第2章6話:洞窟
「やっと,ついた.」
と俺はスルーズがあると言われている山を見上げながらしみじみと呟いた.
「まったくだ.でも,まだここはスルーズじゃないぞ.もう少し歩かないと.」
とアルが同意しながらも補足する.すると,
「へえ~,まだあるんだ.でも情けないわね.ちゃんとしなさいよ,あんたら.」
と火凜が上機嫌で言った.その言葉に少しむかつきながらも
「お前,あんなことがあって,何でまだそんなに元気なんだよ.周り見てみろよ.みんなへとへとなんだぞ.」
と俺は言った.
「仕方ないわね.じゃ,あのあたりで少し休憩しましょ.」
と火凜が少し先にある岩場の辺りを指差した.その言葉に俺達は同意し,その岩場まで歩き,腰を下ろした.そして,休憩しながら火凜が,
「でも,これすごいわね.あれだけ動いたのに,汚れすらついてないんだもの.」
とオレルアンから貰った服を触りながら言った.
「それは,さっきの奴らは魔力を持ってなかっし,"強化"していたからよ.人や魔力を持っている獣だったら服くらいすぐ破けるわ.魔力を"付与"すれば元に戻るけど,そんな余裕がない時もあるから,一応は気を付けておいたほうが良いわよ.私達は女なんだから.」
とサラが返す.
「ところで,アル.ここからどうやってスルーズに行くんだ?とりあえず3つ連なっている山を目指せって言うから,ここまで来ただろ.」
とその横で圭介がアルに質問していた.
「ああ,この傍の洞窟にある転移魔方陣から行くんだ.」
と質問に対してアルが答える.
「スルーズはあの真ん中の山の中なんだよ.昔英雄の内の一人がこの辺りに村を作ろうとしたんだけど,この辺は獣が元々多いし,端の山は当時は火山で噴火することも多かったんだ.だから,何でそんなことを思ったのかは分からないけど,山の中に作ればいいだろってことで,真ん中の山をくり抜いて村を作ったんだ.だけど,村を作ったのはいいけれど,村を出るには山を下って,帰るには山を登らなきゃならないだろ.だから,不便でな.それでも昔の人達は毎日村の出入りに山登りをしていたんだけど,だんだん人数が減って行ってな.それで,どうにか楽に入ることができないかって研究ししだして,ある時,一人のドワーフが転移魔方陣の基礎を作ったんだよ.でも,当時ある材料では強度が足りなかったり,その理論を完成させるには不完全なものが多かったりして,それからは他のドワーフがその魔方陣を完成させるために知恵を出し合ったんだよ.その甲斐あって魔方陣は完成し,村への出入りが楽になったから栄えると同時に,技術も進歩してついには職人の町と呼ばれるようになったというわけさ.で,その魔方陣を探さなきゃ俺らは昔よろしく山登りってね.」
と,簡単にスルーズの歴史を交えながらこれから行く所を説明してくれた.
「だけど,その洞窟の場所までは知らないんだ.だから,ここからは少し手分けするぞ.槌が彫られている洞窟を探してくれ.そこが魔方陣のある洞窟だ.その洞窟が見つかったら,魔法球を上空に上げてそこに集まるってことでいいだろ.」
とアルが続けて言った.
「じゃ,そろそろ休憩はおしまいにして行くぞ.」
と言いながらアルが立ち上がったので俺達もそれに続いた.
そして,俺達は手分けして洞窟を探しだした.その後,10分後ぐらいに白い魔法球が上がったので,上がった場所に行くと,サラと槌が彫られている洞窟がそこにはあった.




