第1章18話:神器
3人が穴から出ると同時に遺跡が崩れ落ちた.
「危なかったの.」
とブリューナクは悪びれず言った.
「お前!そんな軽く言いやがって.」
とアルフレッドがブリューナクに詰め寄る.
「まあまあ,そう怒りなさんな.儂が祭られた遺跡を儂が壊したんじゃから.何も問題ないじゃろ.」
と,ブリューナクはアルフレッドを躱しながら言った.
「そういう問題じゃ.で,何でそのブリューナク様がハヤテの体の中にいるんだ.」
と呆れながらアルフレッドが尋ねる.
「そうじゃった.儂が目覚めた理由を話さねばの.儂らの肉体は雷坊やが知っているようにもうこの世にはないんじゃが意識だけは,宝玉の中に込められておっての.この世に災いが起きた時に目覚めるようになっておったんじゃよ.」
「災いって何?」
とブリューナクの答えに対して,火凜が尋ねた.
「誰かが悪魔を目覚めさせたんじゃよ.」
「悪魔だって!」
アルフレッドがうめく.
「そうじゃ.儂らが厳重にかけた封印が近頃破られた.雷坊や何か知らんかの?」
「知らねえよ.そんなの,最近ミッドガルドがアールブヘイムや他の国に侵攻し始めたぐらいしか聞かねえよ.」
「ふうん.ミッドガルドか.そこはスヴァルトに近かったの.」
「ねえ,スヴァルトって.」
「儂らが悪魔を封印した場所じゃ.そこに,ギンヌンガガップっていう裂け目があってのそこに封印してたんじゃ.手がかりがそれしかないのはちと痛いの.」
「悪かったな.」
「まあ,それは仕方ないの.儂が目覚めているということは他の神器も目覚めてるはずじゃ.雷坊や!嬢ちゃん!うぬら,他にも仲間がいるじゃろ.じゃったら,他の仲間と共に宝玉を探して武器に使え!儂はこの小僧との適合率が高かったから何とかなったが,他の者はそうもいかんかも知れんからの.その時に,うぬらの中に儂らの適合者がいないのなら,仲間も共にじゃ!」
「適合者ってどうやったら分かるんだよ!」
「それは儂にも分からん.儂がこの小僧を気にいったのは面白そうだと感じた直感だけじゃしの.まあ何とかなるじゃろ.それじゃ頑張れよ.そろそろこの小僧に体を返さねばの.
そうそう,儂の意識は玉の中に戻るが,もうそうそう出て来れんからの,さっき儂が使った技を小僧に教えてやってくれんかの.一度この体で使った技じゃからうまく行けば使いこなせるじゃろ.それじゃあの.」
と3人で会話した後,ブリューナクは意識を宝玉の中に戻した.そして,疾風がその場に崩れ落ちかけたのでアルフレッドが受け止めた.
「おい!ブリューナク!」
と疾風の体を揺さぶるか,返事をしなかった.
「ちっ.これはもう意識を戻したってことか.カリン,こいつは俺が背負うから城に戻るぞ!」
とアルフレッドが言い,アルフレッドは疾風を背負って走り出し,私はその後をついて行った.
すぐに城が見えてきて,アルフレッドは疾風の部屋に疾風を寝かすと王様に今起きたことを説明しに行き,私もさっき起きたことを沙希と圭介に話した.
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その頃,遺跡では,何かが土煙の中から出てきた.
「許しませんよ.半人,ブリューナク!,坊や.覚えておきなさい.いつか復讐してやりますからね.」
とカミーユが煉瓦を手で握りつぶしながら苦々しげにつぶやいた.




