第2章1話:スルーズ
目を閉じて意識を体の中心に持っていき,魔力を意識する.そして,目を開けて右手に銃が現れることをイメージ.
「"風"よ,右手に集まり風銃を呼び起こせ!"風銃召喚"」
と詠唱するが,右手に銃は現れなった.
「これでもないのか,どうやったら,風銃"を出せるんだ?」
あの日は,火凜達の所に行ったはいいが,魔力が全回復していないということでサラに止められ,魔法を使えなかった.そして,魔力が回復するまで2日間,サラに徹底的にマークされ魔法を使う暇がなかった.そして,3日目,つまり,今日,やっとサラにお墨付きをもらい,俺は見たことがなかった,風銃を呼び出そうと詠唱した.ところが,銃は現れなった.もちろん,宝玉は手に持っているにも関わらずだ.その後,詠唱が違うのかと思い,様々に詠唱を変えながら呼び出そうとしたが一向に成果は出なかった.
「詠唱の問題じゃないのではないかい?」
そこに,オレルアンが現れて言った.
「どういうことですか?」
と俺が,尋ねると,
「単純に言うと,君の魔力量が足りないんじゃないかな?君はゼロからブリューナクを呼び出そうとしてるだろ."創造"はね,自分の魔力以上のものは作り出せないんだよ.だから,何も現れないんじゃないのかな.ためしにブリューナクじゃない銃を呼び出してみたらどうだい?」
と答えた.
「分かりました."風"よ,右手に集まり銃を呼び起こせ!"召喚"」
そう言うと,右手にあの遺跡で使った銃が作り出された.
「あ,出来た.」
「やはりね.ハヤテ君,それで弾を撃って見て,君は自分の魔力で何発撃てるかを知ってるかい?知らないといざというう時に魔力切れを起こすかもよ.」
と俺が喜ぶとオレルアンは俺に釘を刺す.
「分かりました.やってみます."風"よ,銃の中に弾を創造せよ!"風弾生成"」
と弾を造りながら弾を空に向かって打ち続けた.
10発ぐら撃ったところで少し,体が重くなり,弾を生成する速度が落ちた.
「じゃ,一発だけ,ブリューナクが使った技をやってみようか."音速弾"は出来るかい?」
とそこにオレルアンが言う.
「分かりません.でも,イメージは教えてもらったのでできると思います."風"よ,音と共に空を穿て!"音速弾"」
と俺が言い,音速弾を撃つ.すると,弾を撃つと同時に銃が霧散し,頭の上まで持ち上げていた腕が下がった.
しかし,その代り,雲に裂け目が出来ていた.
「すごい威力だね.でも,銃を創造してから弾を撃ったなら,普通に撃って15発,技なら3発で魔力切れを起こしそうだね.これじゃ,とても実戦じゃ使えないね.」
と結果に対して,冷静に分析する.そして
「でも,ちょうどよかったよ.ハヤテ君,執務室に来てくれるかな?後カリン君達とアル,サラも呼んできてほしいんだけど.僕は少し準備があるから先に行って待ってるね.」
と言い,俺が返事を返すと去って行った.そして,俺は模擬戦をやっていた圭介とアル,その模擬戦を見ていた火凜とサラ,そして,"氷","水"で作った球を"風"で操って"創造"と"放出"の練習をしていた美南さんを見つけて,オレルアンが呼んでいる旨を告げ執務室に連れて行く.
「ちょうどいいタイミングだね.今準備が終わった所だよ.」
とオレルアンは,地図を広げながら言った.
「それで,用ってなんだよ.親父.」
とアルが言うと,
「ああ,神器の場所が分かったんだよ.」
と答えた.
「ど,どこだよ.」
とアルが,せかすように言う.
「ドワーフの国,スルーズだよ.でも,この国の中のどこにあるのかとどんな神器があるのかまでは分からな買ったんだ.この国出身の英雄がいて,悪魔を封印した後にこの国へ帰ったところまでは,分かったんだけど.」
と答え,
「どうする?もう少し時間をくれれば,神器までは特定できると思うんだけど.あまり,時間をかけるとミッドガルドの奴らに取られるかもしれないだろ.」
と続けて言った.
「ああ,そこまで分かれば十分だ.親父は他の神器のありかを調べてくれよ.俺達は行って,その神器を回収してくるから.」
とアルは言う.
「そうそう.それでねハヤテ君達にも話があるんだよ.アルは君たちがもう行くものだと決めつけているが,本当に君たちはそれでいいのかい?別に君たちの国じゃないから強制はしないよ.嫌なら断ってくれても全然かまわないんだよ.」
とオレルアンが俺達を気遣って言う.そこに,
「行くわ.だって,神器を探すなんてわくわくするじゃない.それに疾風だけ神器が使えるなんて気にいらないわ.」
と火凜が言い,
「ああ,それには同意見だ.それに俺は前の時に何もしてないから,今度は何かしたいんだ.」
と圭介が同調し,
「私も,出来ることを何かしたいの.」
と美南さんも賛成する.俺も,
「前にアルに助けてもらったから,今度は俺がアルを助ける番だしな.それに,他の国に行けば,神器だけじゃなくて元の世界に戻る方法も分かるかも知れないし.」
と言い,
「だから王様,私達も行くわよ.」
と最後に火凜が宣言した.
「それは助かるんだけど,カリンとハヤテは今武器がないのにどうするの?」
とそこに冷静にサラが尋ねる.
「それについては考えてあるよ.スルーズは別名職人の国だからね.これを持っていくといきなさい.」
と言って,火凜に封筒を渡した.
「これは?」
と火凜が尋ねた.
「その中には手紙が入っていてね.スルーズでジェイガンを探して渡すといいよ.ジェイガンは僕の昔の友達でね.僕も昔,彼に武器を作って貰ったんだよ.」
と言って,執務室の椅子の傍にある方天戟を目でさした.
「僕は彼ほど手に馴染み使いやすい武器を見たことがないよ.だから,君たちにピッタリの武器を作ってくれるはずさ.」
とオレルアンは言った.そこに,
「ねえ,王様.これだけ用意がいいってことは,王様も私達が断らないって前提で話を進めてたわね.」
と火凜が少し目を吊り上げながら言った.
「王様はね人の心が分からないとやっていけないんだよ.一つ賢くなっただろ.それに,僕はハヤテ君にはちゃんと言っていたよ.ちょうどよかったってね.」
と少し笑いながらウインクした.
「は・や・て」
そして,火凜は怒りの対象を俺に変え,俺の胸ぐらを掴んだ.その様子にみんな笑っていた.




