第1章15話:初戦闘
「何?意識を失うと警告音が鳴るの?この人達の装備.」
「分からん.でもとにかく急いで逃げるぞ!」
と言い,俺達は走ってその場を立ち去った.
しかし,三叉路の分かれ道の片方の奥には赤い色が見えたので,それを避けるように移動したにもかかわらず,元の場所に戻ってきてしまった.
そして,気付いたころには30人以上の軍勢に囲まれていた.
「お前たち,何者だ!何処からここに入った!こいつをやったのはお前らか!」
とその中のリーダー格の奴が言いだし,俺は,
「い,いや・・・」
と言い訳を言おうとしたが,
「まあいい.拘束しろ!」
と言われてしまった.
その言葉を合図に俺達を囲んでいた軍勢が一気に詰め寄ってきた.
「火凜!とりあえずやるだけやるぞ!」
と火凜に声をかけ,"強化"を自身にかけながら,弓を構えて相手の武器の持ち手を狙って手当り次第に矢を射った.そして,火凜は剣に"付与"を行い,武器を落とした奴らから優先的に鞘に納めた剣をぶち当てていった.
最初は何とか奮闘し,戦闘の均衡を保っていっていた.しかし,軍勢の数人が,
「"火"よ,燃え盛り奴らを滅せ!"篝火"」
「"風"よ,奴らを切り裂け!"鎌鼬"」
のように"放出"と"創造"を組み合わせた攻撃を行ってきた.俺達はそれらを回避する方法が思いつかず回避するしかなった.すると,その動作から
「あいつら,"放出"と"創造"は使えない出来損ないどもだ.もう近寄るな.離れて攻めろ!」
と俺達が"放出"と"創造"を使えないことがばれてから一気に均衡が崩れた.
俺達が攻撃しようと近寄ると軍勢は遠ざかり,逆に遠ざかると攻めてきた.更には,
「"土"よ,かの者の矢から我らを守れ!"隆起"」
と,矢での攻撃も"土"属性の魔法によって防がれ,なすすべがなくなった.そして,次第に傷が増えていき,俺と火凜はついに壁際まで追い詰められた.
「ここまでだな.こいつら,手間かけさがって.」
とリーダーが,俺達に改めて近寄ってきた.
「"雷"よ,この場に降り注げ!,"落雷"」
と声が聞こえたかと思うと,雷が部屋中に降り注ぎ,俺と火凜以外の人がその場に崩れ落ちた.
そして,
「お前ら,何やってんだ!無茶にもほどがあるだろ!"放出"と"創造"も使えないのに軍と戦うなんて!」
と,文句を言いながら,アルフレッドが現れた.
「お前,なんでここに?」
と俺が聞くと,
「あ!?,お前が走っていくのが見えたから追いかけて来たんだよ.そしたらこの遺跡に入っていくし.やっと見つけたと思ったら戦闘してるし.どうなってんだよ,いったい」
とアルフレッドは悪態をついた.
「俺達を探しに来てくれたのか.助かったよ.ありがとう.」
と感謝の言葉を述べると,
「ちげーよ.別にお前らを探しに来たんじゃなくて,あの場から逃げ出したお前に追い打ちをかけようとしただけだ.別にお前が気になったとかじゃないからな!あとこの遺跡に入ったのはお前らを探しに来たんじゃなくて,ご先祖様にあいさつしにきただけだ.勘違いすんなよな!」
とさらに悪態をついたが,照れているのが丸わかりだった.
「ねえ,此処は何の建物なの?遺跡って言ってたけど.」
と火凜が話をぶった切って,アルフレッドに話しかけた.
「ああ,ここは遺跡だって言った.俺が親父から聞いた話だと,千年以上昔に悪魔との戦いがあって,その時にこの世を救った英雄の一人,”ブリューナク”を祭っている遺跡らしい.この遺跡の中にはブリューナクが使った神器も祭られているって話だ.まあそれは信憑を持たせるための嘘だろうけどな.」
「嘘とは?」
とアルフレッドの話に再度火凜が問いかけた.
「ああ,ガキの頃,散々探したんだ.でもちっとも見つけられなかった.そんなことより,今のうちに逃げるぞ!」
とアルフレッドが火凜の問いに答えると同時に,逃げるように促した.
「いえいえ.本当に"ブリューナク"の神器はありますよ.魔弾の換装ができる銃がね.」
と再び,背後から声が聞こえた.




