第2章8話:ジェイガン
「申し遅れました.私,ジェイガンの息子の六男のフレイ・バスターです.」
とそのドワーフは言った.そして,
「そうですか.オレルアンさんの紹介で父を・・・」
とスルーズに来た理由を店に行くまで話していく.そして,俺達が話終えると,
「でも,せっかく来てもらっても皆さんが望む物を作るのは難しいかもしれないですね.父は体を壊してしまって,ここ2,3年まともに武器を作ったことがないですからね.その間,僕ら息子が武器を作ってたんですけど,二皆さんが求めるのは父のものばかりで・・・.それでも,6人で武器を作って売って.今日も武具を売りに行って今日は何とか売り切ることができて.あ,着きました.ここです.」
と,フレイはある一軒家の前で立ち止まる.
「此処?」
と,火凜が疑問を持つくらいその家はさびれていた.
「ええ.この3年で私達ジェイガン武具店はこのように落ちぶれてしまって,今年黒字を出せなければ廃業してしまうんです.」
「「廃業!?」」
「ええ,師匠と弟子の家が離れているって言いましたよね.先程は言いませんでしたが,師匠の地位になってもそれだけじゃ終わらないんです.師匠になっても,他国などで知名度や売上が上がれば,より頂上に近い所に工房を移すことができるんですが,反対に知名度や売上が下がれば逆に麓近くに工房を移さなくてはいけないんです.そして,その工房が師匠と弟子のちょうど境目の位置になった次の年に赤字を出した場合,その工房に入っている店は廃業になるんです.それが今年はジェイガン武具店で,このままいくと今年も赤字で廃業間近なんです.」
とフレイは溜息をつきながら言った.
「ともかく,父と家族を紹介しますね.中に入ってください.」
そして,フレイは俺達を店の中に案内する.店の中は何もなかった.
「ただいま,父さん.父さんにお客さんだよ.」
とフレイが先頭で中に入るとカウンターに厳格そうな白髪のおじいさんが座っていた.
「ん?」
「ん?じゃないよ.父さんの知り合いのオレルアンさんの息子さんがわざわざ訪ねて来てくれたんだよ.」
「おう,ルアンの倅か大きくなったの.レアンは元気か?」
とおじいさんはアルの方に向いて言った.
「ああ,親父は元気だぜ.でも親父といつ知り合ったんだ?」
「レアンとはミーミルに行く森の中で何度かあってな.それで一緒に野宿したり,ミーミルに行ったりしてたんだ.あのころはオラはまだ弟子で,師匠が作った武具を売り歩いてたんだ.それで,オラが師匠になったら一番にレアンに武器を作ってやるって言ってな.た~のしかったな,あの頃は.毎日が夢に満ち溢れてな.それが今となっちゃこれだ.」
と右腕を見せる.その右腕は震えていた.
「一遍,倒れちまってよ.命だけは助かったんだが,体にしびれが残っちまってよ.うまく武具を作れなくなっちまったんだ.」
とジェイガンは続けて言った.
「悪いな.レアンやその倅の息子の願いは叶えてやりてえんだがこれじゃ無理だ.いい奴紹介するから他当たってくれや.」
と最後にジェイガンは残念そうに言った.
「ちょ,待てって.親父の要件それだけじゃねえんだよ.まずこれを見ろって.」
とアルは言い,紹介状をジェイガンに投げる.
「それに,俺らはあんたの店以外に頼むつもりはねえんだよ.」
「どうする気なんだ?」
と俺がアルに質問する.
「俺らは言葉は悪いが金ならあるだろ.だから,練習させるんだよ.それで,その中で一番よくできたものを貰っていくんだ.それに,失敗したものでも,店の中に何かあるとそれっぽく見えるだろ.」
と答える.
「それは,」
とフレイが言うと,
「それははなしだ.困ったときはお互い様だろ.でも容赦はしないぜ.俺たちが気にいるのができるまで何回もやり直しさせるからな.覚悟しとけよ,フレイ.」
「分かりました.」
とフレイが覚悟を決めたような目で頷いた.
「で,他の奴らはまだなのか?」
とアルが言うと同時に,
「ちっ,今日も売れ残っちまった.まったく嫌になるぜ.」
「俺もだ.」
「俺も.」
「以下同文.」
「短剣だけは売れたけど,長剣がな,のこっちった.」
と5人が店に入ってきた.
「「なんだ客か?珍しいな.」」
「あ,兄さん.今兄さんたちの話をしてたんです.みなさんこちらは,僕の兄さんたちで上からカイン,アベル
ドーガ,ゴードン,アランです.
それから,兄さん.こちらがアールヴヘイムのオレルアンさんの息子さんのアルフレッドさんと娘のサラさん,それに,アルフレッドさんの友達のハヤテさんにカリンさん,サキさんにケイスケさん.
アルフレッドさん達は,武具の購入に父さんを訪ねて来たんだけど,私達の現状を聞いて,資金提供もしてくれるんだって.」
とフレイが言った.
「ほんとか」
と,その言葉に兄弟達が盛り上がり,
「じゃ,下に降りて食材買ってくるぜ.今日は宴会だ!」
と言って5人が降りていき,その日はその後宴会で終わった.




