少女の姿があり,どうやら少女が青年の向う脛を蹴ったらしかった.青年は足を
さすって立ち上がると,
「何すんだ,サラ!もう少しで殺せるとこだったのに!邪魔すんじゃねえよ!」
「何言ってんの!殺したら駄目でしょ.迷い人が出たらまず父様の所に連れて行くって話でしょ.まったく,人間
を見るとすぐに”軍”って決めつけるんだから!」
と俺達が見ている前で口喧嘩を始めだした.しかし,すぐにサラと呼ばれた少女が再び青年の脛を蹴って強引に話
を終わらせ,
「みなさん,お見苦しい所を見せてすいません.アタシ,サラ・フォーカスと言います.あそこでうずくまってる
兄様はアルフレッド・フォーカスと言います.父様がお待ちしておりますので,どうぞアタシについて来てくださ
い.」
とまくし立てるように言った.
「どういうこと?”軍”とか”迷い人”ってなんなの?なんであなた達の父親が私達を待ってるの?それに・・・何で耳が尖っているの?」
と火凜もつられて言うと,サラは
「何でって,それはアタシ達はエルフですから.」
と言いにっこり笑った.
それが,エルフの兄妹,サラとアルフレッドとの出会いだった.




