第1章6話:魔法
部屋の外に出ると,火凜だけでなく,圭介,美南さん,それにサラまで待っていた.
「みんな,そろったね.じゃ中庭まで行くよ.そこで父様が準備してるから.」
と,全員を引き連れて中庭まで連れて行った.
中庭まで行くと,オレルアンが水晶玉を持って待っていた.
「まあ,説明をするから,座ってくれたまえ.」
そして,俺達が座るとオレルアンは話し出した.
「魔法についてだがね,この世界に住む人間は体に人によって異なる魔力を宿しているんだ.それを使って様々な現象を起こすのが魔法だ.例えば,火を出したり,風を起こしたりとね.そして,この魔法は4種類のことができる.それは,"強化","付与","放出","創造"だ.
この4つを大まかに言うと,"強化"は自分にかける魔法,"付与"は物や人にかける魔法,"放出"は自分の魔力を外に打ち出す魔法,"創造"は自分の魔力から物を作りだす魔法だね.
そして,この魔法と武器を使いながら戦っていくのがこの世界の戦い方の基本だ.
まずはここまでで何か質問は?」
と一度,話を区切り俺達を見渡した.俺は,
「異なる魔力とは何ですか?」
と後で話してくれるにもかかわらず,つい先を促してしまった.
オレルアンはにこやかに微笑んで,
「せっかちなんだね,ハヤテ君は.異なる魔力というのは,人によってそれぞれ属性を持ってるんだ.その属性は,"火","水","風","土"の4基本属性と4属性を組合わせた混合属性,そして,特殊属性の"光"と"闇"をね.
また,個人が持っている魔力量も違うんだよ.それで,まずは君たちの属性と魔力量を調べてみようか.
この水晶を両手で触ってくれるかな.すると,色と変化する割合が変わるから,それによって,属性と魔力量を見るんだ.」
と水晶玉を持ち上げ,火凜に渡した.火凜は両手で水晶玉に触ると水晶玉が中心から半分程度赤色に変化した.
そして,火凜は次に美南さんに渡すと,圭介,俺の順に水晶玉が渡っていき,水晶玉もそれぞれ色と変化度合いを変えていった.
この時の,色と色の変化具合は,美南さんが水色で水晶玉全体,圭介が茶色で火凜と同じか,ちょっと少ないぐらい,そして,俺が緑色で,2/3程度色が変わった.
そして,俺は調べ終わるとオレルアンに水晶玉を返した.
「ふ~ん.赤色で半分,水色で全部,茶色で4割,緑色で7割か.こうまで色が変わると逆に面白いね.さて,それじゃ君たちの属性と魔力量だが,カリン君が"火"で標準程度,サキ君が"水"と"風"で人の5倍,ケイスケ君が"土"で標準程度,ハヤテ君が"風"で人の3倍だね.」
すると,美南さんが恐る恐る
「あの,"水"と"氷"って,何で私だけ2種類なんですか?」
とオレルアンに尋ねた.
オレルアンは笑顔を崩さず,
「まれに,いるんだよ,2種類の属性を持つ人は.大丈夫だよ,心配しなくても.それどころか君は魔導士になれる素質を持っているから,逆に誇るといい.」
「魔導士ってなんなの?」
すると,火凜が間髪入れずに尋ねた.
「魔導士っていうのは,魔法を使って主に戦う人の総称で混合属性を唯一使える人のことでもあるんだ.なる条件は2属性を使え,それを組み合わせることができることが条件だから,"水"と"風"から"氷"が使えるようになれば,サキ君は魔導士の一人になれるね.」
と言った.
「じゃ,属性が分かったところで,それぞれの属性の特徴と魔法の使い方を教えていこうか.まず,
"火"は"強化"すると瞬間的に身体能力を増加し,武器に"付与"すると治りの遅い傷を与える.
"水"は"強化"すると地面と体の間に水の膜を張り移動速度を上げ,人に"付与"すると傷を癒す.
"風"は"強化"すると体を軽くし速度を上げ,武器に"付与"すると,武器が風をまとい攻撃範囲が増やす.
"土"は"強化"すると永劫的に身体能力を増加し,武器に"付与"すると重くなる代わりに威力を増やす.
"放出"と"創造"は人のイメージによって異なるから,どうとは言えないね.
それじゃ,"強化"から始めようか."強化"は体にある魔力を体全体を行きわたらせて循環するイメージかな.
まずは,目をつぶって魔力を感じてごらん.」
とオレルアンが話終えると,俺達は自分の中にある魔力を感じるために目をつむった.