第2章9話:フレイ
次の日,再び俺達はジェイガン武具店に集まっていた.
「昨日はあれで終わっちまったから,改めて紹介するぜ.俺はカイン.槍とかの長物担当だ.」
「儂はアベル.担当は剣中心の刃物だな.」
「僕はドーガ.斧とかハンマーの担当.」
「ゴードン,弓とか杖の木物担当だな.それに銃も俺だ.」
「・・・アラン.担当は・・・ナイフとか・・・短剣・・・鞘.後,装飾担当」
「フレイです.私は専門の担当は持っていなくて,兄さんたちの補佐をしています.」
と兄弟それぞれが改めて自己紹介と担当している武器を教えてくれた.
「で,お前らは何を求めてるんだ.」
とカインが尋ねてきた.
「私は剣を作ってほしいの!かなりリクエストあるから覚悟してよね!」
と火凜がいの一番に声を出した.
それにつれて,
「俺は槍だな.ちょっとした工夫をして欲しいんだ.」
「私は杖をもう少し軽くして欲しいの.」
「俺は今のでいいんだが,もっといいものがあったらそっちに変えたいな.」
「私も.」
と,圭介,美南さん,アル,サラの順で言っていく.
なので,俺も
「俺は,銃を作って・・・」
「えっとな,銃を使う奴とフレイ,ちょっとこっち来いや.」
と最後まで言えず,ジェイガンに呼び出された.
「何だよ.親父!銃ならこのゴードン様だろ!」
とゴードンが声を上げて抗議する.
「うるさい.他にも仕事があるじゃろ.黙って仕事しろ!他の者も!それから,おいフレイとそこの速くこっち今来んか!」
すると,それを上回る大声でジェイガンが怒鳴り,俺とフレイを店の奥まで連れて行った.
そして,フレイが部屋の扉を閉めると,
「座れ.」
と俺とフレイを部屋の中にある椅子に座るように促した.二人で座ると,ジェイガンは,
「昨日の紹介状を読んでな,なんでオラに頼んでくるのかが分かった.おい,お前名前は!」
と話だし,俺の名前を尋ねられたので,
「北嶺疾風だ.」
と答える.すると,
「ハヤテか.ハヤテ,宝玉持ってんだろ.そいつを出しな.」
とジェイガンが宝玉を出すように促された.俺は宝玉を出し,ジェイガンに手渡す.
「これが"ブリューナク"の宝玉か.これで銃を作るとか,最高じゃねえか.オラの体が万全ならな.」
とジェイガンは宝玉を見ながら顔を喜怒哀楽に表情をころころ変えていく.
「話が見えないんだけど?」
と俺が聞くと,
「ああ,すまねえ.嬉しくて意識がトリップしてしまってた.つまりはだな,この宝玉を加工して銃を作るんだ.」
とジェイソンが答える.
「この大きさで銃が作れるのか?」
と再び俺が聞くと,
「いや,正確には,宝玉で銃に必要な部品を作っていくんだ.もちろんこの宝玉だけじゃ足りないから,他の物も使うがな.後は,銃の装飾にもこの宝玉を使うな.」
と詳しくジェイガンが説明してくれる.
「それだけなら,あの場で言っても良かったんじゃないんですか?」
ただ,宝玉を見せて銃を作る説明だけならあの場で言っても良かった気がするので,一応聞く.
「ああ,ここからが本題だ.その銃を作るのは,オラじゃなくフレイが作るんだ.」
とジェイガンがサラッと答えるがその言葉に,
「え~!」
とそれまで黙っていたフレイが叫ぶ.
「そんな重要なもの扱うなんて私には無理だよ,父さん!第一銃を作るならゴードン兄さんが適任でしょ.私は武器をまともに作ったことないんだから!」
とフレイが抗議する.その言葉に,
「嘘つけ!お前,みんなが寝静まった後に,また起きてきて,カイン達が作った武器の補修してるだろ.作った武器の補修なんて相当武器のこと分かってなきゃできないんだよ.オラは体は不自由になっても目はまだ見えてんだよ.節穴だと思うなよ!」
とジェイガンが怒鳴る.さらに,
「そんなに不安なら証拠を見せてやる!ハヤテ!そこの棚に2丁の銃があるだろ!その中で一番手に馴染むものを選べ!」
とジェイガンが指差した棚の中を見ると,確かに2丁の銃があった.俺はその銃を手に取って手に馴染むものを選んでいく.すると,その中の一つが驚くほど手に馴染んだ.
「こっちがいいな.驚くほど手に馴染む.」
と俺が手に馴染む方を上にあげると,ジェイガンは満足げに微笑み,
「ほら見ろ.その銃は一丁はゴードンが作ったもの.もう一つはゴードンが作り,フレイが補修したものだ.分かるかフレイ.お前はすでにゴードンを抜いてるんだ.この際だから言ってやる.お前は兄弟の中で誰よりも筋がいい.オラを超えるくらいにな.だから,この仕事はお前がやれ!」
と最後の方はフレイを諭すように言った.フレイは宝玉とジェイガン,2丁の銃をそれぞれ見ながら,
「少し時間を下さい.」
と部屋を出て行った.そして,フレイが部屋から出ていきしばらくすると,
「はあ~.すまねえ,ハヤテ.失敗しちまったかも.」
とジェイガンが溜息をついて言った.
「どういうことですか?」
その言葉に意味が分からず尋ねる.
「いやな,あいつは兄弟の中で誰よりも才能がある.それに関しちゃ間違いねえ.ただ,あいつは自信がねえんだ.だから,自信を持たそうとしたんだ.」
その言葉でも意味が分からない.
「つまりだな.ハヤテ,2丁の銃の内お前が選んだほうあるだろ.それ実はオラが補修したんだ.それがばれちまったみたいだ.」
「なんでそんなことしたんですか!」
と俺が怒る.
「いや,あいつが補修したものは昨日の内に全部売れちまってよ.そこで仕方なくな.すまん.」
とジェイガンは小さくなる.
「でも,それほどあいつの腕はすごいんだぜ.」
とジェイガンは言うが,俺は扉を見て,フレイが戻ってくるのをただ待つしかなかった.




