第1章23話:半人
あのね,この世界で別の種族同士が子供を産むと両方のいい所を受け継いで産まれてくるんだ.エルフと人間なら,魔力や寿命はエルフ,体の強さや器用さは人間っていう風にね.
もちろん,そんなのは人それぞれなんだけど,違う種族同士で産まれた混合種の方が能力が高いって言われてるんだよ.誰がいつ言ったかは知らないし,僕たちはそんなこと考えてもなかったけどね.純粋に子供の幸せだけを願っていたんだよ.でもね,その混合種の中には稀に悪い所を受け継いで産まれてくる子供がいて,それを半人と呼んでね,アルがその半人なんだよ.
ハヤテ君は僕の魔法とアルの魔法を見たんだよね.普通親子は片親の属性を持つから,僕らの場合は"光"属性を受け継がないといけないんだけどね.アルは"雷"属性だっただろ.アルの場合は身体的特徴と器用さはエルフで,魔力と体の強さは人間に近かったんだよ.だから,アルの魔法は"雷"なんだよ.
もちろん,アルが"光"属性を持たなくても僕らには関係なく,たっぷり愛情をもって育てた.
だけどね,心のない人はどこにでもいるんだよ.
あれは,サラが産まれたころだったかな.ミーミルにね,家族で行ってたんだよ.たまにはミーミルの王様に親孝行したいってサーシャが言ってね.それで,謁見の間で王様にサラとアルを見せていたときにね,
「誰が来たかと思えば,粗暴なエルフに,裏切り者の姫,そしてその子供の半人か.まったく,森の中でいればいいものの,こんなところまで出てきて.獣臭くてかなわんわ.」
って言われたんだよ.そいつはミーミルの大臣でね.サーシャの話だと,僕とサーシャが出会わなかったら,サーシャはそいつと結婚して次期王になるはずだったんだけど,僕と結婚したからその話がなくなったらしくてね.よほど僕のことが嫌いだったんだろうね.そのことを僕らは分かっていたし無視したし,王様もその大臣に言動のことで注意してその場は収まったんだよ.だけど,アルには"半人"っていう言葉が重くのしかかったらしくてね.
アールヴヘイムに帰ったあたりから急に塞ぎ込むようになって,原因を聞いたら,
「お父さん,僕って出来損ないなんだよね.だから,僕,お父さんと同じ魔法が使えないんでしょ.」
って言うんだよ.僕らは,
「アルは出来損ないなんかじゃない.僕らの大切な宝物だよ.例え,同じ魔法が使えなくたって僕らはアルのことを嫌いになったりしないから.」
って言って慰めたんだけど,聞かなくてね.後,運の悪いことに,その後すぐにサラが"光"属性を持つことが分かって,ますますアルは塞ぎ込んでね.聞いてないから分からないけど自分はいらない存在なんだって思ったのかな,部屋からも出て来なくなってね.そんなアルを無理矢理サーシャが外に連れ出したときに悲劇が起こったんだ.
サーシャがアルを森まで連れて行ったときに武装した盗賊が出てきてね.恐らく,その盗賊は,ハヤテ君たちが見つけた遺跡に行こうとしてたんだろうね.
「おい,殺されたくなかったら,お宝のあるところを教えろ!」
って脅してきたんだよ.もちろん,そんなとこなんて知らないから,
「嫌よ.」
ってサーシャは断った.すると盗賊が,
「じゃ,お前の体を貰うぜ.」
って言って襲い掛かってきたんだよ.サーシャはそいつを難なく倒したんだけど,その盗賊は集団で行動してたみたいでね.その後,30人ぐらい出て来たんだよ.
そうすると,サーシャも手におえないからアルに僕を呼ぶように頼んで逃がしたんだよ.でね,アルがその後,僕のとこに来て,すぐにサーシャを助けに行ったんだ.
「サーシャ,無事か!」
「ええ.」
助けに行ったときサーシャは傷を負いながらもまだ戦っていて,その周りにま盗賊たちも半分ぐらいは倒していたんだよ.
「んだ,てめえは!おめえはお呼びじゃねえんだよ!」
すると,盗賊たちは僕の方に襲い掛かってきて,流れ矢が当たってね.
「"光"よ,この者たちを塵に変えよ!"光塵"」
それに,僕はキレてね,その盗賊たちを塵にしたんだよ.話がそこで終わったらよかったんだけど,僕が当たった矢には毒が塗られていてね.僕は平気だったんだけど,サーシャはその矢が原因で亡くなったんだ.
それからだよ.アルが変わったのは.部屋から出てくるようになったのはよかったんだけど,人間を毛嫌いするようになってね.それと,一日中鍛錬をするようになったんだよ.
大きくなってから,聞いたら,
「人間はすぐ死ぬし,集団か権力を持たないと行動を起こさないし,すぐに弱者を馬鹿にするから嫌いだ.でも,そんな奴らに何もせず負ける自分はもっと嫌いだ.」
ってね.アルは,サーシャが死んだのは自分のせいだって思ったみたいだけど,今までと違って逃げなかった.同じ状況になったら,今度こそ助けるって.自分だけ逃げるようなことはしないって.自分が今持てる力を全部出して守るんだって,思ったんだって.
だから,自分が持ってる力を出さないハヤテ君がむかついたんだろうね.だけど,それに悩んでいるハヤテ君もほっとけなかったんだろうね.そうじゃないと,アドバイスというか発破かけたり,君たちを助けに行ったりしないよ.
そこまで,聞いてアルの行動の意図が分かった.
「じゃ,急に呼び名を変えたのは.」
「うん,ハヤテ君がトラウマを克服したことによるアルなりの勲章だろうね.」
と言ってオレルアンは笑った.
「そんな息子だけど,これからもよろしく頼むよ.」
と言い,俺は,
「ええ,こちらこそ.理由も分かったことだし,俺は火凛達の所に行きますね.」
と言って部屋を出た.
そして,中庭に行くと,火凜達の他にアルとサラもいた.俺はそこに行き,
「火凜,俺もう銃から逃げないよ.人を傷つけるのはまだ怖いけど,何もしないでみんなが傷つく方がもっと怖いんだ.だから,俺は銃を使ってみんなを守るから.」
と宣言した.
その言葉に火凜は涙し,圭介は俺の頭をぐしゃぐしゃにし,美南さんは俺に笑顔を向けた後,火凜を慰めに行き,サラは何が何だか分かってないみたいだったけど,大きく頷き,アルは俺に近づき背中を叩いた.
とりあえず1章完です.この話は迷走している感がありますがご容赦ください.
まさか,1章書き上げるのに約1年かかるとは思わなかった.小説書いてる皆さんすごいです.
さて,この話はこれからも続けますが,私の小説の書き方はストックを作らずできた端から更新するスタイルなので,これからもまちまちに更新していきます.
後,読み返してはいますが,浮かんだアイデアをそのまま載せているので,辻褄が合わなくなったらごめんなさい.
これからその点については指摘して頂けると拙い文章力ですが何とか修正したいと思います.
それでは,これからもご付き合いください.




