第2章7話:魔法陣と2人のドワーフ
「ここね.」
全員が揃うと火凜がそう言いながら,一番に入っていく.
その後ろにサラ,アル,美南さん,俺,圭介と続く.
「ああ,中にドワーフがいないか?そいつがスルーズの門番だ.」
と火凜の後ろを歩くアルが言い,火凜がすぐに,
「いたわ.」
と門番を見つけ,全員で門番の所によっていく.
「通行証を.それとここに来た要件は何だ?」
と門番がぶっきらぼうに尋ねた.俺達はリストバンドを見せ,
「ジェイガンを尋ねて来たんだ.親父の知り合いでな.これが紹介状だ.」
とアルが代表で言い,紹介状を見せる.
「(あの老いぼれにまだ客がいるとはな.)まあいい.通っていいぞ.しばらく行くと,俺たちの仲間と魔方陣があるから指示に従え.」
通行を許可されたが,一瞬,侮蔑を込めた目と何か小声で言われた気がした.
「なあアル,ジェイガンさんって偉いんじゃないのか?なんか侮蔑を込めたような目で見られた気がしたんだが.」
と俺はアルに尋ねた.
「さあな.偉いとは思うけど,親父の知り合いだからな.あまり信用はしない方がいいかもな.ともかく行ってみりゃ分かるさ.」
と俺とアルの話が一段落ついた所で魔方陣が見え,そこにドワーフが2人いた.そのうちの一人が,
「来たか.おいお前らさっさと魔方陣の上に乗りな.そいつと一緒にスルーズに送ってやるから.」
ともう一人を指差しながら,俺達を魔方陣の上に乗るように促した.
「速くしな!ただでさえあんた達が来るのを待ってたんだ.スールズから出る奴らが速くしろって私らせっつかれてんだよ!」
と俺達がもう陣の上に乗っているにもかかららず,そのドワーフは言葉を続けた.
「全員乗ったね.じゃ,なるべく一塊になっておくんだよ.他の所に飛ばされても私ら責任持たないよ.ほら,行くよ.5・4・3・2,行け!」
と,大事なことをサラッと言われたかと思うとカウントダウンが終わらないままに飛ばされ,急に浮遊感が襲ってきた.
「とりあえず,塊って,手を繋げ!」
圭介が大声を出し,俺達とドワーフは手をつないで輪になった.すると,すぐに浮遊感がおさまり,俺達は地面に着地する.そして,周りを見ると,真上にだけ空が見え,その周りは高い岩壁で囲まれていた.
「ここがスルーズ.」
と美南さんが呟き,火凜が,
「空が高くて,周りが岩で囲まれているのね.でもここにいる人達はどうすんでいるの?」
と尋ねた.
「ああ,この岩壁の螺旋状に家を建ててそこに住んでいるんだよ.立場が偉い人や有用な発明や武器を作った人は頂上に,見習いや普通に住んでいる人は麓付近に住んでいるはずだ.」
とアルが火凜の質問に答える.
「何で偉い人が頂上で,見習いが麓って分かれているんだ?同じところに住む方が効率良いだろ?」
と圭介がさらに質問する.
「それはだな.・・・それは.」
アルは今度は答えに困っているみたいだった.すると,
「それはですね,見習いは師匠の世話をする必要があるからですよ.見習いは朝起きると,麓で師匠の食料やその日に使う材料を仕入れて師匠の所に向かうんです.見習いは体力と忍耐が必要ですから,毎日の山登りによってその二つを鍛えられるんです.それに,上に向かうことで自然に向上心も養っているんですよ.反対に師匠は,上にいることでここまで積み上げてきた地位を忘れないようにするみたいですね.それに自分を選んで来てくれるお客様にも素直な感謝の気持ちを述べられるようになるみたいです.」
と,一緒にいたドワーフが圭介の質問に答えた.
「すいません.そこのエルフの方が回答に困っていたみたいなのでつい口が出てしまいました.」
「いや,助かったよ.それと一つ聞いていいか.ジェイガンって人の家を探しているんだけど,知らないか?」
とアルが感謝の言葉を言い,ジェイガンの家を尋ねた.
「知っていますよ.ジェイガンは私の父ですから.」
とそのドワーフは答えた.




