第2章3話:森蜂
俺達6人はオレルアンと別れて歩きだし,城を出た.そして,来た方向とは逆に湖を船で渡る.
そして,しばらく歩いた後,
「そういえば,ここで出会ったのよね.」
とサラが唐突に言った.俺達はよく分かるなと感心しながら,サラの方を見ると,そこには,血の跡と頭蓋骨が半分に分かれている骨があった.
「あの時はこいつらを殺そうとしてたのに,今は一緒に歩いてるんだなんて,時が経つって早いんだな.」
今度は昔を思い出すようにアルが言うが,その言葉にアル以外は吹き出した.
「兄様,時が経つのが早いって,まだ半月も経ってないのよ.」
とサラが笑いながら言う.その言葉に
「うっさい!黙れ!」
とアルは真っ赤になって怒鳴った.しかし,その態度に余計にその場は笑いに包まれた.その様子にアルは何かを言うのを諦めた.そして,最後まで笑っていた火凜とサラの笑いが止んだころに,
「もういいだろ.じゃ行くぞ.」
とアルが言い,先導し出す.そして,場所を示す矢印が表れるまで,森の景色から道順を覚えながら,あまりしゃべらずに歩き続けた.
「ここを左に行きゃミーミルで右に行ったらスルーズだ.右を見てみろ.あの三つ連なってる山が見えるだろ.まずはあそこを目指すぞ.」
と,アルが矢印の説明をしながら,行き先を示す.
そして,またしばらく歩くと,火凜が木の傍にぶら下がっている蜂の巣を見つけた.
「ねえ,アルあれ何?」
と火凜が聞くと,
「あれは,森蜂の巣だな.森蜂の蜜はうまいんだけど,あの蜜を取ろうとすると・・・」
とアルが説明していたが,「うまい」と聞いた時点で火凜はその巣に向かって走り出し,右手から小さい火を出し,枝と巣を分離させた.
「おい,何やってんだよ!」
とアルがあわてて駆け寄っていったが,
「だって,おいしいんでしょ.それに蜂蜜だったら保存も効くからちょうどいいじゃない.」
と火凜は悪びれずに言った.だが,アルは
「保存も効くじゃない.森蜂は蜜を取ろうすると,この辺り一帯の獣を呼び寄せるんだよ!だから,それなりの装備がいるんだ.武器を持ってない奴2人もいて何とかなる状況じゃないぞ!」
と怒鳴る.
「でも,もう遅いみたいよ.」
と火凜に言われ,アル,そして俺達の順に後ろに振り向くと,そこには俺達がこの世界に来て始めに出会った熊が3頭,そして,見たこともない蝙蝠が5羽や狐が10匹,猿が30匹もいた.
「血熊と黒蝙蝠,森狐に狼猿まで.最悪だ.」とアルが頭を抱えたが,すぐに頭を上げ,
「サラ!蜂を全部潰せ.その後に全員を援護しろ!,サキは蝙蝠を頼む.羽を氷で貫け!その後は狐を頼む.カリンはサキが来るまで狐を牽制しろ.その後,サキと協力して狐を倒せ!ハヤテは猿だ.カリンと同じように俺と圭介が行くまで牽制だけでいいが出来る限り倒してくれ!ケイスケは俺と共に熊だ!いいか,気を抜くなよ.これだけの数だ.抜いた瞬間に死ぬからな!」
とアルが指示を出し,戦闘が始まった.




